純レーシングエンジンを指しているOXで始まるヤマハ・エンジンを搭載したロードゴーイングスポーツ【1】ヤマハ OX99 ‐ 11

乗降用のドアは1枚だけ。ガルウイング構造でピボットはボディ右サイドに設けられている。この車両はシングルシーターなので、むしろ乗降性には優れることになる

       
1990年頃から第2次スーパーカーブームと呼べるような動きが世界的に見られるようなった。バブル経済を追い風にした現象だが、当時F1に参戦していたヤマハはF1エンジンを搭載するとんでもないロードカーを企画した。陽の目を見ることなく試作に終わったモデルだが、四半世紀の時を超え、2016年、幻のモデルがよみがえることになった。

【 ヤマハ OX99 ‐ 11 Vol.1】

 ヤマハOX99‐11。この車名を聞いて何か思い当たることのある人は、なかなかのレース通ではないかと思う。
 OXで始まるヤマハのシリーズネームは、純レーシングエンジンを指しているからだ。時期的には1980年代中盤から1990年代後半にかけてのことで、20~30年ほど前の話になる。

 OX99は、ヤマハが1991年(発表は1990年)にリリースしたNA3.5L時代のF1用エンジンで、ブラバム・ヤマハとしてシリーズに参戦。その後、ジョーダン、ティレルとパートナーを変え、1997年のアロウズを最後にF1から退いた経緯のエンジンだ。

 OX系のエンジンシリーズ自体は、1985年に登場したF2用2L V型6気筒のOX66から始まっている。限定供給のホンダV型6気筒がBMW4気筒勢を圧倒するなか、ホンダの対抗馬として登場。富士GCシリーズにも供給され2L規定最後の年となる1986年にシリーズチャンピオン(ドライバーはジェフ・リース)を獲得した。

>> 【画像14枚】70度バンクのV型12気筒レイアウトを採用したヤマハOX99エンジンや、 富士スピードウェイを走行するシーンなど

 次がF3000用3L V型8気筒のOX77で、コスワースDFVのシリンダーヘッドをヤマハ製に換装。OXシリーズには、梅の花びら型燃焼室を持つ5バルブ方式のシリンダーヘッドという、大きな特徴がひとつあった。吸気3バルブとなるため、バルブ1個あたりの慣性質量が小さくなること、吸気開口総面積が大きくとれるなど出力向上に関して利点のある方式だった。

 そしてヤマハのF1デビューとなる3.5LV型8気筒のOX88。ザクスピードをパートナーに選んでのF1デビューで、ドライバーの1人は鈴木亜久里。エンジン、シャシーともF1の経験がなく、結果的には低調なまま終わったが、ここで得られたことを生かしてV型12気筒のOX99が造られた。

 そのF1エンジンを積むロードゴーイングスポーツとして企画されたモデルがヤマハOX99‐11だった。1991年頃のプロジェクトで、F1への投入とほぼ同時進行だったことになる。
 それにしても、強烈な商品企画だ。ロードスポーツ用に特性変更が行なわれるとは言え、基本は紛れもないF1エンジン。マニアにとってこれ以上の魅力、商品価値はないだろう。

 だいいち、F1に限らず純レーシングエンジンを積む市販車そのものの例がない。歴史的に見てもフォード・コルチナ(コスワースFVA)があるぐらいだろう。スカイラインGT‐RのS20型も、考え方はGR8型だが基本構造は異なっている。コルチナのFVAは思い切った例だが、それでも(と言うと語弊はあるが)1.6LのF2用ユニットだ。現役のF1エンジンを使うことなど考えられなかった。





 >> コクピットをのぞいたところ。ほぼセンターステアリングの着座ポジションで作られている。この時代、すでにデジタルメーターも使えたがアナログでまとめたところに趣味性が感じられる。


【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 7月号 vol.36
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ヤマハ OX99 ‐ 11(全2記事)

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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