「マツダよりもあの緑のトヨタのほうがあなたに似合ってるよ」|1974年式 トヨタ ハイラックス Vol.2

ハイラックスのオーナー、リアム・シューベルトさん。サンフランシスコから内陸に入ったプレザントヒル市の住宅地に自宅を構え、ガレージでクルマやバイクの手入れを楽しむ。明るく軽やかな声でしゃべるシューベルトさんにかかると、クルマの苦労話もなんだか楽しそうな話に聞こえてしまった。

       
アメリカの庶民にとって、ピックアップトラックを所有することは、ひとつの自慢のネタでもある。日本の商用車感覚とは別の価値が存在している。ニッポン旧車とのかかわりを持っていたオーナーが、とあるきっかけと妻のひとことで緑色のトヨタ・ハイラックスと出合った。プロメカニックの経験を生かしてレストアを開始。実際に使えるトラックに仕上げたのだった。

【1974年式 トヨタ ハイラックス Vol.2】

【1】から続く

 2009年アメリカへ戻ると、プライベートでバイクを楽しみ、運搬用に1983年式トヨタ・ピックアップを使っていた。この4WD車を運転しながら、ある時思ったのだという。クルマの運転ってこんなに楽しかったのか、と。
「それで手頃な510を探して手に入れたんです。内装なんかは全部はがしてあったようなクルマだった」
 そんな状態だった510に徐々に手を入れながらシューベルトさんは4輪車の運転を楽しみ始めた。
「ある日510で出かけて駐車場に止めたら、隣のクルマの運転手がたまたまきれいな女の人だった。だから声をかけておしゃべりをしたんだ」
 偶然と積極性。それが妻アンドレアさんとの出会いだった。当時アンドレアさんはクルマに特段の興味を示していたわけではないという。

「結婚する前には510でデートへも行った。でも車内はうるさくて、会話もまともにできないくらい」
 そう言って笑った。アンドレアさんもいつしか510に親しんで、結婚してからも510を維持し続け、3年前の父へのプレゼントとなったのだった。

 シューベルトさんが今回のハイラックスを見つけたのも3年前のこと。オーナーはトヨタのコレクターだったが、たまたま手元に来たトラックには興味もなく、手入れもせず道路に止められて傷むままだった。
「あの時点では僕は1986年式マツダ・ピックアップを使っていた。ところがうちの奥さんが『マツダよりもあの緑のトヨタのほうがあなたに似合ってるよ』と言うんだ。クルマのスタイルとやつれ具合が僕に合ってる、って」

 こういうときの女性の一言は強い。グッとやる気になるし、もしこの機会を逃したら気が変わって反対意見に回られてしまうかもしれない。シューベルトさんはハイラックスを入手、早速修理に取り掛かった。



>>【画像13枚】フューエルリッドがなく、キャップにキーがつく形状の給油口など




フロントにおごられたダブルウイッシュボーンのサスペンションが、このクルマのコンセプトをよく表している。初代ハイラックスから受け継がれた乗り心地重視の選択。シューベルトさんは三菱ピックアップからスプリングを流用し、1981年式トヨタ・ピックアップからディスクブレーキを移植した。





リアサスはオーソドックスな固定軸に板バネを組み合わせたトラックらしい選択で、シューベルトさんはパーツの一部をシボレー・カマロから流用。車体中央付近右側に出っ張っている箱に注目。「後付けの100Lの燃料タンクなんです。1980年に取り付けられたらしく、どこか片田舎で使われていてなかなか給油に行けなかったからではないかと想像します」


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年6月号 vol.181
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 トヨタ ハイラックス(全5記事)

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【1】から続く

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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