両車の対決がもっとも激しくなった1980年代、互いを磨き上げる好敵手:セド・グロvsクラウン頂上決戦 全体目次|50年以上にもおよぶ最高のライバル関係 セド・グロvsクラウン

セド・グロvsクラウン頂上決戦

       



国産車のモータリゼーションの出発点|50年以上にもおよぶ最高のライバル関係 セド・グロvsクラウン




[1981年式 日産 セドリック 4ドア ハードトップ 200ターボ ブロアム(K430)]
 厳しい排ガス規制により不遇の1970年代を過ごした自動車業界。スポーツモデルは次々と牙を抜かれ、真のパフォーマンスを発揮することが許されなかった。各自動車メーカーは燃費性能の向上と排出ガスのクリーン化という命題と向き合い、それを解決するために知恵と技術を振り絞ったのだった。そんな排ガス規制への対応もひと段落した1970年代後半、新たな時代の足音が聞こえてきたころに、その後10年間の国産車の方向性を決定付けるクルマが登場した。それが1979年6月にデビューした430セドリック&グロリアだ。



[1982年式 日産 セドリック 4ドア セダン 200E GL(430)]
 430セドリック&グロリアのデビューは、新時代の到来を感じさせるものだった。とりわけ注目されるのは、前ページで紹介したターボモデルだが、それだけではない。まず、エクステリアは先代330から一転、水平ラインを基調としたシャープなスタイルを採用。幅広の大型メッキグリルをはじめ、品格と風格を感じさせるデザインとなった。インテリアもブロアムを筆頭に高級感あふれる仕立てで、高級車の本質を形にして見せた。



[1985年式 セドリック 4ドア ハードトップ V30 ターボ ブロアム VIP(PY30)]
 1983年にデビューしたY30。空力と機能を追求しながら高級車としての風格を感じさせるスタイリングや、ゆとりとやすらぎの移動空間を目指したインテリア、しなやかでゆったりとした乗り心地を実現する新開発サスペンションなど、注目する部分はじつに多い。しかし、最大のトピックは国産量産車初のV6エンジンを搭載したこと。当時のセドリックのカタログには「V6こそ高級車の証」、グロリアのカタログには「世界の名車はV」とあるように、メーカーがV型エンジン搭載を最大のアピールポイントとしていたことが手に取るように分かる。



[1983年式 日産 グロリア セダン V30E ブロアム(PY30)]
 セド・グロは、1959年にグロリア、1960年にセドリックが登場して以来、日本を代表する高級サルーンとしていつの時代も高い評価を得てきた。6代目セドリック/7代目グロリアとなるY30は、新開発のV型エンジンを搭載したことが最大のトピックだが、高級車としての基本性能を追求したことでも評価したい1台だ。



[1989年式 日産 セドリック セダン V30ターボ ブロアムVIP(Y31)]
 ハチマル世代のセド・グロといえば、多くの人が4ドアハードトップを思い浮かべるはず。ピラーレス独特のスタイリングと4ドアとは思えない開放感は多くの人を魅了し、現在でも高い人気を維持している。しかし、オーソドックスなセダンボディにこだわるユーザーも少なくない。取材車両のオーナー・オーナーも、セダンの重厚なスタイリングに心を奪われたひとりだ。



[1990年式 日産 グロリア 4ドアハードトップ V20 ツインカムターボ グランツーリスモ SV(Y31)]
 日本を代表する大型サルーンのセド・グロには、高級セダンやラグジュアリーカーといったイメージを多くの人が持っていることだろう。日産の最上級パーソナルサルーンというポジションを長らく担ってきたのだから、それも当然。しかしY31では、そんなイメージを覆すスポーツグレードがラインナップされていた。それがグランツーリスモシリーズだ。430やY30時代には、ターボSやアーバン、アストロードといったスポーティー色を強めたグレードも存在したが、Y31のグランツーリスモはそれらとは一線を画す本格的なスポーツサルーンに仕立てられた。

430シリーズの豆知識

Y30シリーズの豆知識

Y31シリーズの豆知識



[ 1983年式 トヨタ クラウン 4ドア ハードトップ 2000 スーパーサルーン エクストラ(GS110) ]
 永遠のライバル、430セドリック&グロリアの登場から遅れること3カ月、クラウンも新たな世代へと移行した。それが1979年9月にデビューした6代目となるS110系だ。従来よりも直線的で先進性と伝統的な風格を融合したデザインや、新開発となる5M‐EU型2・8LSOHCエンジンの搭載をはじめとして、新世代のクラウンは大きな注目を集めた。



[ 1981年式 トヨタ クラウン 2ドア ハードトップ 2000ターボ スーパーサルーン エクストラ(MS110) ]
 1964年の東京オリンピックを契機に、日本国内には近代化の波が押し寄せた。交通網や道路事情をはじめとする社会インフラが整備され、オリンピック景気からいざなぎ景気へと続く1960年代半ばから後半には、カラーテレビ、クーラー、自動車が新三種の神器としてもてはやされた。これに象徴されるように、この時期に日本のモータリゼーションは一気に花開き、大衆化や多様化の一途を辿っている。



[ 1987年式 トヨタ クラウン 4ドア ハードトップ 2000 ロイヤルサルーン スーパーチャージャー(GS121) ]
「世界最高級のプレステージサルーン」をテーマに開発された7代目クラウン。歴代モデルが持つ最高級車としての品格や伝統を尊重しつつ、モダンなスタイリングに進化したボディは、4ドアハードトップ/セダン、ワゴンという3タイプを用意。先代まで設定されていた2ドアハードトップは、そのポジションをソアラに託す形で消滅した。また、主力となる4ドアハードトップは、Cピラーを別素材でカバーした「クリスタルピラー」を採用したことが大きな特徴となっている。



[ 1987年式 トヨタ クラウン 4ドアハードトップ ロイヤルサルーンG(MS137) ]
 バブル絶頂期ともいえる1987年にデビューした、8代目にあたるS130系クラウン。1980年代半ばといえばさまざまな技術が進歩し、カーエレクトロニクスが一気に普及した時代だ。S130系クラウンは、まさにそれを象徴する1台と言っていいだろう。


S110シリーズの豆知識

S120・S130シリーズの豆知識








初出:ハチマルヒーロー 2016年 5月号 vol.35
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)



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text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : SATOSHI KAMIMURA/神村 聖

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