トランクリッドの「8」の文字はV8エンジンの証! センチュリーの元となったクラウン|67年式 トヨタ クラウン・エイト Vol.2

       
トヨタが高級乗用車市場へ進出するため、当時の技術の粋を集めて世に送り出したのが、クラウン・エイトだ。

RS40系クラウンと外観がそれほど変わらなかったため、販売面では決して成功しなかったようだが、この1代限りのモデルには、もう一つ別の役割が与えられていた。

それはクラウン・エイトで得られた高級車製造のノウハウを、次の新型車に生かすこと。つまりVG10の型式を持つエイトはパイロットモデルとしての役割があったのだ。

 そのため、エンジンは新設計の2.6L水冷V型8気筒OHVを搭載。組み合わされる変速機は4速MT(フロアシフト)、トヨグライド・オートマチック、3速リモートコントロール(コラムシフト)から選択できた。

 当時のアメリカ製高級乗用車、キャデラックやリンカーンと同等の豪華さが盛り込まれ、パワーステアリング、パワーウインドー、パワーシート、自動走行装置のオートドライブ(オプション)など、時代の最先端を行くさまざまな電動機能が装備されていた。生産期間は3年半ほどと短命だったが、その直後の67年11月には型式VG20となった新設計のセンチュリーが登場する。
V型8気筒エンジンは3Lに拡大され、外観も異形ヘッドライトとなり大幅に変わったが、トヨタのフラッグシップとしてのDNAは、VG系の名とともに着実に受け継がれたのだ。

今となれば、クラウン・エイトはトヨタが世界一の自動車メーカーになる日へ向けて、懸命に造った意欲作でもあったといえるだろう。


ベースとなったRS40系クラウンより、150mmも幅が広いクラウン・エイト。全幅1845mmといってもイメージしにくいかもしれないが、クラウンマジェスタが全幅1810mmなので、それよりも広い。実車を前にするとその存在感に圧倒される。「エイト」はV型8気筒エンジンに由来する。ちなみにフェンダーミラーに付いている「ひさし」は、オプションパーツだった。


国産車とは思えないほどの大きさと、V8エンジン。排気音も低音でとにかく迫力がある。



トヨタV型エンジンは、2.6L V型8気筒OHVで最高出力115ps、最大トルク20kg-mの性能を発揮する。アルミ合金を多用しており、単体重量も約150kgと軽量なユニットだった。なお、ブレーキマスターバックは、他モデルのものを流用している。


ホーンはエイトの専用装備。和音を奏でる3連ホーンだ。


ヒーターコアサポートには、幅を広げるためにパネルが切り接ぎしてある。



RS40系と同じデザインながら、横幅が広がったダッシュボード。パワーステアリングを装備する。



トランクリッドの裏側。インナービームの中央に、別のパネルが足してある。アウターパネルは1枚ものにしてあるが、外から見えないところには、コストをかけない工夫がされている。さすがトヨタ車である。



助手席のインパネにつくエンブレム。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年10月号 Vol.153(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Kazuhisa Masud

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