GMデザインの巨匠ビル・ミッチェルと、日系人デザイナーが試作したフォルム【2】1972年式 シボレー コルベット スティングレイ

クーペモデルのルーフは左右別に取り外し可能な「Tバー」スタイル。のちのフェアレディZなどにも影響を与えた

       
1968年から1982年まで生産されたロングセラー、3代目コルベット。
中でも、エンスージアストが珍重する「アイアンバンパー」は、アメリカンドリームに世界があこがれた時代の象徴。
そのかたわらで、リアルスポーツとしての資質も備えていた。

【輸入車版懐古的勇士 1972年式 シボレー コルベット スティングレイ Vol.2】

【1】から続く

 そしてC2時代からクーペ(Tバー)とコンバーチブルの2本立てが継承されたボディは、初代C1から継承されたFRP製。大胆な抑揚を見せる前後フェンダーと、くびれたように見えるウエストラインから「コークボトル・ライン」と呼ばれているダイナミックなデザインは、デザイナーとしてのキャリアをこのモデルを最後に終えることになったGMデザインの巨匠ビル・ミッチェルと、日系人デザイナーのラリー・シノダがデザインスタディーとして1965年に試作、同じ年のニューヨーク・ショーに出品した「Mako SharkⅡ」がモチーフ。その未来的なデザインを、ほぼ完全なかたちで踏襲したものである。

 リリース直後から北米を中心に大きな成功を収めたC3コルベットだが、1970年代を迎えて特に北米市場におけるスポーツカーを取り巻く背景は次第に暗転してゆく。排ガス対策や安全対策、あるいは省エネルギー対策に世界各国の自動車業界が注力を余儀なくされ、「スポーツカー冬の時代」と呼ばれたこの時代。デトロイト唯一の量産スポーツカーであるコルベットも時代の要請に応えるかたちで、変容を余儀なくされてゆく。

 まずは排ガス対策として、1972年をもってビッグブロックV型8気筒が廃止されたのち、スモールブロックもパワーダウン。翌1973年モデルからは前後バンパーがボディにブレンドする形状の樹脂製のものへと変更。さらに、冬の時代ゆえにモデルチェンジが先延ばしにされた結果、1978年にはリアウインドーを左右に折り曲げたスタイルとするなどのフェースリフトも敢行。ようやくスポーツカーが復権を果たす1980年代、実に1982年まで14年間も生産されることになったのだ。

>> 【画像17枚】この時代のアメリカ車に流行したデザインとなる絶壁のごとく切り立ったダッシュパネルなど。収納スペースの少なさも、時代を物語るよう




>> ボディサイズの割には小さめのシートながら、座面はソフトで快適。ホールド性もこの時代としては悪くない。






>> トランスミッションは4速MTも選択できたが、やはり「ターボハイドラマティック」ことGM400型3速ATが主流だった。






>> ラゲッジスペースは左右シート後部に設けられるのみで、容量は著しく制限される。またトランクリッドもないため、荷物の出し入れはシートを倒して行う。



1972年式 シボレー コルベット スティングレイ

SPECIFICATIONS 諸元
全長×全幅×全高(mm) 4636×1753×1217
ホイールベース(mm) 2489
トレッド前/後(mm) 1491/1509
車両重量(kg) 1552
エンジン型式 スモールブロック型
エンジン種類 V型8気筒OHV
総排気量(cc) 5733
最高出力(ps/rpm) 304/4800
最大トルク(kg-m/rpm) 52.5/3200
ボア&ストローク(mm) 101.6×88.39
圧縮比 10.25:1
サスペンション 前ダブルウイッシュボーン/後トレーリングアーム
ブレーキ形式 前ベンチレーテッド ディスク/後ソリッドディスク
タイヤサイズ F70-15


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 シボレー コルベット スティングレイ(全3記事)

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【1】から続く

text:HIROMI TAKEDA/武田公実 photo:DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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