250GTOレプリカ【2】もし誰かが買わなかったら、このクルマどうなるんですか? |1973年式 日産 フェアレディZ

センター出しのメガホンテールはヤマハのバイク用を流用したもの

       
20年以上も不動車になっていたS30Zは、なんとフェラーリ250GTOのレプリカ仕様。廃車寸前のところを救ったのは、ひとりの女性オーナーだった。機関から内外装まで見事な再生を果たし、ついにサーキットデビューまで実現している。周囲からは本物と間違われるほどの完成度を誇るレプリカと、旧車を愛してやまないオーナーの蜜月物語をお送りする。

【1973年式 日産 フェアレディZ Vol.2】

【1】から続く

 オーナーが250GTO仕様のS30Zと出合うきっかけは、神奈川県小田原市の「北村自動車鈑金塗装工業所」の北村富士夫さんからの紹介だった。北村さんが知人から「ちょっと変わったクルマがあるんだけど見に来ない?」と誘われ、L型エンジンを搭載するクルマに乗ってみたいと希望していたオーナーも誘って一緒に現車を見に行った、というのが事の始まりである。

 ある程度まではレプリカとして製作されていたが、明らかに途中で放棄された様子の250GTO仕様のS30Z。かれこれ20年以上も放置された不動車を目の当たりにして、ふたりが抱いた第一印象は正反対だった。後にクルマの再生を担うことになった北村さんは、こう振り返る。
「今にも土に返りそうで、しかも何だかよくわかんないレプリカでしょ? 本当にボロボロだったし、見た瞬間にこんなの全然いらないって思いました。だけど隣で見てたこの人(オーナー)が欲しいっていい出しちゃったんだよねえ(笑)」

 北村さんの話しを受けて、オーナーもニコニコと笑いながら続ける。
「もし誰かが買わなかったら、このクルマどうなるんですか? って聞いたら、『捨てます』っていわれて、急に情がわいてきちゃって(笑)。内外装も機関も足りないものだらけでしたけど、思い切って買うことにしました」

 見た目も話し方も、とても朗らかな印象のオーナーだが、肝がすわっているというのか、一度こうと思うと迷いなく行動に移す芯の強さも感じさせる。そもそもオーナーが旧車でサーキットを走るようになったのも、北村さんがきっかけだったとか。

>>【画像19枚】特徴的なフロントダクトの奥に設置される19段のオイルクーラーなど。「壊さないことが基本」のサーキット仕様だけに、冷却にもこだわる





>> インパネは基本ノーマルだが、MOMOのディープコーンタイプステアリングを、ショートボスを介して装着しているところがサーキットユースらしい特徴。




>> ステアリングコラム上には、アメリカンブランドのINNOVATEモータースポーツの空燃比計を装備する。






>> サーキットでラップタイムを計測するP-LAPも完備。






>> ワンオフの7点式ロールケージとリアストラットタワーバーを取り付け、剛性アップとサーキットにおける安全性を確保。





1973年式 日産 フェアレディ Z (S30)


SPECIFICATION 諸元
エクステリア:FRP製250GTOレプリカキット、日産純正OPリアルーバー、フェラーリレッド全塗装
エンジン:L28型改
吸気系:ウエーバー45DCOE(ベンチュリー38)
排気系:タコ足&センターパイプ自作、ヤマハ製マフラー改
点火系:MDI、エビスビールコイル自作
冷却系:19段オイルクーラー
燃料系:ニスモ製電磁ポンプ
駆動系:強化クラッチ、クロモリ軽量フライホイール、FJ型用ミッション改、R200LSD(ファイナル4.1)
サスペンション:テイン製車高調自作、強化スプリング(前後10kg / mm)、ロワアーム延長加工
ブレーキ:FC3S用4ポットキャリパー流用、φ285mmベンチレーテッドディスク
インテリア:レカロ製SP-Gバケットシート、7点式ロールケージ自作
タイヤ:ヨコハマアドバンA050(F)215 / 50R15(R)225 / 50R15
ホイール:RSワタナベ(F)15×9.0J(R)15×10.0J


【3】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 日産 フェアレディZ(全5記事)

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【1】から続く

text:HIDEOKOBAYASHI/小林秀雄 photo:AKIOHIRANO/平野陽

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