両車の対決がもっとも激しくなった1980年代、互いを磨き上げる好敵手:セド・グロvsクラウン頂上決戦 全体目次|50年以上にもおよぶ最高のライバル関係 セド・グロvsクラウン

セド・グロvsクラウン頂上決戦

       
1970年代後半から1990年代始めまで、この12年間にわたる3世代のセド・グロとクラウンのライバル関係は、国産車の歴史に残る激闘だった。しかし、ライバルが強力だったからこそ、より高みを目指し、切磋琢磨できた。それが国産車の発展につながったのだ。

技術の日産を先導したシンボル、先進技術を傾注した高性能サルーン
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 独特の存在感を持つ日本ならではの高級車(VIPサルーン)が生まれ、育っていったのは1970年代の半ばから。1960年代まではショーファードリブンとしての性格が強かったが、クラウン、セド・グロの3車は、1970年代に入るとパーソナルユースの方向にも道を広げた。2ドアハードトップに続き、セド・グロはピラーレス4ドアハードトップを投入。クラウンもセンターピラーを残した4ドアのピラードハードトップを送り込んだ。
 1979年、トヨタと日産のVIPサルーンは相次いでモデルチェンジをする。排ガス対策が一段落し、新しいテクノロジーやアイデアを盛り込む余裕ができたからだ。6月、セド・グロがデザインを一新し、ストレート基調の伸びやかな430を送り出している。このとき日産は、販売が低迷している2ドアハードトップを整理した。

 パワーユニットは直列6気筒SOHCのL20型が主役だ。電子制御燃料噴射装置のEGIで武装し、上級のL28E型にはコンピューターによる集中電子制御システム、ECCSを採用した。また、簡易型のドライブコンピューターを時代に先駆けて実用化している。そして見逃せないのが、クラウンに先駆けて日本初のターボチャージャー装着車を加えたこと。日産は高性能と低燃費を両立させるための新しい技術と称し、ターボ搭載車を設定。最初にVIPサルーンに積み、徐々に排気量の小さいエンジンに展開するもくろみだった。リアサスペンションを5リンク/コイルにグレードアップし、ハンドリングと乗心地にも磨きをかけている。

 セド・グロのモデルチェンジから遅れること3カ月、6代目クラウンがベールを脱ぐ。正常進化の手堅い戦略だったが、2ドアハードトップにはしゃれた2トーンのボディカラーや電動サンルーフがある。エンジンは2.8Lの5MーEU型直列6気筒SOHCがリーダーだったが、ソアラに続いてDOHCの5MーGEU型へ進化。トランスミッションは先代から採用している4速ATを熟成させ、日産勢に差をつけた。1980年秋には、2LのM型エンジンが新世代の1GーEU型にバトンタッチしている。



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 パワートレーン戦略で後れを取った日産は、1983年にY30セド・グロを市場に放ち、巻き返しを図った。このモデルのハイライトはパワーユニットの一新だ。英知を結集して日本初のV型6気筒エンジンを完成させ、搭載している。VG20E型とVG30E型SOHCがあり、後にターボも追加された。1985年には、時代の先端を行くハイレスポンスのジェットターボも送り込む。また、ダブルウイッシュボーンにこだわり続けていたフロントサスペンションがストラットになったことも話題をまいた。

 クラウンも負けてはいない。1983年夏に7代目のS120系が誕生。「いつかはクラウン」の名コピーを生んだクラウンだ。2ドアハードトップは姿を消し、4ドアハードトップと4ドアセダンでシリーズを構成している。2Lエンジンは新世代のDOHC4バルブが主役。1GーGEU型直列6気筒DOHCを筆頭に、1985年秋には1GーGZE型DOHCスーパーチャージャーを投入した。2.8Lの5MーGE型も日産勢に対抗するため、最初のマイナーチェンジで3Lの6MーGEU型DOHCとなった。このモデルから4輪独立懸架となり、プログレッシブパワーステアリングや4輪ESCなどの電子デバイスも積極的に採用して快適性を飛躍的に高めた。

 1987年にセド・グロはモデルチェンジし、新たにグランツーリスモを設定している。4輪独立懸架やラック&ピニオン式ステアリングなどを採用し、スポーティー度を大幅に高めた。素性が良かったことは、これをベースにシーマが誕生したことからも分かる。エンジンはV型6気筒が主役で、足回りなども新設計となっている。

 ハイソカーブームを巻き起こした白いクラウンは、1987年にS130系にバトンを託した。4ドアハードトップにワイドボディを設定し、DOHC4バルブ化にも力を注いでいる。1989年にはセルシオに先駆けて4LV型8気筒エンジン搭載車を送り込んだ。翌年夏には新世代の2.5L直列6気筒を投入し、3ナンバー高級車新時代の幕開けを告げている。また、この8代目はハイテク装備も積極的に採用した。電子制御エアサスやナビ機能を持つエレクトロマルチビジョンなど、今につながる技術がてんこ盛りだ。


 ホンダはレジェンド、マツダはルーチェ、三菱はデボネアVを送り出す。バブル期で気合いが入っていたが、ビッグ2の牙城は切り崩せなかった。
 セド・グロも1991年にモデルチェンジしてワイドボディをまとった。この年の10月、クラウンも9代目になり、初めてモノコックボディと4輪ダブルウイッシュボーンのエアサスを採用。マジェスタも加わり、今につながるクラウンの基礎を確立している。日本の土壌に根ざした独創のVIPサルーンは1980年代に大きな飛躍を遂げ、世界の高級車市場にも大きな影響を与えた。



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text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : SATOSHI KAMIMURA/神村 聖

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