声優・三木眞一郎さんのAE86を振り返る「頭文字Dレプリカ仕様に乗るということ」の意義【2】進化する「頭文字D」レプリカ

三木さんのAE86、製作がスタートしたのは13年前。右が元の三木号。左のレビンへリトラクタブルヘッドライトなどを移植

       
声優・鶴岡聡さん秋山渉レビン製作 リアル拓海 ── 声優・三木眞一郎の乗る、こだわりのAE86に学ぶ

頭文字Dレプリカの新たな可能性を探るべくスタートした、秋山渉レビン製作プロジェクト。頭文字D仕様=AE86トレノ、という定説への挑戦だ。オーナーは現役の声優・鶴岡聡さん。師弟の関係にある先輩・三木眞一郎さんのマシンメイクをひもときながら、自身のレビンへと思いをはせる。

【 進化する「頭文字D」レプリカ Vol.2】

【1】から続く

 ただ、このまましかるべきパーツを合体させてインスタントに完成させ納車、というだけで、真の頭文字D仕様乗りとして胸を張れるだろうか。
 得知代表も、これまで資金にモノをいわせて頭文字D仕様に仕上げたものの、すぐ飽きて手放すAE86オーナーを多く見てきたという。やはり車両の「完成」が目標になってしまってはいけないのだ。

 順調に作業が進んでいる今こそ、もういちど「頭文字Dレプリカ仕様に乗るということ」の意義を考えてみたい。師匠の関係にある声優・三木眞一郎さんの愛車には、そのヒントが盛り込まれているはずだから。

 頭文字Dのアニメ版がスタートしたのが1998年。以来、2014年の新劇場版以前まで藤原拓海役を演じ続けてきた三木眞一郎さん。プライベートでもAE86にほれ込み、愛車としていることはファン以外でも知るところだ。

「拓海の声を任せていただき、早い時期に手に入れました。ダートラ仕様にして群馬モーターパークなどで定常円旋回やスラロームなどの練習してましたね」(三木さん)。ただ、2003年から三木さんの車両メンテナンスを担当した得知代表は事あるごとにこう思っていた。

「拓海役をやるからには、リアル拓海号に乗っていてほしい」。

 ふたりの意見は一致し、劇中さながらの頭文字D仕様の製作がスタートする。まずはベース車として程度の良いレビンを入手、そこへトレノのパーツを移植する。コミックや映像の姿を頼りに、レプリカ作業がはじまった。

「乗り始めたきっかけは、ほんの少しでも役と同じ感覚を共有できればと思って。とてもあんな運転は無理ですけど、同じクルマに乗ることで少しでも近い何かを感じられればリアリティを持ってマイクの前に立てるのではないかと。そして実際にマシンを作って、見て、走るなかで得られた『感動』。それは作品に反映させられたと思います」。

 共演者をドライブに誘うことも多かったようで、声優界にクルマ好きを増やした功績も三木さんにはある。
 専門用語で「モノローグ」という、頭の中で考えていることをセリフとして表現するシーンが多いのも頭文字Dの特徴だ。
「ボクも、特にカートなんかでは、しょっちゅうしゃべってますよ。コーナリングの際に『タイヤ、おまえのことを信じてるよ!』とか(笑)」。

>> 【画像24枚】三木さんのAE86「里帰り」入庫の目的のメインであるメーターパネルのアップデートなど。プロジェクトD仕様へ進化したアニメ版の拓海号を参考に作られた。メーターは左から水温/タコ/油温/油圧。ワーニングランプは左からハイビーム/ガソリン警告灯/バッテリー警告灯/サイドブレーキ警告灯の順。カーボンパネルをよく見るとオドメーターと燃料計は純正位置のまま。これを外してしまうと車検NGとなってしまうのだ



>> 製作がスタートしたのは13年前。右が元の三木号。左のレビンへリトラクタブルヘッドライトなどを移植。






>> 完成当初の、アーリー拓海仕様のスチールボンネット時代。






>> 若き日の三木さん(左)。じつはボディには製作にかかわった皆のサインが入っているのだ。

AE86三木号


■エンジン:AE101用20バルブエンジンフルオーバーホール(最高出力185ps・レブリミット8600rpm)/戸田レーシングΦ82mm鍛造オーバーサイズピストン/TRD0.8mmヘッドガスケット/ヘッド1mm面研/IN&EX戸田レーシングカム(272°リフト9.2)/IN戸田レーシングカムプーリ―/トラスト・オイルクーラーKIT/GARAGEアネックス・エアクリーナーKIT&水周りKIT
■クラッチ:コシミズモータースポーツ・カッパ―ミックス強化クラッチ
■デフ:TRDLSD(ファイナルギア4.8)■点火系:GARAGEアネックス・デスビKIT/GARAGEアネックス
オリジナルECU(AE111純正ベース)/リダクションセルモータ
ー(1.0kW)■サスペンション:フロント=CSプロジェクトオリジナル車高調/
車高調整式ピロアッパー/ロールセンターアダプター(30mm)/スプリング7.0kg/mmリア=カーランド全長調整式ショック/スプリング5.5kg/mm/
TRDスタビライザー(前後)/TRDサスペンション強化ブッシュ■排気系:GARAGEアネックス・ステンレスEXマニ&スポーツ触
媒/コシミズモータースポーツ・マフラー■ブレーキ:制動屋SM500ディスクパッド(前後)■エクステリア:j-bloodカーボンボンネットTYPE1&カーボンリトラカバー/クスコ・フロントオーバルタワーバー/PIAAフォグランプ/純正サイドバイザー■インテリア:オリジナルシート/BRIDEスーパーローポジシートレ
ール/サベルト4Pハーネス・サルーンS/momoステアリング/DefiアドバンスBF仕様カーランドオリジナルメーターパネル(タコ、油温、油圧、水温)/ウルトラ・スピードモニター
■タイヤ&ホイール:アドバン・ネオバAD07(185/60R14)/RSワタナベAタイプ(14インチ・6.5J)/RSワタナベ専用ナット

【3】に続く


初出:ハチマルヒーロー 2016年 5月号 vol.35
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

進化する「頭文字D」レプリカ(全4記事)

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【1】から続く

text : KIYOSHI HATAZAWA/畑澤清志 photo : MINAI HIROTAKA/南井浩孝

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