ひと昔前までこの国にステーションワゴン的なクルマはほとんどなく、荷物を積める車種といえばバンだった。そしてその存在は商用車と決めつけられ、普通車よりもなぜか低く見られたものだ。三重県市在住のオーナーの愛車は、KP62スターレットバン。その和製ユーロなルックスと走りはとてもバンのものとは思えない。
【1981年式 トヨタ スターレット DX バン Vol.2】
【1】から続く ゴルフのチューンドのように見た目はシンプルに、逆に中身はとてつもなく濃く。そんなオーナーのスタイルを最も強く表しているのが、7K型をスワップしたパワーユニットだ。ライトエースやハイエース用として開発された7K型は、K型の中で最大となる1.8Lの排気量を持ち、76psのパワーを発揮する高出力エンジン。特に圧巻なのがトルク特性で、14.3kg‐mのトルクを2800rpmで発生する。これはノーマルの3K型と比較すると4.9kg‐mものアドバンテージとなる。この7K型をオーナーはフレームやマウントを加工して、スタレートバンのボンネット内にすっきりと収めた。
ただし、低回転域が得意な分、苦手とする高回転はメカチューンでカーバーすることに。ポートを加工し、カムはTRDのKE003ラリーカムに交換。キャブはソレックス40PHH、タコ足はフジツボの4‐1‐2タイプにオリジナルマフラーの組み合わせで、排気効率アップを果たしている。
「下はいいけど、上のフィーリングはまだ改良の余地ありです。7K型の実力はこんなもんじゃないと思っています。これからもチューニングにトライするつもりで、イタリア製のウエーバーで、ダウンドラフト化するというのもやってみたいです」とオーナー。
>>【画像24枚】フジツボのタコ足(4-2-1)+オリジナルマフラーでチューニング。マフラー部はメインがMINI用の中間で、サイレンサーはゴルフⅣの中間マフラーを使って自作した排気系などキャブはソレックス40PHHでS型カールファンネルを装着。アウターベンチュリーが36、パイロットジェット55、メインジェット165、エアジェット200でセッティング。
ラジエーターはTE27用を流用したアルミタイプだ。ホースはステンメッシュで強化、ホースエンドのフィッティングを装着して確実に止めている。リザーバータンクは現行のアルト用だ。
7K型に換装したパワーユニットは、オイルパンを薄く加工し、さらにエンジンメンバーに逃し加工することで搭載を可能にした。ミッションはK50の5速ミッションで、7K型のパワーに耐えられずキャパーシティオーバーとなったクラッチを、OS技研製に変更して対応。
1981年式 トヨタ スターレット DX バン(KP62V)SPECIFICATION 諸元
■ エクステリア:フロントスポイラー、リアフェンダー加工、オリジナルグリーン(ブラック3/イエローワン)全塗装
■エンジン:7K型換装、ポート加工、TRD KE003ラリーカム、強化バルブスプリングなど
■点火系:永井電子機器製ウルトラプラグコード/MDI
■吸気系:ソレックス40PHH、S型カールファンネル
■排気系:フジツボ製タコ足(4-2-1)、オリジナルマフラー
■燃料系:ミツバサンコーワ製電磁ポンプ
■冷却系:TE27用アルミラジエーター、アールズメッシュホース
■駆動系:K50 5速MT、TRD LSD(ファイナル3.6)
■足回り:(F)純正加工車高調(R)板バネ加工、ブロック装着、モンロー製ショック
■タイヤ:ヨコハマ ECOS 165/60R13
■ホイール:レイズ ボルクメッシュ(F)13×8J -6
(R)13×8.5J -6(カールリム仕様)
■内装:Sanpet追加メーター(タコ、水温、油圧、電圧)、コムサφ300mmステアリング、旧トヨタホーンボタン、レカロシート、TRDシフトノブなど
【3】に続く初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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