燃焼室のハート型加工および容積合わせなどを実施! 大排気量エンジンでありながら、高回転まで回す楽しみ|日産 スカイライン 2000 GT

MoTeCのためのセンサー

       
20年近くにおよぶS130Zのプライベートチューンで培われたノウハウを、余すところなく投入。約5年の歳月を費やし、オンリーワンのチューニングを追い求めてきたオーナー。それまでのソレックスからインジェクションへと変更されたヨンメリは、L28改3.0L。一見控えめなスペックにもかかわらず、同じL型同士のドラッグレースでは、より排気量の大きなマシンにも引けを取らないタイムをマークする。そんなこだわりのヨンメリチューンの全ぼうに迫る。

【日産 スカイライン 2000 GT Vol.4】

【3】から続く

 そして耐久性と使い勝手を重視したエンジンは、ピンハイト29mmのφ89mmピストンに、中心間距離140mmのクランクを組み合わせた3.0L仕様。

「いたずらに排気量を上げるのではなく、燃焼室のハート型加工および容積合わせ、ポート研磨など、細部まで精密に作り上げることが最も大事」とオーナー。そして以前はソレックスのキャブ仕様だったエンジンは、人とは違う仕様を目指し、モーテックを使ったインジェクションへと変更。このモーテックで動かすためのワイヤリングも自作。文章で書いてしまえば簡単そうだが、その本数やそれぞれの長さをきっちりと合わせることなどを考えれば、どれだけ大変な作業か分かるだろう。さらにECUの基本データの打ち込みこそショップに依頼したが、セッティングの煮詰めはパソコンを使い自身で行っているというからすごい。



 12月も近付き、気温の低い取材日にもかかわらず、特別な儀式を必要とせず、キーをひねるだけで一発で目覚めるエンジンは、インジェクション仕様だからこそ。アイドリング時には、いかにもチューンドといった若干の不整脈こそあるものの、ストールしそうな気配はなく、安定して回転を維持している。そして走り出しでは3.0Lエンジンがもたらすトルクで、するすると滑らかに加速。しかし4500rpmを超えたあたりから吸気音が咆哮し始めると、それに呼応するかのように、シートバックにグッと押されるような加速がレブリミットまで続いていく。大排気量エンジンでありながら高回転まで回す楽しみが味わえるのは、ワコーのカムシャフトの特性もあるが、それを生かし切るオーナーの技術やセッティング能力によるものである。


>>【画像19枚】助手席左前に仮設置されたMoTeCのM84。インジェクション化のために必要となったセンサーなどのハーネス類は、すべてハンドメイドで製作。自身でセッティングを煮詰めルために使用するノートPCなど

 仕事が終わった夜、オーナーがコツコツと作業をしてきたプライベートガレージには、ボール盤やジグソー、エアコンプレッサーに加えサンドブラスターなどがずらり。きっちりラベリングされ、中身が一目で分かる段ボールが棚に並ぶ様は、彼の几帳面な性格を表している。今後は、ソレックスのボディを使った、インジェクション仕様に挑戦してみたいという。スロットル開度センサーの装着など、ハードルも高いと思われるが、オーナーなら成し遂げてくれると信じている。。




OWNER

多くのプライベーターが挫折するECUセッティングさえも、ノートPCを片手に自らの手で行うオーナーさんだが、長年、キャブレターで、燃料調整をこなしてきたからこその業。そして「自分にとってこのスカイラインは、おもちゃと同じ。1度組み上げても、すぐに違う仕様を試したくなる」とオーナーさん。次は購入後、全く手を付けていないボディのフルレストアに加え、キャブレターボディを使ったインジェクション仕様にチャレンジ予定だ。



MoTeCのためのセンサー



ファンネル横の黒いセンサーは、スロットルの動きから、吸入エア量を測定するスロットル開度センサー。スポーツインジェクションキットに付属したものをそのまま使用している。





エンジンブロック前方のアルミパネルに伸びるハーネスは、カムシャフトの0度と120度位置を測定するセンサー用。これでより正確な点火時期を導き出す。





L型後期インジェクション仕様のサーモハウジングは、センサー取り出し部が豊富にある優れもの。インジェクション化に伴い、鏡面加工を施した上で使用。





空気の酸素密度を計測する吸気温度センサーは、ラジエーター右横にさりげなく設置。





クランクシャフトプーリーにセンサーを装着し、点火タイミングをコントロール。またNEO6のダイレクトイグニッションを流用することで、デスビなどのないすっきりとしたエンジンルームに仕上がった。






6-2の等長タコ足は亀有製。このエキマニに装着されるO₂センサーは、空燃費計のために装着されたもので、MoTeCにはつながっていない。



日産 スカイライン 2000 GT(GC110)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:フロントスポイラー
■ エンジン:L28型改3L仕様(2947cc)、燃焼室ハート形加工(35.4cc、圧縮11.5:1)、ワコー製75Sカムシャフト(9.8mmリフト)、ビッグバルブ(INφ46mm、EXφ38mm)、φ89mmピストン(ピンハイ29mm)、ASW製I断面コンロッド(140mm)、L28型用純正クランク(フル加工)、240Z輸出用カムカバー、ランマックス製オイルフィルター
■ 点火系:RB26型用ダイレクトイグニッション(NE06)
■ 吸気系:ライジング製スポーツインジェクション、370ccインジェクター
■ 制御系:MoTeC M84
■ 排気系:亀有製φ45mm6-2タコ足、ラバーソウル製φ50mmデュアルマフラー
■ 冷却系:ケンメリ純正ラジエーターファン加工(4枚羽)
■ 燃料計:ボッシュ製燃料ポンプ、東名製燃圧レギュレーター
■ 駆動系:OS技研ストリートマスター、R32タイプM用71Cクロスミッション(L型用ベルハウジング)、R200LSD(ファイナル4.1)、ジャパンターボ用等速ジョイント
■ 足回り:(F)スターロード製フルタップ車高調(8kg/mm)、S130Z用ハブ (R)KYB製ショック、スプリング(20kg/mm)、エナジー製ブッシュ
■ ブレーキ:ジャパン用マスターシリンダー (F)エンドレス製スリットローター (R)S30Z用アルフィンドラム(フィン加工)
■ タイヤ:ダンロップ・ルマン704 185/60R14
■ ホイール:RSワタナベ(マグ) (F)14×8J -6 (R)14×8.5J +13
■ 内装:R32用タコメーター、PLX製A/F計、亀有製追加メーター(油圧、油温、水温、燃圧)




初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産 スカイライン 2000 GT(全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

text : SHINYA KUSHIURA/串浦愼哉 photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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