せん望のTC16-C1ライフ|1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.1

復活バージョンでは6気筒が先発となったOS技研のTCユニットだが、4気筒バージョンのTC16-C1は、2014年から開発が進められていた。ベースエンジンはL18型で、ボア×ストロークはφ89mm×78mm。排気量は1940ccとなる。

       
あこがれのエンジンを楽しむために旧車乗りになった。そんな一風変わった510ブルーバードのオーナーが九州にいる。彼をとりこにしたエンジンはL型4気筒ベースとなるOS技研のTC16-C1。兄貴分の6気筒TC24-B1の後発でリバイバルが望まれるも、いまだ正式な発表のない幻のハイレブパワーユニット。現在、世界に1基だけの究極のL型4気筒を、彼はいかにして手に入れ、どう味わうのか。せん望のTC16-C1ライフを紹介する。

【1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.1】

 今となってはことのほか薄く軽く感じるつくりのドアを開け、当時のままの状態を保つ助手席に身を置いた。「ガタピシ、ガタピシ」。クルマが走り出すとボディのあちこちからキシミ音が聞こえてくる。ペダルを踏む音、シフトレバーの操作音、ギアが噛み合う音、タイヤが跳ね上げた小石がフェンダーのインナーをたたく音……。

 くたびれた旧車にありがちなさまざまなノイズ。それらのすべてがドライバーがアクセルを強く踏み込んだ瞬間、すっと消えた。そして、その後エンジンは鞭を打たれたように激しく回り始め、レーシングチューン特有の、甲高いサウンドだけが車内に響く。ギアを変えても、あっという間にシフトチェンジを求めてくる強烈な吹け上がり。トルクバンドに突入したときの、フロントタイヤの接地感がなくなりボディがふわっと宙に浮く感覚が、超高回転域まで延々と続く。

 さっきまでのくたびれた旧車感がうそのようだ。まさにレーシングエンジンの鋭くエキサイティングなパフォーマンスを目の当たりにする加速感だ。
「どうです? クセになるでしょ。さっき話した『高回転型だけど、俗にいう引っ張るエンジンじゃない』といった意味も分かるでしょ?   このクルマを走らせるたびに、本当にすごいエンジンだと感じます。たぶん一生、飽きることはないと思う」

 クラッチを切り、静かにブレーキを踏み込む。オーナーは、まだまだ回りたがるTC16-C1をなだめるように、ゆっくりとスピードを落としながら、そう語った。


>>【画像48枚】奥から油圧、油温、水温の順。グローブボックスにインストールし、普段は目に触れないものとしたサブメーターなど




オリジナルを大切にするインテリア。追加されたメーター以外は、ほとんど手を付けず、当時のテイストをキープする。





ステアリングの奥にのぞくのは、本誌の懸賞で手に入れたという11000rpmまで対応する、タコメーター。TC16が完成するまではノーマルエンジンにつけていたらしい。






サブメーターは奥から油圧、油温、水温の順。グローブボックスにインストールし、普段は目に触れないものとした。






エクステリアの変更点は、今のところホイールとタイヤ、そしてFRP化されたボンネット程度。ハイレブエンジンのパフォーマンスを存分に楽しむために、補強はせず、軽さ重視を貫く方針だ。「ボディがヤレたら箱換えします」とオーナー。



1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(P510)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:リスタード製FRPボンネット/カウルトップ/フロントフェンダー/トランク
■ エンジン:OS技研TC16-C1、ボアφ89mm×ストローク78mm(1940cc)、圧縮比13.5:1、OS技研鍛造ピストン、L14型用コンロッド(フルフロー加工、SQ処理)、L18型用フルカウンタークランク(オイル穴加工、ラッピング、AQ処理)カム320度(11.5mmリフト)、バルブスプリングセット荷重23kg(フルリフト荷重52kg)
■ 点火系:MSD、OS技研製デスビ(プロトタイプ)
■ 吸気系:ウエーバー48DCO S/P(アウターベンチュリーφ42mm、ニードル250、エアジェット220、メインジェット185、エマルジョンF4、ポンプジェット50)
■ 排気系:OS技研製φ48mmタコ足、長瀬発動機製φ60mmワンオフマフラー
■ 冷却系:リフレッシュ60製大容量ラジエーター(電動ファン)、亀有製16段オイルクーラー
■ 燃料系:燃料ライン引き直し(φ10mm)
■ 駆動系:OS技研Aタイプツインプレートクラッチ(フライホイール軽量加工)、直結5速クロス、インプレッサ用R180デフケース(ファイナル4.444)、OS技研スーパーロックLSD、亀有強化フランジ
■ 足回り:(F)全長調整式車高調(バネレート10kg/mm) (R)TRDショックアブソーバー(ショート)、強化スプリング(16kg/mm)
■ ブレーキ:(F)エンドレス製パッド (R)S30Z用アルフィンドラム(加工)
■ タイヤ:ポテンザRE71R 165/55R14
■ ホイール:ボルクレーシングTE37 14×7J ±0
■ 内装:Defi NSタコメーター/NS追加メーター(油圧、油温、水温)

【2】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(全6記事)

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text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー)photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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