人気を獲得し始めたダットサンとは対照的だったトヨタ。アメリカにおけるピックアップトラックのあり方|1974年式 トヨタ ハイラックス Vol.3

シフトノブとハンドルを除けば、あとはオリジナルのキャビン。インパネはいたってシンプルでベーシック。スチールを基本に樹脂製のパネルが使われている。ラジオすらないのはラグジュアリーのコンセプトに反しているように思えるのが奇妙だ。ダッシュボードはウレタンで覆われていて大きな割れが3か所。「そのままにしておきたい」とシューベルトさんは言う。シートもドア内張のビニールも良好で、運転席にのみ裂け目があるのでカバーをかけていた。

       
アメリカの庶民にとって、ピックアップトラックを所有することは、ひとつの自慢のネタでもある。日本の商用車感覚とは別の価値が存在している。ニッポン旧車とのかかわりを持っていたオーナーが、とあるきっかけと妻のひとことで緑色のトヨタ・ハイラックスと出合った。プロメカニックの経験を生かしてレストアを開始。実際に使えるトラックに仕上げたのだった。

【1974年式 トヨタ ハイラックス Vol.3】

【2】から続く

 ピックアップは古くから存在するトラックの形態で、現在の日本ではキャブオーバー型が主流となったが、海外ではボンネット型がまだまだ活躍している。アメリカに1トン級小型ピックアップを普及させたのがダットサンだった。

 トヨタはこの小型ピックアップ市場で後追いになった。トヨタが初めてクラウンをアメリカへ送り込んだのが1958年。このころ国内ではトラックを一新し、ボンネット型のトヨペット・ライトトラック(後の初代スタウト)とキャブオーバー型のルートトラック(後の初代ダイナ)をラインアップさせた。1960年スタウトはフラットデッキスタイルの2代目となる。

 1961年はダットサンが320系に切り替わり、アメリカ市場で急速に人気を獲得し始めた。トヨタは同サイズの「スタウトライト」を1963年に追加してダットサンの牙城を崩しにかかるも、容易には歯が立たず。1967年に日野自動車との提携によって日野ブリスカがラインアップに加わると、翌年ブリスカとスタウトを統合する形で登場したのが初代ハイラックス。ピックアップのメイン車種に据えられた。


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TAKATA製のシートベルトのバックル部分には「TOYOTA」の文字と、トヨタのロゴが刻印されていた。腰ベルトのみ巻き取り式で、金具部分に肩のストラップを差し込むようになっている。


初出:ノスタルジックヒーロー 2017年6月号 vol.181
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 トヨタ ハイラックス(全5記事)

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【1】【2】から続く

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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