世界を変えたスポーツカーZ|S30フェアレディZの魅力 Vol.1

       
日本が世界に誇るスポーツカーが、日産のフェアレディZである。「Z」のアルファベットが付かない、オープン時代のフェアレディは、その華麗なネーミングからは想像できない、アグレッシブな走りを見せた。その後継となるフェアレディZは、高性能なだけでなく快適性を重視した大人のスポーツカーだ。その技術力の高さと優秀性は瞬く間に世界に知られ、公道の景色だけでなく、モータースポーツの風景までも大きく変えてしまった。

 美しいクローズドボディを身にまとったフェアレディZがデビューしたのは69年10月のことである。アルファベットの「Z」は究極のフェアレディであることを意味した。ご存じのように、型式は「S30」だ。高い剛性を誇るモノコック構造を採用し、フォルムもロングノーズ&ショートデッキのファストバックスタイルとなる。

 インテリアも当時の最先端を行くダイナミックなデザインだ。コクピットと呼ぶにふさわしい上質な造りで、インパネを厚いソフトパッドで覆った。2眼メーターの隣には時計を含む3連メーターを並べている。

関連記事:ドアもフェンダーも鉄板が薄い! 市販レーシングカー、Z432‐R|S30フェアレディZの魅力 Vol.2

 パワーユニットは、名機の名をほしいままにし、スカイライン2000GTなどにも積まれているL20型直列6気筒SOHCを主役の座に据えた。このL20型エンジン搭載車が「S30」だ。ベースグレードのZは4速MT、上級のZ‐Lは5速MTとなっている。が、どちらもSUツインキャブを装着し、パワースペックに差はない。

 フラッグシップのZ432には「PS30」の型式が与えられている。搭載されるのはスカイライン2000GT-Rから譲り受けたS20型DOHC4バルブで、排気量は1989ccだ。レーシングエンジン直系の高性能ユニットで、メカニズムは凝っているし、組み付けるにも熟練の技術を要する。もちろん、軽々とリッター当たり100psレベルに達する高い実力を秘める、チューニングの余地も残した。

 パワースペックは2Lクラス最強である。ソレックス40PHHキャブを3基装着して最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0㎏‐m/5600rpmを絞り出す。トランスミッションはポルシェシンクロの5速MTだ。最高速度はZ‐Lが195km/h、Z432はGT-Rを上回る210km/hと発表されている。



コクピットと呼ぶにふさわしいインパネ。この後も踏襲される3連メーターが装備。


高性能だがシンプルな構造のため、整備性に優れ、改造ベースエンジンとしても重宝された。

掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年 10月号 vol.147(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideki Kataoka/片岡英明

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