秋山渉はプライベーター? 細かい部品の特定も成功し、じゃじゃ馬マシンの実車化が完成!|進化する「頭文字D」レプリカ vol.008[2]

啓介との二度目の対戦で惜しくも負けてしまった秋山。豪雨のバトル中、ワイパースイッチに手を伸ばした際に横断溝に乗ってしまいスピンしてしまったのが要因。TVアニメ版ではワイパーのロータリースイッチ部分がグリーンに光っているが、鶴岡さんのコダワリでしっかりと再現

【1】から続く

『頭文字D』の劇中に登場する秋山渉のという人物を少しおさらいした。敵に塩を送るようなことをしてまで勝ち方にこだわる秋山渉は、劇中で強烈な爪痕をのこした。

【進化する「頭文字D」レプリカ vol.008[2]】

 カーランドがモチーフとしたのは、この後期仕様。エンジンルームが描かれるカットがわずかではあったが、しげの秀一先生がおそらくは90年代半ばのカー雑誌&ビデオを参考にして描いていたため、使われているアイテムのブランド特定にはさほど時間がかからなかった。が、さすがに20年以上を経た現在でそれを探すのは困難を極めたが、得知代表の執念によりディテールの再現に成功した。

 秋山仕様のエンジンの最大の特徴は、インタークーラーレスである点。吸気温を下げる効果をあえてオミットすることへの抵抗もあったが、これが実走テストをしてみると思わぬ副次的な効果をもたらした。吸気の管長が短くなり圧損を抑えられるため、アクセルレスポンスが大幅に向上したのだ。そしてもちろん、レスにしたことにより本体、配管などのぶん軽量化も達成することができた。

 あくまで予想ではあるが、ターボの時代を含めて秋山はみずからの手でエンジン載せ替えを行うプライベーターではなかっただろうか。ならば、メカチューンの拓海に敗れた秋山が、来たるべきセカンドバトルへ向け少しでも軽量化を図るため、あえてインタークーラーを装着しなかったことには合点がいく。

 エンジンルームの最終的なフィニッシュでは、さらなるディテールアップも図られた。エアクリーナーは往年の走り屋御用達の逸品、ARCのアルミ製を発掘。ステーを自作し、原作と同位置にマウント。タイミングベルトカバーには、いまでは新品で手に入れることはできない「4A-GZE」デカールが誇らしげに輝く。

 組み合わされるマフラーは、先ごろ完成したばかりのカーランドの新作マフラー「TYPE-D 60S」。末尾の「60S」が示すように、これまでもリリースされていた同社のφ50mmマフラーのメインパイプ径を拡大したバージョンだ。近年増加中の20バルブエンジンへのスワップ。パワー向上にともなう排圧アップに対応するため抜けを重視したその構造は、秋山仕様のS/Cともとても相性がいい。オールステンレスなのは、20バルブに換装した拓海のマシンのビジュアルに準じたものだ。ほどよく野太いジェントルなサウンドは、アイドリングの段階からでも迫力をトッピングしてくれる。

 「アクセルを全開にした時の操縦性はまさにハチャメチャの一言につきる ハンドルをきっていても ひたすら矢のように直進するかと思えば……わずかな路面のギャップをひろい、あさっての方向に勝手にノーズを向けようとする」とうたわれるほどのじゃじゃ馬ぶりだったターボ時代の秋山のマシン。

 得知代表によるサスペンションセッティングは、こうしたネガをつぶした。カーランドオリジナルの車高調を基本に新作リアスプリングをインストール。これは、古くからのAE86乗りにおなじみの定番パーツであるTRDショートに対応したコイルスプリングだ。もはや絶版で、新品では手に入れることができないTRD製に代わる、最適化された自由長の安心の車検対応モデル。固すぎないバネレート(5.5kg/mm)によりしっかりと路面に追従し、劇中とは違い不安なく踏んでいける。むしろこちらのほうを秋山に乗ってほしいくらいだ。
【画像11枚】球形のシフトノブも再現。現在では絶版となっているTRD革巻を入手した。TRDロゴ下にしっかりとシフトパターンが刻印されている。上の3連メーターは、実車に忠実な指針の位置のメーター(海外製)を取り寄せた



>>ラジエーターを保護するため、フロントグリル(GTV用)を装着した走行となった。展示する際は劇中と同じく、グリルレスにする予定である。



>>ほどよいタイヤサイズと、あえて落としきらない絶妙な車高。そして鍵穴すら廃した潔いリアゲートから漂うのは美しさしかない。

【3】へ続く

進化する「頭文字D」レプリカ vol.008(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT:KIYOSHI HATAZAWA/畑澤清志 PHOTO:MINAI HIROTAKA/南井浩孝

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