「1回も洗車したことはないんですよ」コンクール・コンディションの魅力的な2ドアボディ|1973年式 トヨタ カローラ Vol.2

小柄で引き締まったボディデザインは、ドレスアップの仕上げ方と相まって、どの角度から見ても非の打ち所なく美しい。明るい日光と澄んだ空気の中で、ボディ細部のメリハリはますます際立った。

       
カーショーなどに展示するクルマの場合、その仕上がりの程度を表す言葉として「コンクール・コンディション」という表現がよく使われる。しかしこのコンディションに基準があるわけでなく、だれもが認めればOKという、あいまいなものとなっている。ただし「だれにも認めてもらう」というハードルはとても高いのも事実。左の写真にあるボディがカサカサのカローラを、上のピカピカの姿によみがえらせたオーナーの物語をお届けする。

【1973年式 トヨタ カローラ Vol.2】

【1】から続く

  1966(昭和41)年に登場したトヨタ・カローラは、日本の歩んだモータリゼーションを象徴するクルマであり、時代の変化とともにその姿を変えながら、長期にわたって存続してきた。日本の自動車の歴史を振り返るとき、その最も重要な一部分を担っている。

 マイカーに夢を求めた高度成長期、日本のオーナードライバーにとって、大衆車構想の流れを汲むパブリカではいま一つ物足りない感じがしたが、かといって、その上のコロナ(61年の規制緩和で小型タクシー用途の車種だったコロナは1Lから1.5Lエンジンへと大きくなっていた)は、まだまだ高根の花。その間を埋めるようにマーケティングされたのが初代カローラだった。

 この中間的位置づけは、1.1Lという排気量と2ドアセダンという小型ボディに表れていた。その初代カローラが人気を博すと、それを追い風に登場した2代目では、多様化する要望に応えてボディバリエーションを次々と増やしていった。クーペを称するモデルも加わった。TE27がその代表格だ。これは、1970年に登場した初代セリカとともにクーペブームの先駆けとなり、ボディ形状とドア数との関連が薄くなっていったきっかけでもあった。


【画像12枚】「1回も洗車したことはないんですよ」とヌグさん。汚れはまったくなしの新車同様のシャシーなど

 そもそもクーペというボディ形状はスポーツカーというカテゴリーと相性が良かった。代表的なのがトヨタ2000GTや日産フェアレディZ。運転すること自体が目的であるスポーツカーゆえ、乗用車としての機能は低く、例えば後部座席を考慮して設計されないのが通常で、必要ならば2by2の形を取る。マツダRX‐7やホンダCR‐Xも同系列で、日本国内仕様は後部座席を追加した2by2だが、北米仕様はどちらも2座席スポーツだ。

 これに対してセダンのボディ形状は乗用車の用途と合致するものであり、目的を持って後部座席を備え、乗降に無理のないよう伝統的には4ドアとされる。マイカーの普及に伴い小型車種では2ドアも一般化したのだったが、初代カローラがあとから4ドアセダンをラインナップに加えたことは、より本格的なセダンへとステップアップを成し遂げたということだった。

 半面、2ドア小型セダンの登場は、クーペの持つ「2ドア=スポーツカー」のイメージがセダンへと流れ込むきっかけとなった。トヨタ・コロナは65年に2ドアハードトップとなり、66年には独BMWも2ドアを追加している(02シリーズ)。こうしてスポーティーさを求めた結果、後部座席を持つれっきとした乗用車でありながらも、2ドアになることでクーペを名乗り、日本では初代セリカから始まったスペシャルティーカーのカテゴリーは、今日のスポーツセダンへとつながっていった。

 セダンをスポーツバージョンに仕立て上げる。コンセプトこそスポーツカーからは始まっていないものの、相応の運動性能を与えスポーツカーに見合うボディデザインをセダンに引き込んだモデル。TE27カローラは性能だけでなく、だからこそ美しいのである。



トレーラーへの積み降ろしの際も1人でテキパキと作業していた。それはもう手慣れたもの。使用しているトレーラーは中古で購入したオープンホイール用なのでクルマのドアを開けることができない。エンジンをかけるために窓から乗り込むはめになってしまった。




モモ製ステアリング、プロトティーポ・フラットディッシュをまとったコクピット。ショーの際にはこのステアリングが、ポルシェファンの垂涎の的になるという。




まだ好きなクルマを買う余裕のなかった昔、高ぶる気持ちは自分でもどうしようもなかった。だから「自分で買えるもの」のコレクションを始めたのだそうだ。1994年から集め始めたステアリングホイールは、80年代のオールドモデルばかり、その数は50本は下らないという。



【3】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 08月号 vol.170(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 トヨタ カローラ(全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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