S30は累計55万台を販売! S130やZ31はどのくらい売れたの? 日本が世界に誇るスポーツカー「Z」【後編】

日本が世界に誇るスポーツカー「Z」後編

       
【前編】より続く

世界中のクルマ好きが認めている量産スポーツカーが「フェアレディZ」である。その祖と言えるオープン時代のフェアレディは北米市場に足場を築いた。これに続くフェアレディZは知名度を世界へと広げ、モータースポーツの世界でも成功を収めている。その魅力と与えた影響を考察してみよう。

【Zの名を残す者 日本が世界に誇るスポーツカー「Z」後編】

 ダットサン240Zは「ズィーカー」のニックネームでアメリカのファンに愛され、モデル末期まで堅調に販売を伸ばしている。78年に2代目にバトンタッチしたが、初代のS30は世界中で55万台の販売を記録した。また、スポーツカー市場が未成熟だった日本でも累計8万台が売れている。とくに北米では爆発的に売れ、アメリカの景色をZ色に染めてしまった。男性だけではなく女性ファンも多い。ステアリングを握る女性も一気に増えたのである。

 リーズナブルな価格設定のフェアレディZとダットサン240Zは、空前のヒットを飛ばした。オープン時代は北米でも月に数百台の販売にとどまっていたのだが、アッという間に月販1000台レベルを超え、バックオーダーを抱えたのである。品薄の状態がずっと続き、社会現象にもなった。

 スポーツカーという特殊なセグメントを身近な存在にしたのがフェアレディZの功績だ。ビジネスとしても大成功している。が、Zの販売が好調だったことにより、イギリスやイタリアなど、ヨーロッパ製の老舗スポーツカーはジリ貧に陥り、販売が激減した。

 フェアレディが師と仰いだトライアンフやMGは存亡の危機に瀕したし、アルファロメオも販売が落ち込むなど、「Zショック」がヨーロッパを駆け巡ったのである。あのポルシェですら、フェアレディZを脅威と感じた。

 2代目のS130フェアレディZは日本では今一歩の評価にとどまっている。だが、世界で41万台を売り、ターボ搭載車も加わったから新しいユーザー層も開拓できた。これに続くZ31フェアレディZも、30万台を超えるクリーンヒットを飛ばしている。そして4代目のZ32フェアレディZは、日産の「901活動」の後押しもあり、クラス最高の走行性能を実現した。その力強いパフォーマンスと洗練されたハンドリングは衝撃を与えている。

 優れた技術力と卓越した耐久信頼性は、モータースポーツの世界でも証明された。フェアレディZは世界中のスポーツカー好きを魅了し、輝かしい戦績と不滅の名声を残している。Z32フェアレディZは2000年夏に生産を終了した。が、わずか2年で復活を遂げている。Z33フェアレディ350ZXは2シーターモデルだけに絞るなど、ピュアスポーツカーへと原点回帰するとともに、21世紀にふさわしいスポーツカーへと成長したのだ。

 そして34フェアレディ370ZXは、パワートレインやサスペンションを進化させ、痛快なパワーフィールとダイレクトなハンドリングを手に入れた。初代S30フェアレディZのフィロソフィーを受け継ぎながら、新しい技術に磨きをかけているのが最新のフェアレディZだ。50年の長きにわたって量産スポーツカーとして多くの偉業を達成し、羨望の存在となった。

 RZ34フェアレディZは、東京オートサロン2022の会場でその日本市場向けのモデルを初公開した。併せて特別仕様車の「Proto Spec」を発表。そして2022年9月には日産/NMCよりカスタマー向けのレース車両となるNissan Z GT4を発表、モータースポーツとのつながりという伝統を継いだ。

 次の50年もライバルの目標になっていくのがフェアレディZである。

【画像6枚】国内だけでなく、北米でも人気を博したフェアレディZは、日本の自動車史にさん然と輝く名車。北米に輸出された左ハンドルのダットサン240Z。ダットサンのブランドと「Z」という名前をアメリカ中に広めることに貢献した1台だ



>>モータースポーツにおけるフェアレディZは、サーキットレースにおいてはスカイラインGT-Rなどの後塵を拝していたが、ラリーにおいてはサファリラリー優勝などの成績を残した。

>>グロリアにいち早く搭載され、乗用車用として初のターボエンジンとなるL20ETは、S130フェアレディZにも82年から搭載された。

>>2018年5月に発売された特別仕様車のHeritage edition。77年発売の「280Z スペシャルデコレーションパッケージ」のカラーリングをイメージしたデザインだ。




【前編】より続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2019年4月号 Vol.192
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


日本が世界に誇るスポーツカー「Z」(全2記事)


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text:Hideaki Kataoka/片岡英明 photo:NissanMotor co.ltd./日産自動車

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