幻のクロスフロー【1】L型ベースだが別物! 日産ワークス専用エンジンLY型エンジン|1974年式 日産 フェアレディZ

標準のL型エンジンとは逆の傾きとなる、クロスフローのLY型ならではのレイアウト

       

幻のクロスフロー

【1974年式 日産 フェアレディZ Vol.1】

 S20型エンジン搭載のZ432、L24型エンジンを積む240Zと続くフェアレディZのレース活動は、国内のみならず、北米でも好成績を収め、さらにラリーでも活躍を見せた。

 しかし、ロータリーエンジンの台頭によって戦闘力に衰えが見え始めたため、日産ワークスは、新たな武器を模索しなければならなくなる。そこで開発されたのが、L型ブロックにクロスフローのヘッドを載せたワークス専用エンジン「LY型」だ。

 従来のL型が採用していた吸気と排気が同じ側にある、いわゆるターンフローには、ポートの拡大に限りがある、パーコレーションを起こしやすい、圧縮を上げにくいなどの弱点があった。だが、吸気を反対側に置くクロスフローにすることで、これらの問題を解決することが可能となる。

 また、サーキットにおいてオイル供給を適切に行うべく、オイル潤滑にドライサンプ方式も採用されている。もちろん、エンジンの傾きが逆になるため、専用のエンジンマウントやミッションのベルハウジングも用意された。そう、L型ベースとはいえ、ワークスらしいオリジナルパーツをまとった別物のエンジンへと生まれ変わっていたのだ。


>>【画像20枚】デザインも独特で、2タイプあるうちの後期用が使われていたLY型エンジンのヘッドカバーなど




>> 窓に貼られたイベント参加記念ステッカーが、オーナーの所有歴の長さとクラブ活動の活発さを物語る。





>> 柿本改のマフラーに特注のチタンタイコ&テールエンドを組み合わせている。






>> リアにはDR30用のディスクブレーキをセット。300psオーバーを誇るLY型エンジンのパワーに見合った制動力となる。



1974年式 日産 フェアレディZ(S30)


SPECIFICATION 諸元
エクステリア:フェラーリレッドオールペイント、メッキ部分&汎用フロントスポイラーガンメタペイント、240Z用グリル、ヨーロッパ用クリアウインカーレンズ
エンジン:LY28型、ボアφ87.8mm×ストローク79mm(2870cc、圧縮比11.7)、LY型専用マグネシウムヘッドカバー / ヘッド / ピストン / コンロッド / カム / クランク / インテークマニホールド / エキゾーストマニホールド、L28型用N42ブロック、LY型用ドライサンプオイルパン加工、ICレギュレーター内蔵オルタネーター、レース用ウオーターポンププーリー、バランサー付きクランクプーリー
点火系:RB25型用ダイレクトイグニッション&クランク角センサー
吸排気系:JENVEY製スロットルボディ、RB25DET型用インジェクター(370cc)、柿本マフラー、ワンオフチタンテールエンド
制御系:HKS製F-CON V Pro
冷却系:アルミ3層ラジエーター、電動ファン×2、トラスト製オイルクーラー
駆動系:240ZGクロスミッション、クロスフロー4気筒用ベルハウジング、R200デフ、クスコ製LSD
サスペンション:日産レーシングオプションコイル、ショックアブソーバー、スタビライザー
ブレーキ:(F)MK63キャリパー、日産レーシングオプションローター、(R)DR30用ディスク
インテリア:ダッツンコンペステアリング、大森メーター製水温計 / 油温計 / 油圧計、オートゲージ製水温計、PLX製空燃比計、ニスモ製シフトレバー、ブリッド製シート合皮張り替え、ウィランズハーネス、4点式ロールバー
タイヤ:ヨコハマSドライブ 205 / 55R15
ホイール:RSワタナベ8スポークAタイプ 15×7.5J

【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年8月号 Vol.182
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 日産 フェアレディZ(全3記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : RYOTA SATO/佐藤亮太

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