マツダの不遇な時代に生まれながらもロータリーのプライドを守った美しいボディラインを持った3ローター。そんなユーノスコスモを新車時の状態のまま維持し続けていた、とんでもない個体を紹介。
【1994年式 ユーノスコスモ 20B Type-SX vol.1】
後にバブル時代といわれた昭和最大の好景気は1989年の12月末が頂点であったと言われる。この年より1年前、マツダは「マツダイノベーション」という経営計画をスタート。その内容は当時世界中で唯一好景気を迎えていた日本での販売拡大。そのための中心的施策が国内販売網の5チャネル体制化だった。
輸出が中心で、国内での販売が弱かったのが理由だが、それに対して行った施策としては当時のマツダに荷が重すぎた。ちなみに当時国内で5チャネル化を行っていたのはトヨタと日産のみ。そんな国内2強の施策を国内5~6番手のマツダが行ったのだから崩壊するのは目に見えていた。この経営失敗は、5チャネル化の柱として開発された象徴的基幹車種の名前から「クロノスの悲劇」と呼ばれることになる。
この頃さらに計画されていたのがレクサスやアキュラに対抗した海外高級ブランド「アマティ」の構築。その計画は実際に進んでおり、12気筒4Lセダン「アマティ1000」を始め「アマティ500(ミレーニアとして発売)」などもラインナップ。その中にはアマティブランドで発売されるのではと噂されていたマツダ初の3ローター搭載車「ユーノスコスモ」があった。ロードスターとともにどん底のマツダの中で唯一気を吐いたロータリ―エンジン搭載車だ。
【画像16枚】ユーノスコスモのマフラーは特徴的。静粛性重視のため、運転状況によって排気するパイプの数が変わる。4本マフラーがあるからといってすべてから排気するのではない現代的な仕組みになっている>> 前期型の赤系ボディカラーはソリッドのクラシックレッドだが、後期型からはメタリックカラーのパッションローズマイカが採用された。
1994年式 ユーノスコスモ 20B Type-SX(JCESE)全長×全幅×全高(mm) 4815×1795×1305
ホイールベース(mm) 2750
トレッド(mm) 1520/1510(前/後)
車両重量(kg) 1590
エンジン型式 20B-REW型
エンジン種類 3ローターロータリ―ターボ
総排気量(cc) 654×3
最高出力(ps/rpm) 280/6500
最大トルク(kg-m/rpm) 41.0/3000
サスペンション 前ダブルウイッシュボーン/後ツインダンパー付きマルチリンク
ブレーキ 前後ともベンチレイテッドディスク
タイヤサイズ 前後とも225/50R16 92V
発売当時価格 399万円
【2】へ続く初出:ハチマルヒーロー 2017年3月号 Vol.40
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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