約7年間の総生産台数は24万台近くにも達する実用車ベースの「スペシャリティクーペ」|1994年式 オペル カリブラ 16V【1】

開口部の小さなマスクも、空力コンシャスであることを示す

       
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空力コンシャスな美しきスポーツクーペ

空力係数(Cd)値「0.30」をという当時の常識を覆すスペックを引っ提げて、1981年にデビューした3代目アウディ100あたりが契機であろうか、ハチマル時代は日本でも欧米でも、エアロダイナミックスへの取り組みが、ある種のブームのごとく喧伝される時代だったといえよう。そんな中、Cd値0.26(一部グレード除く)という、まるでコンセプトカーのような数値を堂々と掲げたオペル・カリブラのデビューは、当時かなりのインパクトをもたらした。

1989年秋のフランクフルト・ショーに「90年モデル」として登場したカリブラは、オペルのスペシャリティクーペとして、75年9月から88年まで長寿を保った2代目マンタの後継車となるべきモデルであった。

 先代に当たるマンタが、同じく75年に同時デビューした2代目アスコナをベースとするFR車だったのに対して、新生カリブラはFFレイアウトを持つ新世代の小型サルーン、初代ベクトラをベースとして開発されたもの。パワートレーンも基本的にベクトラと共通とされ、SOHCないしはDOHC16Vの直列4気筒エンジンを横置きする前輪駆動とされていた。

 しかし、カリブラ最大の特徴は、ボディにあると言わねばなるまい。まずはカリブラ誕生の前年、88年に誕生していたベクトラの段階から、エアロコンシャスなモデルで、Cd値は当時のベンチマークとされていた0.30を下回る0.29を実現していた。しかし、空力自由度の高いファストバックスタイルのカリブラでは、さらに空力優先のデザインを突き詰めることになるのだ。一方、流麗なクーペとしては前席・後席ともスペースは十分。さらにハッチゲートを採用し、分割可倒式シートバックとともにラゲッジスペースを拡大(後席を収納した状態で最大980L)するなど、実用性でも優秀なクーペに仕立てられた。

 91年になると、DOHC16バルブ版をベースとして、KKK社製ターボチャージャーを装着。204psを発生するパワーユニットにフルタイム4WD機構を組み合わせた「ターボ4×4」も追加。さらに92年には、2.5LのV型6気筒エンジンを搭載した上級モデルも設定。97年(英国版のヴォクスホール・カリブラは99年)に生産を終えるまで、約7年間の総生産台数は24万台近くにも達するという、当時隆盛を極めていたクーペとしても大成功作となったのである。
【画像14枚】フラッシュサーフェス技術では通常のドリップモールは廃され、サイドパネルとルーフの溶接点はルーフ側となる。キャリア取り付け金具も、ここに隠されている


>>スリークな美しさを見せる後姿は、空力特性の優秀さも感じさせる。

主要諸元 Specifications
1994年式 オペル カリブラ16V

全長×全幅×全高(mm) 4495×1690×1350
ホイールベース(mm) 2600
トレッド(mm) 1425/1445(前/後)
車両重量(kg) 1320
エンジン型式 X20型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量(cc) 1998
内径×行程(mm) 86.0×86.0
圧縮比 10.8:1
最高出力(ps/rpm) 135/5600
最大トルク(kg-m/rpm) 18.8/4000
サスペンション 前マクファーソンストラット 後セミトレーリングアーム
ブレーキ 前後ともディスク
タイヤサイズ 前後とも195/60VR15
新車時価格 278万円

【2】へ続く

1994年式 オペル カリブラ 16V(全2記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT:HIROMI TAKEDA/武田公実 PHOTO:MASAMI SATO/佐藤正巳

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