「本土にGノーズのZを置いたまま。近々石垣島に持ってこようと計画中です」島での旧車の楽しみ方【3】アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 沖縄・石垣島発 特別編 第41回

市街地から少し離れた静かな場所に位置するガレージ知念は、旧車ショップというわけではなく、旧車好きオーナーが営む板金ショップだ。レンタカー会社からの仕事が最近では増えているとのこと。「母屋の右側がカーテンを引くと塗装ブースになります。雨と暑さ対策のために軒先を伸ばしました」。南の島は「温暖な気候」ではあるが、日向に立てば暑く、湿気の多い海風に困惑してしまう。

【2】から続く

今回は趣向を変えて、いつもの「アメリカ発」ではなく「沖縄・石垣島発」の特別編をお届けしよう。カリフォルニア在住の筆者・増井久志さんが、2017年夏に石垣島を訪れた。日本中どこにでも旧車好きはいるもの。地元のオーナーとコンタクトが取れたことで、離島での旧車ライフの現実について、つぶさに話を聞くことができた。そのリポートを紹介する。

【アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第41回 沖縄・石垣島発 特別編 Vol.3】

 ことに最近の移住ブームで島には移住者が増えている。ところが、移住を試みた人のうち9割は島から去っていくという。移住した石垣島での生活を存分に楽しんでいる様子だったフェアレディ240Z-Gオーナーが、明るい声で語った。

「初めて石垣を訪れたのが20年前。仕事やプライベートで頻繁に石垣に行くようになってクルマ好きの人たちとも交流ができ、やがて決心がついて5年前に移住しました」
 訪問を繰り返して、クルマを通じて地元の人と付き合いを深め、自分が本当に移住したいのかどうか、自分自身に問うように確認した。そんな堅実な計画が功を奏したようだ。

>> 【画像14枚】石垣島の青い海を見渡せる場所にあったガレージ知念。そこに旧車好き仲間が集まった。1971年式日産スカイライン2000GT-R仕様のオーナーは知念純司さん。首都圏から移住した小倉英明さんはL型エンジン改造大好き、白の1972年式日産フェアレディ240Z-Gオーナー。運送業を営むヤマハRZ250オーナー。バイクショップ「ウィリー」店長など

「本土にGノーズのZを置いたまま。近々石垣島に持ってこようと計画中です。またクルマ遊びを始めるのでおねがいしますね!」
 フェアレディ240Z-Gオーナーはお世話になった人へのメッセージを付け加えた。観光業に従事しているという通り、島の観光人気の高まりに合わせてレンタカーの需要が増えている。

「ツーリングをしていると手を振ってくれるレンタカーのドライバーもいます。止まっていると声をかけてくれる方もいます。そういう時、とても満足しますね」
 観光客との交流を楽しむ様子を、バイク乗りのバイクショップ「ウィリー」店長が紹介した。

「レンタカーは結構スピードを出している人もいるので怖いです」
 ガレージ知念店長が言う。実際のところ、地元の人たちはゆっくりと運転していた。ここには高速道路もない。急いでみたところで、目的地は遠くないのだ。それでも最近では警察官の姿が増えた。
「白バイが今年に入ってから配備されました。スピード違反、一時停止違反、運転中の携帯電話などを厳しく取り締まっているようです」
 慣れない地では特に、スピード違反には気をつけないといけない。この土地では何キロも続くうんざりするような渋滞はありえない。ツーリングものんびり、思いのまま。

「1人でぶらーっと走ることが多いですね。名蔵湾の海に沿って走る右回りのコースが好きです」
 ガレージ知念店長が言うと、バイク乗りのヤマハRZ250オーナーが答えた。
「午後に出発して島を左回りに川平、底地と一周する。そうすれば日があまり当たらないから暑くないんだわさ」
 クルマであってもバイクであっても、旧車の好きな人たちは土地の自然環境に対応しながら旧車に接し、楽しみながら生活を送っている。ガレージ知念店長の手掛けている4ドアハコスカが仕上がり、白いGノーズZが本土からやってくると、石垣島の旧車シーンもますます盛り上がるだろう。


「オレラはさ、当時楽しめて、今また楽しめる」
 うれしそうにつぶやいたヤマハRZ250オーナーの言葉が、昭和40年代生まれという4人の旧車の楽しみ方を象徴していた。各地で催されるイベントで盛り上がる日本本土からは遠く離れた南の海に浮かぶこの島でも、旧車への情熱を共にする人たちに出会えたのだった。



>> 暑くても、汗をぬぐいながら満面の笑顔で4人の会話が弾む。「ブタケツローレルがカッコ良かってさ」とヤマハRZ250オーナーが軽妙な口調で話題を振りまくと、フェアレディ240Z-Gオーナーが言葉を引き継ぎ、バイクショップ「ウィリー」店長とガレージ知念店長が合いの手をいれる。昭和40年代生まれの4人は旧車話のネタが尽きず、おしゃべりは延々と続いた。






>> 4ドアハコスカがガレージ知念店長の元へやってきたのは7年前のこと。「ハコスカの4ドアが子供のころからのあこがれだったんです。本土の人が持ち込んだといううわさを聞いて実車を見に出かけ、1年後にまた見に行くとあまり動いている様子がなかった」。そこでオーナーに「処分する時には連絡してください」と謙虚な言葉でハコスカへの情熱を訴えた。すると旧車を思う心が通じた。「前オーナーが『大切にしてくれるなら』といって、譲ってもらえました」。ガレージ知念店長はここでも板金の腕を発揮。



初出:ノスタルジックヒーロー 2018年2月号 Vol.185
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第41回(全3記事)

シリーズ: ニッポン旧車の楽しみ方

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【1】【2】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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