ニードルローラーベアリングを採用し、1万rpmまで回るエンジン|1969年式 ホンダ S800 M

総アルミ製のAS800E型エンジン。排気量だでけなく、ラジエーターサイズやエアクリーナーボックス容量もS600に比べ増量されている。

       
【1969年式 ホンダ S800 M Vol.2】

【1】から続く

 1962年、第9回の全日本自動車ショーに、ホンダS360とS500という、排気量の異なる2台のスポーツが姿を現した。エンジンは総アルミ製のDOHC8バルブ式水冷直列4気筒。クランクの支持を乗用車では一般的なプレーンメタルではなく、2輪エンジンでは広く使われていたニードルローラーベアリングを採用し高回転に対応。1万rpmまで回るエンジンと言われた。

 ホンダS360のエンジンは、当時の軽自動車枠に収まる354ccのDOHC4気筒。ボア×ストロークφ49×47mmの4気筒は、90ccクラスのバイク用単気筒エンジンを4シリンダー分並べたと考えればそのコンパクトさが分かるだろうか。S360は市販されることがなかったが、軽トラックであるT360にこのエンジンは転用されている。そしてS360、S500のエンジンを基本設計としてS600、S800へとスケールアップされていくことになる。


▶▶▶【画像18枚】S800の途中からチェーンタイプに代わり採用されたリジッド式のデフホーシング。スペアタイヤはトランク内から移動しつり下げ式に。など



 1963年10月に登場したS500は総排気量531cc(ボア×ストロークφ54×58mm)から47 ps/8500rpmを発生。1964年1月には606cc(ボア×ストロークφ54.5×65mm)へとスケールアップされたS600へと進化、57 ps/8500rpmとなる。そして1966年1月にS800へとモデルチェンジ。791cc(ボア×ストロークφ60×70mm)から70 ps/8000rpmを発生する。車両重量はS500と比べて最終型のS800Mでは80kg増加となるが、車体寸法はほぼ変わらず、23 psもの出力アップとなっている。S800では馬力に余裕ができたことで、あえて圧縮比を落として扱いやすさを増している。



ケイヒン製のCV型キャブレターが4連装される。





フロントフェンダーにあるHONDAのロゴ下に、S800では専用のエンブレムが付き、600と区別される。



1969年式 ホンダ S800 M(AS800)
Specification 諸元
全長 3335mm
全幅 1400mm
全高 1215mm
ホイールベース 2000mm
トレッド前/後 1162 / 1150mm
最低地上高 190mm
室内長 840mm
室内幅 1195mm
室内高 935mm
車両重量 755kg
乗車定員 2名
最高速度 160km / h
0→400m加速 16.9秒
登坂能力sinθ 0.361
最小回転半径 4.4m
エンジン型式 AS800E型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量 791cc
ボア×ストローク 60.0×70.0mm
圧縮比 9.2:1
最高出力 70ps / 8000rpm
最大トルク 6.7kg-m / 6000rpm
変速比 1速 4.001 / 2速 2.480 / 3速 1.613 / 4速 1.143 / 後退 4.572
最終減速比 4.714
燃料タンク容量 30L
ステアリング形式 ラック&ピニオン式
サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン・コイル / 5リンクリジッド・コイル
ブレーキ前/後 ディスク / ドラム
タイヤ前後とも 145SR13
発売当時価格 75万円

【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 ホンダ S800 M(全3記事)

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【1】から続く

photo:RYOTA SATO/佐藤亮太

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