G・ジウジアーロを擁したイタルデザイン。その代表作の一つ|1982年式 デロリアン DMC-12 Vol.3

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のタイムマシン として、世界的な人気を誇るデロリアンDMC-12は、 数奇な運命に抗うがごとく、過去と未来を跳躍する時代の象徴。

       
【1982年式 デロリアン DMC-12 Vol.3】【2】から続く

 ところが、DMC‐12のクオリティ問題に端を発する売り上げの激減や、北アイルランドへの工場誘致の条件として交付されていた英国政府の補助金が停止されたことで、翌1982年には経営状況が一気に悪化。さらにジョン・デロリアン自身も、コカイン取引の嫌疑を懸けられて(のちに無罪の判決が下る)失脚したことから、わずか8538台のDMC‐12を製作した段階で、デロリアン夢のプロジェクトは崩壊してしまったのである。

▶▶▶【画像12枚】ジウジアーロがこのクルマで初めて採用した手法でいすゞピアッツァで量産化した、別体のサッシュを持たない一体式のプレスドアなど

 ところで今回、1982年式のデロリアンDMC‐12の撮影に協力いただいたオーナーは、旧き良きイタリア製大衆車、フィアット500のミュージアム「チンクエチェント博物館」にて館長を務めている深津浩之さん。そんな彼がなぜデロリアン? と疑問を感じる向きもあるかもしれない。彼はイタリアの名門デザインスタジオのイタルデザイン社を敬愛し、現在では同社とも深いつながりを持つという。そして、その代表作の一つであるデロリアンに長らく憧れを抱いていたというのだ。

 一昨年、長年の夢を実現すべく北米から個人購入・輸入した後は、神とも崇めるG・ジウジアーロ氏本人から直接聞いたという、デロリアン製作時の逸話を自身の愛車とともに噛みしめている。エンスージアストとしては至福の時を過ごしているのである。



フランスのプジョーとルノー、そしてスウェーデンのボルボが3社共同開発したPRV・V6 SOHCエンジンを搭載。2.85Lの排気量から欧州仕様で150ps、北米仕様では130psを発生したという。





メータークラスター以外は低めにセットされたダッシュパネル。





未来への飛躍を求めたスタイルは 過去と未来を行き来する翼を得る。

【1】【2】から続く

1982年式 デロリアン DMC-12
Specification 諸元
●全長×全幅×全高(mm) 4267×1990×1140
●ホイールベース(mm) 2408
●トレッド前/後(mm) 1590/1588
●車両重量(kg) 1233
●エンジン種類 ライトアロイ90度V型6気筒SOHCチェーン駆動
●エンジン型式 PRV ZMJ-159型
●総排気量(cc) 2849
●ボア×ストローク(mm) 91×73
●圧縮比 8.8:1
●最高出力(ps/rpm) 135/5500
●最大トルク(kg-m/rpm) 22.45/2750
●変速機 5速MT
●ステアリング形式 ラック&ピニオン
●サスペンション前 不等長ダブルウィッシュボーン
●サスペンション後 トレーリングラジアスアーム アッパー&ロアリンク
●発売当時価格 2万5000ドル

初出:ハチマルヒーロー 2014年 08月号 vol.26(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1982年式 デロリアン DMC-12(全3記事)

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text : HIROMI TAKEDA/武田公実 Photo : DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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