永遠の憧れ。 ドイツのマイスターと 日本の職人が育てたブランド。|BBS_STORY_05

BBSの“顔” クロススポーク




彼の地で確かな結果を残したうえで、80年代になるといよいよここ日本で、BBSの第二章が幕を開ける。BBSの強みである繊細で強いクロススポーク技術を、優れた日本の鍛造技術を持って鍛造ホイール化したのだった。それには非鉄金属系の軽金属を地場産業として栄えた富山県高岡市にあったワシマイヤー社の技術が欠かせなかった。彼らは古来の鍛造製法を用いて繊維編機用の大型ビーム(糸巻き)を製造する会社だった。直径1・0m、重さ100㎏もあるような巨大な編み機を鍛造で成型する技術は、世界を見渡してもそうあるものではない。ワシマイヤーとドイツBBSは、互いの技術を認め合って手を取り合い、日本BBS株式会社(現・BBSジャパン株式会社)が立ち上がることになった。

そこからの日独コラボは、まさに破竹の勢いだった。その象徴として取り上げたいのは、BBSジャパンが1992年よりフェラーリF1チームのオフィシャルサプライヤーに認定されたこと。世界最高峰のF1チームに採用されたこと自体が、その性能と品質を物語る。なおかつフェラーリから要求された「既存品よりも10%の軽量化」を前に、BBSジャパンは20%もの軽量化を成功させて納品したという逸話も残っている。もちろん、既存品よりも強度や剛性を高めながらにして、である。以来、フェラーリF1チームとは長きにわたるパートナーシップが続き、特に2000年代は怒涛の5連勝のほか、ミハエル・シューマッハの連勝記録を支えた。この功績が称えられ、2002年にBBSはフェラーリ革新大賞を受賞している。

ブランドの発祥はドイツだったが、現在、BBSの鍛造ホイールに関してはすべてBBSジャパンが設計、生産している。ドイツに本拠を置くBBSジャーマニーは鋳造ホイールメーカーとして活動し、同じくドイツでレーシングホイールを供給するBBSモータースポーツはBBSジャパンの100%子会社となった。ドイツを筆頭にヨーロッパで活躍するBBS製レーシングホイールの多くは、今では日独コラボによる技術の結晶である。
 

--{時代がどう移ろうとも、BBS製ホイールが最高峰にして、永遠の憧れであることは今もまったく変わらないと思う。}--

時代がどう移ろうとも、BBS製ホイールが最高峰にして、永遠の憧れであることは今もまったく変わらないと思う。それは世界中のあらゆる立場の人、すべてが口をそろえる。ジャパンメイドのBBS鍛造ホイールに恋い焦がれ、ヨーロッパではそれを軸としたレーシングホイールが着々と戦績を積み上げる。BBSジャーマニーにしても、先ごろKWオートモーティブの傘下となったことで、よりリ・ブランディングと技術の深化に力を注いでいくそうだ。BBSジャーマニーの技術力もまた世界最高峰であることは間違いない。

誰もがBBSに対する憧れを前に、世界中の経営者やエンジニア、そして現場で働く誰もが誇りに思っていることを、筆者はあらゆる取材を通して体感した。BBSホイールは常に世界最高峰であり、その品質と性能、そしてブランド力は守り続けていかなければならない。世界中の関係者がそれを共有した時、BBS製ホイールの魅力はより盤石となり普遍的なものとなる。

クロススポークとはエンジニアリング的に理に叶ったものであると同時に、世界中のレース好き、クルマ好きをクロスさせひとつにまとめ上げるキーデザインであると思った。往年のクラシックポルシェから最新モデルにまで、すんなりと溶け込み、そして圧倒的な性能とヴィジュアルを持って我々を黙らせる。そんなBBS製ホイールから、僕らはまだ目が離せない。いや、きっと未来永劫、ずっと憧れの存在であり続けるのだろうと思う。


初出:PORSCHE Graphix

photo:中島仁菜 Nakajima Nina  text:中三川大地 Nakamigawa Daichi

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