ロータリー命の熱狂的オーナー|自身の競技参加には終止符を打ち、サポートした息子はRX-7好きに|1973年式 マツダ RX-2 Vol.3|ニッポン旧車の楽しみ方

ここ6カ月間手がけていた1985年式 RX-7がようやく完成に近づいた。ブレーキキャリパーもボディと同色に塗装するのがタウザーさん流だ。このRX-7はツーリング用として、ややマイルドな足回りのセッティングを施した。運転席にはウッドパーツをふんだんに使い、サウンドシステムも高級品。

       

ニッポン旧車の楽しみ方

幾多の苦難を乗り越え、広島という土地で生み出された世界に誇るロータリーエンジン(RE)は、マツダが量産車への搭載を可能にした歴史的エンジンだ。1967年にデビューしたコスモスポーツを皮切りに、マツダのラインナップに次々と搭載。北米市場へも輸出されたことで、アメリカにも熱狂的なREファンが存在する。今回紹介するギャリー・タウザーさんもそんな1人。クラシックRE搭載車に魅せられ、その思いは息子へも伝わっているのだ。

【ロータリー命の熱狂的オーナー|1973年式 マツダ RX-2 Vol.3】

【2】から続く

 タウザーさんのREにかける熱意は、自分自身の中だけで収まることがなかった。26歳の時にSCCA(全米スポーツカークラブ)でオートクロス(ジムカーナ)を始めたタウザーさんは、息子のフォレストさんをいつも競技に連れて行き、幼いうちからクルマに親しむ機会を作った。フォレストさんは5歳でカートに乗り、2年後にレースを始めるようになると、タウザーさんは自身の競技参加には終止符を打って、自分の時間とお金をフォレストさんのレースに費やすようにした。自分でもカートを運転しながらフォレストさんと一緒に練習した頃のことを、「100km╱hも出して自分の息子と競争するなんて最高だぜ」と回想する。

 体の大きかったフォレストさんは、小学校高学年になるとカートレースには不利になって競技から離れた。それからは父親からREの手ほどきを受け、ごく自然にマツダロータリーのファンになった。14歳の時に壊れた2台の1985年式RX‐7を父親から与えられ、それを自分で組み合わせて1台にした。それが初めてのクルマになった。その後に好きだった1979年式 RX‐7 リミテッドエディションへと乗り継いだが、その愛車は残念なことに不慮の単独事故で廃車にしてしまった。3台目になる現在の白い1979年式RX‐7は、父親にねだって譲ってもらったクルマで、初期型なのがお気に入りだ。



>> 峠を走り込んでも、ロールする気配なくコーナーを抜けていく姿は実に美しい。にもかかわらず、路面の段差はやんわりと吸収するサスペンションの仕上げは見事だ。前を行くのはフォレストさんのRX-7。


 本誌VOL144「ヒーローの棲むガレージ」のコスモスポーツの写真に見入りながら「うらやましいなあ、この人」とつぶやいたフォレストさん。実は趣味が高じて、現在はプロのメカニックとして活躍中だ。近所にあるマツダ専門ショップ「ROTORSPORT」に勤めて1年半。REのメカニックとして30年の経験を持つショップオーナー、ポール・エレンガさんの右腕として、たくさんのマツダ車に接しながら過ごす毎日だ。エレンガさんとタウザーさんとはクルマを通じた旧友でもあり、3人はいつも情報交換を欠かさず、それぞれがどのクルマをいつ仕上げるか、そんなことがお互いに気がかりの日々を送っている。

「REからパワーを引き出す秘けつは、インテークの形状だよ」

 そう語ったタウザーさんの言葉が耳に残った。その一言に、これまでの経験、そしてこれからの抱負がしっかりと凝縮されていた。これほどの熱意を捧げる人だからこそ、これからもますます元気にクラシックロータリーを走らせてもらいたいと願うのである。


>>【画像20枚】ロータリーピックアップのウッドパネルの美しい室内もオリジナルのまま。三角窓のすぐ下に付くドアオープナーは、前に倒すとドアロックするという優れもの。オリジナルのAMラジオの外装はそのままに、中身をRX-7から流用したAM/FMラジオなど




>> 自宅前でくつろぐギャリー・タウザーさん(右)と、息子のフォレストさん。最近は家の改装にも忙しいというタウザーさんは、空調設備会社に勤める、あくまでもアマチュアのマツダファンだ。





>> 家の裏庭にあるガレージが作業場だ。次に取りかかる予定のRX-3は、タウザーさんが以前オートクロスに使っていた車両。黄色い塗装が仕上がっていたボディシェルには、まだ何も取り付けられていなかった。






>> 裏庭のガレージの脇に建てられたビニール製の簡易車庫の中の様子。レストアを待つ1970年式 R100(左)と1973年式 RX-3(右)があった。RX-3はSCCAのITA(改造車Aクラス)のレース車両で、非常に珍しいという左ハンドルの5速トランスミッション仕様。2台の上には棚が作られてパーツ類が山積みになっていたが、これでは倉庫自体を解体しないとクルマが出せないのではないかと心配になってしまった。



ノスタルジックヒーロー 2011年 10月号 Vol.147
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ニッポン旧車の楽しみ方 第3回|1973年式 マツダ RX-2(全3記事)

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【1】【2】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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