ドライバー情報 自販機めしはトラッカー伝統のファストフード! レトロ自販機の一大聖地 中古タイヤ市場(神奈川県相模原市)

カップラーメン、うどん、そば。ハンバーガーにカレーライス。今も昔も自販機めしはトラッカー御用達のオートレストランだ!


↑斉藤社長が格別に思い入れのあるハンバーガー自販機。ハンバーガー、チーズバーガー、てりやきバーガー、いずれも同価格。その秘密は、カミオン公式YouTubeチャンネルのカミオンTVでバッチリ収録(リンクは記事の最後にて)。

神奈川県相模原市にある中古タイヤ市場は、その名のとおり1万本もの在庫を常時ストックする中古タイヤ&ホイールの専門店でありながら、レトロ自販機の聖地として知られる、ユニークなスポットだ。


↑中古タイヤ市場で使用しているトラック。両車ともモダンテイストに飾られている。

子どものころハンバーガーの自販機に魅了された経験を持つ社長の斉藤辰洋さん。大人になり、なにげなく見ていたネットオークションにレトロ自販機が出品されているのを見かけ、勢い余って落札したのがそもそものキッカケだ。

本業と副業のバランスが入れ替わってしまった感のある斉藤社長に、レトロ自販機に関する疑問をぶつけてみた。

1日でも長く稼働させるのが一番の願い

編集部:まずはレトロ自販機への思い出を教えてください。
斉藤社長:最初の体験は、近所のパチンコ屋にあったハンバーガーの自販機。子ども心にすごい魅力がありました。大人になると、動きはもちろんいかにも昔風のデザイン、そしてチャチイ音もツボでした。

編集部:レトロ自販機を集められたのはいつからでしょうか?
斉藤社長:10年前ですね。たまたまネットオークションで出品されていたのを見かけて(※今はないそうです)。そもそもは趣味で集めていたんです。なお、自走で引き取りに行きます。

編集部:ちなみに一番遠くまで足を伸ばしたのは?
斉藤社長:北海道旭川ですね。現地でおいしいものは食べましたけど、特に観光などはしていないです。

編集部:そもそも動くのでしょうか?
斉藤社長:だいたいこわれて動きません。製造メーカーに問い合わせても、機械のことがわかる者は今はもういないし、部品もないと言われます。だったら自分で直すしかないと。説明書はないし、自分自身、機械を直すなど専門知識や技術は持ち合わせていなかったので、時間をかけていちから独学で勉強し、とにかく手探りです。動かなくても機械や機構をよく見て動きを予測し、消耗した部品は代用したり、いちから作ったりしています。

編集部:修理するのは面倒ではないのでしょうか?
斉藤社長:全然苦にならないですね。中を見て初めて「こうなっていたんだ〜」ってわかるのが楽しくて。見た目の古さに反して機構自体は意外と新しいものが使われていたりする、ギャップと発見が楽しいです。なにしろ稼働するようになったときの喜びはかなり大きいです。

編集部:そうした自販機の保管場所は?
斉藤社長:本業のスキマ時間で修復したかったので、会社の駐車場やバックヤードです。最初はクルマが止めづらいとか、商品を運び出しづらいと、スタッフからは不評で……。私が自販機の修理に夢中になっていると「こっちもやってください」とスタッフから怒られたりもしました(苦笑)。


↑ホイールとタイヤの展示スペースには、修理を待つ自販機が所狭しと佇んでいる。

編集部:自販機を稼働させても、中身がないなんていうことは?
斉藤社長:そうなんですよ。自販機を修理して動かせるようになったとき、初めて気付きました(笑)。なので、最初は自分で作りました。今はハンバーガーやトーストなど日持ちするものは食品会社に依頼し、うどん・そば・ラーメンなどのメン類は自分で作っています。さすがにメンは製麺所から仕入れていますが、味付けや盛り付けは自分でやっています。カレーライスのごはんは自分で炊いています。


↑商品の調理、補充は斉藤社長自ら行なっている。

編集部:本業は1万本もの在庫を常時ストックする中古タイヤ&ホイールの専門店です。どうして、本業とは別業種のレトロ自販機の営業をやってみようと思われたのでしょうか?
斉藤社長:スタッドレスタイヤを交換する繁忙期には、お客さんを1〜2時間待たせてしまうことがよくあるんです。そんなとき誰だってイライラしちゃうじゃないですか。でもあるとき、お腹を満たせたらイライラが多少やわらぐんじゃないかと思い、それでお店にレトロ自販機を5〜6台並べてみたんです。そうしたら意外に好評で。


↑敷地内には多彩な中古ホイールがびっしり並ぶ。乗用車用のみで残念ながらトラック用はありません。

編集部:それはいつごろのことでしたか?
斉藤社長:今から6〜7年前くらいですね。レトロ自販機で商品を買ったお客さんが楽しむ笑顔やテンションが上がっている様子って、見ているだけでうれしくなるじゃないですか。そのうちにスタッフも「こっち(本業)はウチらにまかせてください」って言ってくれるようになり、稼働できる自販機を増やしていったんです。

編集部:ちなみに、店名は「中古タイヤ市場相模店」ですが、他店もあるのですか?
斉藤社長:昔は4店舗あったのですが、現在は相模店のみです。稼働するレトロ自販機を増やしていくうちに、業務の割合も増えていき、店を統合してレトロ自販機に特化した今は、本業が1割、自販機業が9割という感じです。

編集部:自販機を置いている敷地はもともと店舗だったのでしょうか?
斉藤社長:そうですね。ただ当初、となりは畑だったんです。うれしいことにレトロ自販機が評判となりお客さんは増えたのですが、一方で路上駐車が増えてしまい、畑の持ち主さんから「これじゃ畑仕事ができない」と毎日のように怒られてしまいまして。もちろん注意は呼びかけるもののどうしようもなかったんです。そうこうしていると「畑をやめて駐車場にする。だから責任持って借りてくれ」とおっしゃられ、今に至ります。


↑隣接する広大な駐車場。入庫状況にもよるが、大型車も止められます。

編集部:現在の稼働台数は?
斉藤社長:100台を超えるくらいです。ちなみに修理待ちの販売機は10台くらいですね。


↑自販機はデッキスペースの屋外とこちらの屋内の2列にわたってズラリと並べられている。屋内は昼間でも薄暗く雰囲気満点だ。

編集部:どんな人がこられますか? 
斉藤社長:家族、カップル、若者、いろいろな人が来ています。駐車場が広いのでトラッカーさんも来てくれます。

編集部:ちなみにお客さんに一番人気の機種はどれでしょうか?
斉藤社長:ハンバーガー、メン類です。

編集部:斉藤社長の思い入れがある機種とは?
斉藤社長:やっぱり、ダントツでハンバーガーですね。

編集部:2位を挙げるとしたら?
斉藤社長:とても選べないです。どれもが2位です。

編集部:冷凍ラーメンやオレンジを絞るやつなど、比較的新しい機種もありますね。
斉藤社長:これまでの付き合いから購入したりとか、閉店した知り合いから譲り受けるなど、理由はさまざまです。新しい機種の場合は懐かしい駄菓子とかオモチャ、珍しい飲み物など、中身で勝負しています。

編集部:お酒の自販機がありますけど。
斉藤社長:酒類の販売免許を取得していないので、ノンアルを入れてます。


↑斉藤社長の高いセンスが感じられる代用自販機。こちらには乾電池とかたちの似たオリオンミニシリーズを販売。一方、同地には本当に乾電池を販売する自販機もあるので、よく確認しよう。

編集部:おみくじがあるのはなぜでしょう?
斉藤社長:おみくじの自販機はレトロというかレアの部類で、実は意外に玉数が少ないんです。


↑読み終えたおみくじは敷地内のあらゆるところに結ばれている。

編集部:ゲームコーナーもこれまたレトロですね。
斉藤社長:つい手が伸びてしまいました。

編集部:ジュークボックスも動くのでしょうか?
斉藤社長:もちろん、動きます。


↑ジュークボックスの音源はレコード。1曲100円でなかなかの爆音だ。

編集部:そういえば、両替機ってあるのですか?
斉藤社長:中古タイヤエリアのゲームコーナー内に置いています。自販機自体は24時間営業ですが、さすがに両替機を外に置いておくのは物騒なので……。店舗の営業時間外は、紙幣が使える自販機で商品を買っていただき、硬貨にくずしてもらっています。ちなみに、営業時間内でしたら中古タイヤエリアのトイレを使えますよ。


↑キャッシュレス社会の影響を受け、両替機の肩身は年々せまくなってきている。この機体も数年後にはレアになっているのかもしれない。

編集部:斉藤社長が探している機種がありましたらお教えください。
斉藤社長:主要のレトロ自販機はほぼすべて持っているので、特に探しているものはありません。

編集部:もしかしますと、自販機が並ぶ建物も斉藤社長が?
斉藤社長:はい、自分で建てました。

編集部:ただいまフロントを昔のタバコ屋のように作られておりますが、今後はどんなふうにしていきたいですか?
斉藤社長:これまではやらなかったのですが、最近はレトロ自販機が置いてある他店の近くを通った場合、なるべく顔を出し、情報交換をしたり、メンテナンスをかって出たりしています。うっかり見過ごしてしまえば、どんどん姿を消していくレトロ自販機を1台でも多く引き取り、自分で直し、1日でも長く動かすことが、レトロ自販機好きの私の願いなんです。


↑キャッシュレス決済が進めば進むほど、中古タイヤ市場の昭和テーマパーク感の進んでいく。

なお中古タイヤ市場は、カミオン公式YouTubeチャンネルのカミオンTVでも取材し放映中です!



前編はカミオン太郎がレトロ自販機を巡礼!



後編は、斉藤社長にインタビュー!



こちらもぜひご覧ください!

取材・文:編集部 写真:編集部

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