HIROTA東名サニー【1】1970年11月。TSレースを席巻した東名サニー、その伝説のはじまり|1972年式 日産 サニー クーペ GL(B110)|珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

A型チューンの可能性を切り開いたゼッケン84番。丸善テクニカカラーをまとう

       

珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る
TSレースを席巻した東名サニー

TSレースの舞台で圧倒的な存在感を放ったサニー。その先駆者ともいえるのが、「トランズ・ニックス第一戦富士100キロ・レース」で鮮烈なデビューを飾った東名自動車(現東名パワード)のB110である。A型チューンの礎を築いた1台といっても過言ではない。そして伝説は今もこの復刻マシンへと受け継がれている。その全ぼうを紹介していこう。

【 1972年式 日産 サニー クーペ GL Vol.1】

 1970年11月。カローラやパブリカなどのトヨタ勢が大半を占めていた「トランズ・ニックス第一戦 富士100キロ・レース」にたった1台、発売されて間もないB110サニーが投入された。資金力のワークスでもなければ、ノウハウが豊富なレース屋でもない。名もなきプライベーターだった鈴木誠一さんが、自身で立ち上げたばかりのガレージ「東名自動車」で製作したのがこのサニーだった。鮮やかな丸善テクニカカラーをまとったB110は大方の予想を覆し、圧倒的な速さを見せつけた。そしてみごとデビュー・トゥ・ウインを成し遂げたのだ。

>>【画像40枚】アクアガラージュの真鍮3層ラジエーターやセトラブ12段オイルクーラーでクーリング。水温は85〜95℃で、油温は95℃未満に抑える

 まだレース用パーツも供給されていない時代。プライベーターの手作りマシンが大舞台を制したのだから、そのインパクトは強烈であったに違いない。当時の少年たちはその雄姿に胸を熱くし、東名自動車の名は瞬く間に知れ渡った。サニー伝説のはじまりである。

 今でこそА型エンジンは1万rpmまで回る名機として知られるが、当時は誰もその可能性に着目していなかった。しかし一流のレーシングドライバーで、チューナーでもあった鈴木誠一さんは違った。だからこそ、誰よりも早くА型チューンに挑んだのだ。

 といっても、チューニングという概念すらしっかりと確立していなかった時代。ひたすら手探りでA型エンジンの製作に取り組んだ。手作業でカムを研磨し、燃焼室やポート形状も効率を追い求めた。未知なる世界の開拓。それは気が遠くなる地道な作業の連続だったに違いない。そんな魂のこもったエンジンで、勝利をもぎ取ったのだから、お見事というほかない。




>> A14型改1.3L仕様のエンジンを積み込む。キャブレターはウエーバー45DCOE9。無駄を一切排除したエンジンルームだが、仕上げは美しい。





>> ベース車は1972年式のB110サニークーペGL。自動車工房ヒロタの廣田和正代表が、東名自動車のサポートを受けながら製作している車両だ。約20年前に15万円で買ってきたポンコツがベース。サビもひどい状態だったがレストアをして復活させた。現在はTSレースのFクラスに参戦しており、ドライバーは影山正美さんが務める。富士スピードウェイのベストタイムは1分58秒台。廣田さんいわく「蹴飛ばされるような加速感」とのこと。その速さは本物だ。


1972年式 サニー クーペGL(KB110)

SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:TOMEI製フロントスポイラー/リアスポイラー、NISMO仕様オーバーフェンダー、FRP製ボンネット/フロントフェンダー/オーバーフェンダー/ドア/トランクリッド、アクリル製ウインドー(フロント合わせガラス)/ビタローニ製セブリングミラー
■エンジン:A12型改1303cc(約170ps/8500rpm)、TOMEI製φ77mm鍛造ピストン/H断面コンロッド/4カウンタークランクシャフト/PROCAM(312°、7.75mmリフト)/バルブスプリング(ダブル)/軽量タイププッシュロッド/0.8mmメタルヘッドガスケット(対向ビート)、ビッグバルブ(INφ40mm/EXφ33mm)、NISMO製メインベアリング/コンロッドベアリング/中空バルブリフター、リン青銅製バルブガイド
■吸気系:TOMEI製インテークマニホールド、ウエーバー45DCOE9、
■排気系:TOMEI製エキゾーストマニホールド/ワンオフ右サイド出しマフラー
■点火系:永井電子機器製MDI NO.9500/プラグコード、クランクピックアップ式(オルタレス仕様)、NGK製R7433-10
■冷却系:アクアガラージュ製ラジエーター、セトラブ製オイルクーラー
■燃料系:ATL製燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ(2基)、TOMEI製コレクタータンク
■駆動系:ORC製レーシングコンセプトクラッチ、純正レースオプションF56Aミッション、NISMO製H150 LSD、ホーシング加工(デフオイル容量アップ)
■サスペンション:(F)レースオプション車高調改、ピロボール式Aアーム、レース用スタビライザー (R)レースオプションリーフスプリング
■ブレーキ:MK63キャリパー、プロジェクトμ製ブレーキローター/パッド
■インテリア:MOMO製プロトティーポステアリング、スミス製機械式タコメーター、ラムコ製メーター(水温、油温、油圧)、NGK製A/Fデジタルメーター、SARD製排気温度計、オートルック製バケットシート、HPI製5点式ハーネス、ガレージアルティア製ロールケージ
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:
RSワタナベ8スポーク マグ Rタイプ(F)13×8J (R)13×9J



【2】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 サニー クーペ GL(全7記事)


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text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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