『本当にレストアするの?』|最後の4ドアGT-R!? 伝説を生み出した「狼」 Vol.3

S20型エンジンが鎮座するエンジンルーム。エアクリーナーはK&N製、プラグコードはウルトラ製シリコンワイヤーに交換。ブレーキシリンダーのタンデムタンクの左下にある筒状のものは、クラシックカーナゴヤで販売している「フューエルコンディショナー」で、燃費の向上やパーコレーション解消に効果があるという。

70年式 日産 スカイライン 2000 GT-R



 4ドアのハコスカGT‐Rを旧車専門店に持ち込んだ中垣さん。クルマを見たショップの社長の口から返ってきた言葉は――

「社長が『これ、本当にレストアするの?』と聞いてきました。その時にボディをはじめクルマの状態が相当ひどいことを知りました。しかし車台番号が4ドアGT‐Rの最終だったので、もうヤルしかないと決断しました」
ハコスカGT-R インパネ
発売当時の雰囲気を色濃く残しているインテリア。木目調パネルが採用されていたことが、今となっては不思議な感じがする。
助手席前にある3連メーターは、オーナーが自分で後から装着したもの。左から水温計、油温計、油圧計の順。



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 中垣さんの熱い気持ちが通じて、レストアの依頼を引き受けてくれることになった。
作業を進めるにあたり、もう1台前期の4ドアGTを用意して、ボディ関係は状態のいい部分を移植。

 だが、エンジン、トランスミッションなど主要な部分は、すべてバラしてオーバーホールしなければ使えない状態で、結果として電装系を引き直し、内装も前後シートを張り替えるなど、あらゆるところに手を加えた。

ハコスカGT-R シート
運転席と助手席は、オーナーの好みでレカロLXに交換してある。ドアの内張は2000GT用のものを装着している。


ハコスカGT-R リアシート
オリジナルに忠実に張り直されたリアシート。左下にあるカップホルダーは、オーナーが手作りしたもの。実用的で、とても重宝しているとか。


 自分でできることはやろうと、中垣さんもレストア作業に参加。クルマの隅々まで磨き込んだ。
 納得がいく姿になるまでモール類も1本1本磨き上げ、細かな部分は綿棒なども使って仕上げたのだ。

 3年間かかってようやくレストアが完了したのが、2003年秋。
運転免許を取得した頃からハコスカに乗りたかったという中垣さんだが、実はこの4ドアGT‐Rとは別にハードトップを所有した時期があった。しかしいろいろと思うところがあり、今はすでに手放している。

ハコスカGT-R センターコンソール
センターコンソールの2連メーターは、左が電流計で右が燃料計。



 現在、週に1度はエンジンをかけ、コンディションを維持する。
 天気のいい週末の夕方には、気が向けばお気に入りのドライブコースにGT‐Rを連れ出す。忙しい日々を乗り切り、ようやく手にした自分だけの時間だ。

 S20型エンジンが奏でるエキゾーストノートを聞きながらのクルージング。中垣さんは至福の時を楽しんでいる。

SPEC
●全長4395mm
●全幅1610mm
●全高1385mm
●ホイールベース2640mm
●トレッド前/後1370mm/1365mm
●最低地上高160mm
●室内長1775mm
●室内幅1300mm
●室内高:1120mm
●車両重量:1120kg
●乗車定員:5名
●最高速度:200km/h
●登坂能力:sinθ0.490
●最小回転半径:5.3m
●エンジン型式:S20型
●エンジン種類:水冷直列6気筒DOHC
●総排気量:1989cc
●ボア×ストローク:82.0×62.8mm
●圧縮比:9.5:1●最高出力160ps/7000rpm
●最大トルク:18.0kg-m/5600rpm
●変速比:1速2.957/2速1.858/3速1.311/4速1.000/5速0.852/後退2.922
●最終減速比:4.444
●燃料タンク容量:100リットル
●ステアリング形式:リサーキュレーティングボール
●サスペンション」前/後ストラット・コイル/セミトレーリングアーム・コイル
●ブレーキ」前/後ディスク/ドラム
●タイヤ」前後とも6.45H-14-4PR
●発売当時価格:150万円

掲載:ノスタルジックヒーロー Vol.143 2011年02月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

photo:Isao Yatsui/谷井功 Cooperation:クラシックカーナゴヤ

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