初代30系セドリックをカスタム魂を注入しながら見事に再生!

       
実に半世紀前のモデルのセドリック。オリジナルの雰囲気を損ねない繊細なレストアと、その美しさを強調する大胆なスラムドに注目が集まり、2012年の横浜ホットロッドカスタムショーではベストジャパニーズカー賞もゲットした実力派だ。

コトの始まりは2009年。地元のとある旧車イベントで車高の低いセドリックを目にしたオーナーは、のちにその同型モデルを手に入れてしまうほどセドリックに魅了された。二輪四輪問わず古い乗り物イジりを楽しんできたオーナーだが、ここまで古いモデルは初めてとあって、“さて、どうしたものか”と思案しつつ情報収集を開始。すると、最初に目にしたセドリックが、静岡県でボディショップを営むカスタムビルダー「ナグティックス」の仕業だったことが判明! そうと分かればハナシは早く、さっそく同ショップに持ち込まれたセドリックは、遠慮なくバラされていったのだ。

が、ここで難関となった点がひとつ、そして有利に働いた点もひとつある。まず難関は、まだアメリカのクルマ作りをお手本にしてきた時代のモデルらしく使用されているボルト類がミリではなくインチ規格であること。サビたネジでも気軽に新品を買ってくるワケにいかないのだ。しかしそれらを克服出来た有利な点が、オーナーが金属加工や処理の仕事に就くプロだったこと。バラしたボルトや部品はすべて確実に保管し分類、それこそ小さなワッシャー1枚に至るまでコツコツと再生していく地味〜な作業から、クロームパーツやモールディングの修正や研磨といった工程もオーナーが担当を買って出たのである。

ブラウンメタリックの美しいボディにキャンディルートビアーのルーフも見事にマッチするペイントは、オーナー自身が奥の部品を持ち帰り、メッキまで手掛けている間に「「ナグティックス」にて着々と進行させたもの。外装パーツがビシッと仕上がるなら、ボディもそれに見合うクオリティがふさわしい、と古い塗装は完全に剥離して下地作りからパーフェクトに仕上げられた。

おっとその前に、エアサスのセットアップも同ショップで進められていて、まずフロントはロワアームの延長やボールジョイントの取り付け位置変更といった、走行機能と車高を両立するための加工も投入。リアは本来アクスルの上で交差するリーフスプリングを下側に通す“逆付け”でダウン。最後のフィニッシュ前に1cm単位の微調整も加えて、理想的なオチっぷりを実現。もっとも地面に近いマフラーもワンオフで作り込み、全下げ状態ではビッタビタに設置する低さナリ!

そんなこんなの作業が進むうち、ベテランオーナーとビルダーの奮闘のウワサは静岡各地にジワジワ広まり、休日にはローライダーやカスタム・ボム乗りなど畑違いのジャンルから仲間たちがヘルプに駆けつけた。「横浜ホットロッドカスタムショー2012」エントリー直前には、インテリアなどを若手職人がガレージまで出張して仕上げてくれた甲斐もあり、見事なまでのショークオリティに蘇ったのである。

ちなみにショーネームのResurrect(リザレクト)は“蘇る”という意味。貴重なクルマの価値を尊重した壮絶レベルのレストア&大胆激低コラボは、うるさいマニアとカスタム好きを同時に魅了する。誰に見せても納得の1台なのデス!

写真12点>>初代セドリックのカスタムの全貌を見よっ!!


>>ホイールは6穴の純正14インチ鉄ちん履きで、ボディ同色にペイントされている。チョイスしたタイヤはスキニーリボンのプレミアムスポーツウェイをセット。カスタム色が出ているポイントだ。


>>グリル類やバンパーはリクローム済み。ゴールドメッキは純正状態より、濃い金色に仕上げたとのこと。ちなみにヘッドライトはS.E.V.マーシャルをセット。ロービーム側は猫目マーク入りだ。


>>ボディとトップはツートンにして塗り分け。ボディはシルバーメタリックベースでソリッドのブラウンを調色したライトブラウンメタにペイント。トップはガンメタをベースにキャンディルートビアを重ねている。


>>エンジンはオリジナルのH20型の1900ccエンジン。一度降ろしてオーバーホール。へダースやらバルブカバーやら、マスターシリンダーやらはすべてサビを落として再生。ちなみに、ブレーキのオイルラインやキャブレターの燃料パイプは手曲げして、美しいストレートなラインにチェンジ。


>>もともとアクスルハウジング上にセットされるリーフは逆付け。新たにブラケットをセットしてエアバッグを入れる。デフ近辺には移設した燃料ポンプも見える。マフラーはワンオフだ。


>>全下げした時の車高がコレ。フレームやミッションこそ地面に当たらないが、マフラーはすでに着地しており、限界ギリギリのロワードっぷりを見せている。


>>エアバッグはユニバーサルエアー。フロントのロワアームのボールジョイントはマウント部を1.5cmほど下方にオフセットすることで、ドロップスピンドルのような役割を果たしている。


>>トランクには、フレームから立ち上げたタワーにセットしたエアタンクやコンプレッサーをセット。電磁弁やエアバルブはショップ名が描かれたボードに配され、ショーカー的要素も見せる。


>>オリジナルパーツの状態の良さを誇るダッシュ付近だが、メーター回りのパネルやグローブボックスのパネルは、2mm厚のアルミ板を切って新たに製作、ボディ同色ペイントもされる。


>>インテリアはもちろん張り替え。なんと、セドリックの十字形エンブレムとそっくりな模様の生地が見つかったため、インサートにはそれを使用し、ベージュのファブリックとのコンビとした。




カスタムCAR2013年5月号掲載
BASE CAR:日産・セドリックカスタム 1964年型
SOURCE:NAGTICS

PHOTO/渡部祥勝

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