チェリーにひと目ぼれ【2】車重650kgに4輪独立懸架！　刺激的な走りが魅力のFFホットハッチ｜1971年式 日産 チェリー クーペ X-1･R

舵と駆動を前輪で担うFF。車内空間が広く取れるうえに軽さという面でも有利と、無駄がなく理にかなった駆動方式といえる。これを日産ではじめて取り入れたのがチェリーだ。その最上位グレードとなるX-1・Rが搭載したのは名機A12型。同時期に脚光を浴びたB110サニーGX-5とおなじ心臓部を持ち、マイナーツーリングでもあなどれない速さを見せた。そんな当時の雄姿を彷彿させる、X-1･Rワークス仕様がストリートに降臨した！

【1971年式 日産 チェリー クーペ X-1･R　Vol.2】

【1】から続く

　エンジンはA12型改1.3L仕様を搭載する。亀有エンジンワークスのφ77mm鍛造ピストンやフルフロー加工済みのコンロッド、フルバランス取りされた純正クランクシャフトなど、ひと通り手が入っており調子は上々。74度ハイカムとの相乗効果で、8000rpm〜8500rpmを常用できるという。

「車重は650kgしかないうえに4輪独立懸架なので、排気量が小さくてもキビキビ走ります。ただ、チェリーのA12型は横置きのためエンジンルームに熱がこもりやすい。その対策としてフィン付きのアルミ製オイルパンが純正採用されているのも特徴です」と製作を担当した竹口さん。エキマニの上にキャブレターが鎮座しているため、パーコレーションが発生しやすいのもチェリーの弱点。そこでオーナーのチェリーでは、燃料ポンプを電磁式へと変更。燃料タンクに近いリア側に移設して熱対策を施すなど豊富なノウハウを注ぎ込んだ。

「アイドリングは安定しているし、気持ちよく吹け上がります。アクセルを踏み込むと強力なトルクステアでハンドルを持っていかれるあたりも、FF車っぽくていいですよね」とオーナーは語る。6月に納車されたばかりというX‐1・Rを見つめるその熱い眼差しからも、理想の1台に仕上がったことがうかがえた。今後はさらに自分色に染めていくというから楽しみだ。





>>【画像20枚】左に寄っているのも特徴的なペダルレイアウトなど。日産初のFF駆動だけにさまざまな部分に苦労の痕跡が見られる。そうした積み重ねで、ライバル勢より圧倒的に軽い車重650kgを達成しているのだ




>> X-1･Rが搭載するA12型はSUツインキャブ仕様。それにともないハイカムや専用エキマニが投入されており、燃焼室形状も異なる。A14型インジェクション仕様よりポートは大きいとか。この車両ではさらに排気量を1.3Lに拡大。ヘッドにも手が入り、圧縮は11.5まで高められる（ノーマルは9）





>> キャブレターはソレックス44PHH。貴重なニスモ製だ。A12型エンジンを横置きに搭載するため、バルクヘッドとの位置が近く、短いファンネルしか装着できないが、高回転重視のA12型には問題なし。燃料配管はステンレスメッシュホールとフィッティングを使い、燃料漏れなどのトラブルが起きないように予防している。






>> 横置きゆえの振動を抑えるためかチェリーのA12型にはバーが追加されている。写真右上に設置されるのは燃圧レギュレーターだ。



1971年式 日産 チェリー クーペ X-1･R（KPE10）
SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:ワンオフ・チンスポイラー（ケンメリ用加工）、ワークス風オーバーフェンダー、リアスポイラー、ワークスカラーペイント
■エンジン:A12型改1303cc（圧縮比11.5）、74度ハイカム、亀有製φ77mm鍛造ピストン、純正コンロッド フルフロー加工、純正クランクバランス取り、東名製ヘッドカバー、クスコ製オイルキャッチタンク
■点火系:永井電子機器製ウルトラMDI
■燃料系:電気式フューエルポンプ移植、燃料レギュレーター
■吸排気系:ニスモ製ソレックス44PHH（メイン150、エア200、P/J57.5）、ステンレス製タコ足、サイド出しマフラー
■足回り:（F）オリジナル車高調 （R）ショートストローク加工
■ブレーキ:ブレーキパッド強化
■インテリア:ナルディ製ステアリング、10000rpmスケールタコメーター、電圧計
■タイヤ:（F）ヨコハマ アドバンネオバ 175/60R13
（R）ブリヂストン プレイズ 175/60R13
■ホイール:RSワタナベ （F）13×7J （R）13×7.5J




初出：ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
（記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです）

1971年式 日産 チェリー クーペ X-1･R（全2記事）

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