あの風吹裕矢の「レーシング・スペシャル」【4】池沢早人師さんの徹底した監修の下で実車化|サーキットの狼世代へ|ヤタベ RS

初登場のシーンは、ジャンプコミックス「サーキットの狼」9巻162ページ。そのときの名称は「フェラーリ・ディーノ・レーシング・スペシャル」であったが、現在は製作指揮を執った谷田部行雄の名前から「ヤタベRS」に落ち着いているそうだ。

       
誰しもが通ったであろう「サーキットの狼」という漫画。この作品が登場するまで実在するクルマを描き切った作品がなかったことに加え、漫画に登場するスーパーカー群を乗り継いできた作者によるリアルなエピソード。そして、1人の暴走族がF1レーサーへと成長する過程を丁寧に描いたストーリーに酔いしれた。そんなサーキットの狼世代に向け、往年の名車とともにじっくりと堪能できるシリーズをおおくりする。

幻の多角形コーナリングで駆け抜けた
あのヤタベRSを奇跡の実車化

【ヤタベ RS  Vol.4】

【3】から続く

 実車化にあたっては、作者である池沢早人師さんの徹底した監修の下で行われた。大まかなボディは、当時発売されたNITTOの1/24プラモデルをベースとしている。そこから1/6のクレイモデルを作り、最終的に1/1にまで高めていったというのだから、その工程は新車を造るのを同じと言っていい。作品の中でのボディはFRP製だったが、実車はFRPで作ったオス型の上にアルミ板をあて、それをたたいてアルミボディにする気の遠くなるような作業が行われた。ナンバー取得も視野に入れていたため、フロントガラスもアクリルではなくガラスでワンオフ製作されている。

 ボディの下にはパイプフレームが広がり、設定どおりフェラーリのV型8気筒エンジンが息を潜める。原作と同じ308GTBのフルチューンではなく、フェラーリ・モンディアルに積まれていた3.2LのV型8気筒エンジンなのだが、この完成度の前では大した相違点ではない。

 FISCOでのテストを2度行い、サスペンションのセッティングテストも行った話を聞けば、これがただの観賞用でないことは明らか。撮影はミュージアムの敷地内という限られたロケーションで行われたが、そのエンジンサウンドの先に、ハンドリングの先に、幻の多角形コーナリングでライバルを抜いていく風吹裕矢とヤタベRSの幻が見えたような気がする。

>>【画像20枚】ナンバー取得を考えていたことから、アクリルではなく特注のガラスで作られているフロントのウインドシールドなど。予備も含め、この世に2枚しか存在しない。このマシンがいかに本気で造られたかを物語る




>> モモのステアリングとオートメーターの計器類が並ぶインストルメントパネル。左手にある赤/黒のレバーがサイドブレーキになる。





>> アルミむき出しのインテリアに収まる2脚のシートは、アルミのシェルにビニールレザーを張って作られ、サベルトのレーシングハーネスを介してドライバーとの一体化を図る。






ヤタベ RS (レーシング・スペシャル)

SPECIFICATION 諸元
全長×全幅×全高●4470×1890×1060mm
ホイールベース●2355mm
エンジン種類●水冷V型8気筒DOHC4バルブ
総排気量●3185cc
最高出力●273.7ps/7000rpm
最大トルク●31kg-m/5500rpm
※スペックは池沢早人師ミュージアムに準じる。



初出:ノスタルジックヒーロー 2017年12月号 Vol.184
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ヤタベ RS (全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

©︎池沢早人師/animedia.com text:KEISHI WATANABE/渡辺圭史 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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