あの風吹裕矢の「レーシング・スペシャル」【2】架空のモデル、ディーノ・レーシング・スペシャル|ヤタベ RS|サーキットの狼世代へ

片側2灯のヘッドライトカバーはアクリルでワンオフされた。なお、漫画に出てくるヤタベRSはレース専用車両なので、ウインカーは付いてない。

       
誰しもが通ったであろう「サーキットの狼」という漫画。この作品が登場するまで実在するクルマを描き切った作品がなかったことに加え、漫画に登場するスーパーカー群を乗り継いできた作者によるリアルなエピソード。そして、1人の暴走族がF1レーサーへと成長する過程を丁寧に描いたストーリーに酔いしれた。そんなサーキットの狼世代に向け、往年の名車とともにじっくりと堪能できるシリーズをおおくりする。

幻の多角形コーナリングで駆け抜けた
あのヤタベRSを奇跡の実車化

【 ヤタベ RS  Vol.2】

【1】から続く

 1970年代をわかせた欧州の名車が次々と登場し、誌面狭しと暴れまくった「サーキットの狼」にあって、異色の1台といえるのがヤタベRS(レーシング・スペシャル)だ。

 主人公・風吹裕矢がロータス・ヨーロッパを駆り「公道グランプリ」を制覇、A級ライセンス模擬レース後に乗る2台目のマシンとなる。何が異色なのか? その答えはこのクルマが実在した市販車でもなければレーシングマシンでもない、漫画の中だからこそ走ることができた「架空の1台」だからだ。

 作品のストーリーを追ってみよう。公道グランプリで優勝したものの、愛車を大破させてしまった風吹裕矢。そして同レースで2位となりながら、ドライバー・沖田の病死により主を失ったディノ246GT。この1人と1台を2人の後見人だった谷田部行雄が結びつけ、風吹裕矢のニューマシンとして生まれたのがヤタベRSだ。スペックはディノ246GTをベースに、空気抵抗に優れたボディをFRPでワンオフ。ディノの足を強化したサスペンションにフェラーリ308GTBの3Lエンジンフルチューンを載せ、380psを発揮するモンスターという触れ込みだ。

>>【画像20枚】漫画と同じフェラーリ308GTBをベースにした380ps/10000rpmのフルチューンエンジンとはいかなかったが、フェラーリ・モンディアルのエンジンを2機用意し、可能な限り作品のイメージを形にしたというエンジンなど



>> このマシンがいかに本気で造られたかを物語るのがフロントのウインドシールドだ。ナンバー取得を考えていたことから、アクリルではなく特注のガラスで作られているのだ。予備も含め、この世に2枚しか存在しない。






>> アルミのドアはガルウイングタイプ。見た目以上に軽々と上がる。スライド式となるウインドーは、アクリル製だった。





>> 初登場のシーンは、ジャンプコミックス「サーキットの狼」9巻162ページ。そのときの名称は「フェラーリ・ディーノ・レーシング・スペシャル」であったが、現在は製作指揮を執った谷田部行雄の名前から「ヤタベRS」に落ち着いているそうだ。



ヤタベ RS (レーシング・スペシャル)


SPECIFICATION 諸元
全長×全幅×全高●4470×1890×1060mm
ホイールベース●2355mm
エンジン種類●水冷V型8気筒DOHC4バルブ
総排気量●3185cc
最高出力●273.7ps/7000rpm
最大トルク●31kg-m/5500rpm
※スペックは池沢早人師ミュージアムに準じる。


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年12月号 Vol.184
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ヤタベ RS (全4記事)

関連記事:サーキットの狼世代へ

関連記事:ヤタベ RS



【1】から続く

©︎池沢早人師/animedia.com text:KEISHI WATANABE/渡辺圭史 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

RECOMMENDED

RELATED

RANKING