【M・M思想に基づいたシビック|1984年式 ホンダ シビック 3ドア Si Vol.1】
ホンダのクルマ作りの基本コンセプトである、M・M(マン・マキシマム・メカ・ミニマム)思想。これは、乗員のためのスペースを最大限に、メカニズムスペースを最小限に……という独自の哲学で、古くは1967年に登場したN360にも、その原点を見出すことができる。そして、実際に「M・M思想」という言葉が使われ始めたのは、「ワンダー」の愛称で知られる3代目シビックからだった。
83年デビューのワンダーは、3ドアハッチバックと4ドアセダン、遅れて登場した5ドアハッチバック(シャトル)という、3つのボディをラインナップ。なかでも3ドアハッチバックは斬新で、初代からの2ボックススタイルを受け継ぎながら、ロングルーフデザインを採用。これにより後席の頭上空間を確保し、居住スペースの大幅な拡大を実現。その一方で、相反する空力性能も向上させた。また、デザイン性にも優れており、84年にはグッドデザイン賞を受賞したのである。
さらに同年には、スポーツグレードのSiを追加。最大のトピックはエンジンで、搭載されるZC型は市販乗用車で世界初の4バルブ内側支点スイングアーム方式のシリンダーヘッドを採用。これは当時のF-1にも用いられた構造で、カムシャフトをバルブの内側に配し、スイングアームでバルブを作動させるというもの。加えて、異形中空カムシャフトやアルミ合金製のシリンダーブロックにより、軽量化も達成。等長インテークマニホールドや4‐2‐1‐2レイアウトのエキゾーストシステムを装備することで、排気効率も高めている。その一方で、ホンダ独自の電子制御燃料噴射システム「PGM‐FI」を搭載し、燃費性能も向上。つまりZC型は、高性能なだけではなく、高い経済性も持ち合わせていたのだ。
>>【画像15枚】ハチロクと人気を分け合った ホットハッチの元気印。大型の曲面ガラスを用いたクリスタルゲートがリアビューの特徴となる部分。この個体には輸出用テールランプが装着されている【2】に続く>> 1.6ℓDOHCエンジンを搭載するグレードに与えられるSi。このエンブレムは純正ではなく、4代目「グランド」シビック用を流用。
>> リアのスピーカーボードに設置されているのは、純正オプションで設定されていたGathers(ギャザズ)のスピーカー。購入後にオーナーが装着したそうだ。
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主要諸元 SPECIFICATIONS
1984年式 ホンダ シビック 3ドア Si●全長×全幅×全高(㎜) 3810×1630×1340
●ホイールベース(㎜) 2380
●トレッド(㎜) 1400/1415
●車両重量(㎏) 890
●エンジン型式 ZC型
●エンジン種類 直列4気筒DOHC
●総排気量(cc) 1590
●ボア×ストローク(㎜) 75.0×90.0
●圧縮比9.3:1
●最高出力(ps/rpm) 135/6500
●最大トルク(㎏-m/rpm) 15.5/5000
●変速比 1速3.181/2速1.944/3速1.304/4速0.965/5速0.812/後退3.000
●最終減速比 3.866
●ステアリング ラック&ピニオン
●サスペンション ストラット/トレーリングリンク
●ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ 185/60R14(前後とも)
●発売当時価格 137.6万円
【すべての写真を見る】初出: ハチマルヒーロー 2018年 3月号 vol.46
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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