4ベアリング軸受という歴史のマイルストーン。L型よりも太いクランクシャフト【プリンスがS54B用に開発した、ハイコンプ仕様のG7型エンジン】その1 Vol.2

館長の元に運び込まれ時の状態。新車時からOHされることなく40年以上も動いていたそうで、長年のホコリやオイルなどで見た目は薄汚れていた。

       
2代目となるグロリアスーパー6に搭載されたG7型6気筒SOHCエンジンは、スカイ
ラインにも搭載された。特にS54BのG7型は、メーカーチューンが施された名機だ。

【プリンスがS54B用に開発した、ハイコンプ仕様のG7型エンジン Vol.2】

【1】から続く

「オイル循環にも気を使っていて、オイルパンにはクランクがオイルをたたかないようにバッフルプレートが設けられています。また、オイルポンプ自体ががオイルパンのオイルの中につかるように設計されていて、オイルを吸い上げる時に、エアがかまないように考えられています。それと、54Aのオイルポンプはトロコロイド式で、54Bはギア式が採用されていたと思います」と語る館長。写真を見せてもらうと、さらに気になる部分が見つかった。

「G7型エンジンは、クランクの軸受けがまだ4ベアリングが採用されています。これはおそらくラインボーリング加工が4ベアリングまでしか対応できなかった技術的問題だと思います。後のS20型エンジンでは、技術が向上したことで7ベアリングが採用されていますから。それと、面白いのはクランクプーリーボルトやファンボルトはもちろん、コンロッドボルトにもワイヤリングが施されています。今のエンジンではありえないですが、当時は1本ずつにワイヤリングしていたようです。もちろん、OH時には当時よりもキレイにワイヤリングしておきました」とさりげなく自慢ポイントをはさむ館長。そして、箱の中からゴソゴソと54B用の純正ピストンを取り出してきた。

>>【画像15枚】ブロックから取り外したクランク、ピストン&コンロッド。L型よりも太いものが使われていて、クランクキーは最初から1本キー仕様になっているクランクシャフトなど




OH前のG7型ブロックを、オイルパン側から見た写真。ブロック中央の上側にあるのが、54B用のギア式オイルポンプだ。新車時からノンOHだったため、ワイヤリングは当時のままだが、コンディションはまずまずだ。





メインベアリングは4カ所。「当時はラインボーリングの精度が出せなく、ベアリング数を減らすしかなかったようだ。また、大きな問題として刃物がハイスしかなかったので、ベアリング数が多いと最後まで刃物自体が持たなかったと思います」と推測する館長。





OHの際には、純正同様にワイヤリングを実施。当時よりも美しい仕上がりだ。


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年2月号 vol.179(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

プリンスがS54B用に開発した、ハイコンプ仕様のG7型エンジン(その1 その2 全6記事)

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【1】から続く

photo & text :珍車秘宝館 館長

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