【2】から続くカーランドがモチーフとしたのは後期仕様。作者が作品を描いた当時のカー雑誌などを参考にしていたため、アイテムの特定は簡単であったが、約20年前と同じ部品が見つからず困難を極めた。しかしカーランドの執念で完成することができた。
【進化する「頭文字D」レプリカ vol.008[3]】
因縁である啓介とのバトルを模し、完成した秋山号をイエローボディのFDとともにワインディングへ連れ出し、シェイクダウンのスタートだ。ドライバーはもちろん、この瞬間を足掛け2年にわたり待ち焦がれていたオーナー、声優である鶴岡聡さん。
「MR2、セリカGT-FOURなど乗り継いできた僕の車歴。FRという駆動方式も、S/Cという過給機もどちらも初体験です」という鶴岡さん。興奮で心のレブカウンターが振り切っていることが分かる。それを落ち着かせるように、得知代表によるレクチャーが始められる。納車の際はかならず行う儀式だ。AE86に初めて乗るオーナーにはとくに念入りに行う。
まずはシフト操作について。各ギア間を一気にシフトするとギアを噛むような動きにつながるので、ニュートラルをいったん介するようなイメージでクラッチをいたわりながらシフトは落ち着いて行うこと。冷間・温間関係なく、つねに気を配っておくポイントなのだという。
コンプレッサーへの負担を減らすために加速時にはエアコンスイッチを切ること、あわせて4A-G型についてのレクチャーも行われた。現代車と違い、航時の回転数が高めの4A-G型は、オイルの劣化も早い。設計年度の古さから消費量も多いのでオイルは3000kmごとに交換が必須、という得知メソッドが伝えられた後、ついにコースインだ。
水平0指針のブースト計。針が負圧を指して(ブーストがかからない状態)いても、軽量フライホイールによりアクセルの動きに忠実な軽やかさを見せる。そしてひとたびブーストが正圧を超えると、ワイルドに変ぼう、怒とうの加速力を発揮する。
「この軽さとスピード、大排気量のクルマに乗っているかのようなこの感覚。コーナーの立ち上がり、3速からでも踏んでいける……まさにアメージングです」 ベース車両の極上さを物語る、きしみのないボディは、エンジンの咆哮とデフからのナマのサウンドを鶴岡さんにダイレクトに感じさせてくれる。雑音ではなく「良音」として。
「硬い足かと思いきや、しっかりとストロークがあるので、ボディのしなりを生かしながらしなやかに回頭していきますね」。路面からの手ごたえをソリッドに感じながら、コーナリング速度も徐々にペースアップしていく。
「これまで僕は、バケットシートはファッションアイテムとしてとらえていました。しかしいま、支えてほしいところをしっかりとサポートしてくれるこのフルバケに、存在意義をあらためて感じています」 S/Cに載せ替えた秋山は、それを機に走りのスタイルも変えた。
「ターボ時代のようなユラユラとボディをゆらす不安定な挙動は影をひそめ、見ちがえるほどに洗練味を増している」と評された走り。カーランド得知代表が狙った動的性能は、まさにそれだ。
鶴岡さんも、みずからの姿を秋山に重ねるようにレビンと一体化していく。ワインディングに日没が迫る。しかし終わりなきランデブーは、まだ続いている。
【画像11枚】カーランドの新作マフラー「TYPE-D 60S」を装着。近年増加しているパワー志向のユーザーに向けた、メインパイプ径を拡大した新バージョンだ。製品版にはサイレンサー部分に「JASMA」プレートが付く>>ナルディクラシック、ブースト&3連メーター、バケットシート、ロールバー……秋山化へのアイテムはすべて揃った。ちなみにルーフは、拓海と同じく内装のみサンルーフ仕様となっている。
>>最終段階で着手したのはエアクリーナーの再現。現役世代には懐かしい「ARC」のエアクリーナーボックスを入手、フィルターむき出しで装着するのも秋山流だ。対角線側に位置するのは、かろうじで新品で供給されているウオッシャータンク。ここがきれいなだけでエンジンルームがずいぶんと引き締まる。
【1】【2】から続く進化する「頭文字D」レプリカ vol.008(全3記事)初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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