伝説のエンジンTC16、完成度も十分の2.1リットルと新開発の1.8リットル。どちらをテストする?|「OS技研クラシックカーレース参戦プロジェクト」がテスト走行【その2】

さらなる可能性を確かめるために投入される1.8リットル仕様。見た目は2.1リットルと何も変わらないが、ボアが異なる(φ89mm→φ86mm)ため、新たなブロックで製作している。

       
OS技研が開発した4気筒DOHCエンジン「TC16-C1」。これをPB110サニー・エクセレントに搭載し、クラシックカーレースに参戦する「OS技研クラシックカーレース参戦プロジェクト」は雑誌「NOSTALGIC SPEED」において連載中の人気企画だ。

そのOS技研がいよいよレース本番を目前に、走行テストを実施した。
その様子をリポートしていこう


—————————————————————————————
【画像10枚】テスト前のチェックもドライバーの準備も万全に整ったPB110サニー・エクセレント

【その1】伝説のエンジンTC16型の市販化に向けてレース参戦! OS技研「OS技研クラシックカーレース参戦プロジェクト」がテスト走行を実施!

テストを重ねて完成度を高めた2.1リットル仕様
それでも新たに1.8リットル仕様を試す理由は!?

 2021年12月のシェイクダウン以降、マイナートラブルは発生したものの、エンジン本体はノントラブルで、パワーチェックでも約250㎰を記録していた。そして、2022年6月には気温36℃の中、岡山国際サーキットで1分48秒台をマーク。上々の結果を得たことで、想定していた8000rpmのレブリミットを超えて9500rpmまで試すなど、テストはおおむね順調だった。
 レースデビューが2022年11月13日に岡山国際サーキットで初開催される、JCCA公認のヒストリックカーレースに決まり、あとは熟成を重ねていくだけに思えた。テストで9500rpmまで回した2.1リットル仕様のピストンとブロックの側面に傷が入っていたが、これはピストンスピードが限界を超えていて、オイル潤滑が追い付かないことによるもので、本体のトラブルではない。TC24の実績から、8000rpmまでに回転数を抑えれば問題ないのは分かっているのだが……。
 最終的に開発陣が出した結論は、「1.8リットル仕様を新たにテストする」だった。ボア、ストロークを⌀86mm×79mmへと下げて、ピストンスピードを抑え、芯間を長く取ったコンロッドを採用し、連かん比を最適化することで側圧を抑える。さらにボアの拡大も3mmとなるので、ブロック強度の不安もなくなるなどメリットは大きい。排気量ダウンで失うパワーは回転を上げることで補い、使える回転領域を広げることで、無駄なシフトアップ/ダウンを減らしてタイムを稼ぐのが狙いだ。守りに入るのではなく、少しでも良くなる可能性があるならチャレンジしたい。技術屋集団のハートが攻めへと突き動かした。
 もちろん、ピストン、コンロッド、クランクはまったくの新規ではなく、すでに実績のあるデータを使って製作。信頼性、耐久性ともに問題がないという判断からの挑戦だ。吸排気はそのままで、排気量は約300cc下がるので、どのような結果になるかは未知数だが、L14型をベースとした1.8リットル仕様はバランスがよく、負荷が少ないと開発陣は想定した。

>>TC16-C1の1.8リットル仕様。最高出力220~230㎰、1万rpmを想定している。

>>エキゾーストマニホールドは、エンジンとストラットタワー間のスペースがミニマムなため、TC24と同じパイプ長とするためには、いったん前方に出す独得の形状。パイプ径はφ48㎜、素材は1.2㎜厚のステンレスだ。



>>ドライバーは、河上正治さん(写真右)が努める。OS技研前社長の岡崎正治さんから直々にオファーがあったそうだ。




【その3】いよいよ1.8リットル仕様のTC16-C1のテスト開始! しかし想定外のトラブル発生!?|「OS技研クラシックカーレース参戦プロジェクト」がテスト走行

【その4】バルブクラッシュの原因判明。2リットルユニットも加えて続く新エンジンのテスト!|「OS技研クラシックカーレース参戦プロジェクト」がテスト走行

photo : Yukio Yoshimi吉見幸夫 /text:Shinichi Yamazaki/山崎真一

RECOMMENDED

RELATED

RANKING