モンテカルロ・ラリーでデビューウィン。アバルトの社内コード「SE043」|1989年式 ランチア デルタ HFインテグラーレ 16V【2】

スパルタンながら、国産車には望めないゴージャスな雰囲気も横溢するコックピット。ステアリングはアバルトのデザイン。一方、当時のラリーカーを意識したデルリン材のシフトノブはノン・オリジナル

【1】から続く

「4WD+ターボ」という組み合わせの手本となった。ランチアデルタHFインテグラーレ。その前身でえあるデルタHF4WDは、WRC(世界ラリー選手権)のグループが急きょ変更になったにも関わらず迅速に対応した。ランチアの対応力を見せつけた。

【最強の系譜 4WD+ターボ 1989年式 ランチア デルタHFインテグラーレ 16V vol.2】

たった半年間の開発期間でWRCのタイトルを取るほどの、技術力の高さを知らしめたアバルトの技術陣

 本来は、豪奢なFF小型ハッチバック車ランチア・デルタをベースとし、フルタイム4WDとしたドライブトレーンに、上級モデル「テーマ・ターボ」譲りの高出力パワーユニットを搭載した、グループAホモロゲーション用スーパーモデル。そのフロントに横置きされる直列4気筒DOHCターボのエンジンは、ロードバージョンでも165psを発生。トルセンデフを採用したリアデファレンシャルを介して、後輪にもパワーを伝達した。

 実際の開発を主導したのは、グループB時代と同じく、アバルトの技術陣。有名なアバルトの社内コード「SE」ナンバーでは「SE043」が授けられた。開発に着手したのは86年6月とされているので、彼らはこの傑作車を実に半年間で開発したことになる。

 若干の遅れはあったもののFIA規定の5000台が生産されたデルタHF4WDは、グループAホモロゲーションを獲得した87年シーズン開幕戦のモンテカルロ・ラリーで堂々のデビューウィン。結局この年のWRCメイクスタイトルを獲得したのち、同じ87年秋のトリノ・ショーでは、前後フェンダーをブリスター化してトレッドの拡幅を行うとともに、エンジンも185psに強化した「インテグラーレ」が登場。翌88年からWRCに実戦投入され、タイトルを獲得した。
【画像17枚】スタンダードでは左右2本出しのマフラーだが、取材車両では左側に大径のシングルマフラーが覗く。ハチマル時代のターボ車らしい、野太いサウンドを奏でる。インテグラーレ16Vでは、インテグラーレ(8V)時代からホイールが0.5Jワイド化され、トレッドも拡幅。よりワイルドなアピアランスとなった



>>1995ccの排気量から200psを発生するDOHC16V+ターボエンジン。ワークスカーでは300ps以上を発揮し、WRC6連覇の原動力となる。



>>この個体には、ラリー専用パーツないしはそのレプリカと思われるカーボン+ケブラー製のエアインテークカバーが装着されている。

ランチア デルタHFインテグラーレ16V(L31D5)主要諸元
全長×全幅×全高(mm) 3900×1690×1360
ホイールベース(mm) 2480
トレッド前/後(mm) 1448/1440
車両重量(kg) 1250
エンジン型式 --
エンジン種類 直列4気筒DOHC16バルブICターボ
総排気量(cc) 1995
ボア×ストローク(mm) 84.0×90.0
圧縮比 8.0:1
最高出力(ps/rpm) 200/5500
最大トルク(kg-m/rpm) 31.0/3000
ステアリング パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション前/後 マクファーソン・ストラット+コイル/トーションバー式スタビライザ
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ 205/50VR15(前後とも)
発売当時価格 520.0万円

【3】へ続く

1989年式 ランチア デルタHFインテグラーレ16V(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT:HIROMI TAKEDA/武田公実 PHOTO:MOTOSUKE FUJII/藤井元輔

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