回しすぎると折れるという噂!?「すべては87.5mmクランクを生かすために」|1972年式 日産 スカイライン HT 2000 GT

予算との兼ね合いもあり、ヘッドはP90を使用し、N42ブロックを組み合わせる。友人から譲り受けた87.5mmのフルカウンタークランクは、いろいろな場所に干渉しまくりで、何度も組み直して回るようにしたそうだ。そのほか亀有Iカムやワイセコ・ピストンなどを組み込み3.4L化。ロングストロークを生かしたトルクフルな特性に仕上げられた。

       
時代の移り変わりと共に進化してきたL型ユニット。いまだに新しい技術やノウハウが生み出されている。それだけ長きにわたって愛されてきたあかしともいえる。今回登場するのは、そんなL型をベースにあふれんばかりのトルクを与えたチューンド実例。エンジン製作はL型を知りつくしたプライベーター「サトタツ」さんが担当した。排気量を3.4Lまで引き上げた至高のエンジンと、それを搭載するにふさわしい仕上がりのハコスカをじっくりご覧いただこう。

【1972年式 日産 スカイライン HT 2000 GT Vol.3】

【2】から続く

 かくしてエンジン製作に取り掛かることになったわけだが、注目すべきはその仕様。オーナーエンジンに組み込まれたクランクシャフトは、かなり希少な87.5mmのロングストロークである。偶然、サトタツさんが友人から手に入れたこの秘蔵クランクだが、試してみたくてもゼロヨンなどをするつもりはないサトタツさんには組み込むべきエンジンが見当たらなかったという。そんな時に、好きな仕様で(当然、予算は限られるが)エンジンを作らせてくれるオーナーが、タイミングよく手を挙げたというわけだ。

「すべては87.5mmクランクを軸に、それを生かせるエンジンにしています。かなりのロングストロークなのでトルク重視の特性ですね。バルタイも下に振っています。それと87.5mmクランクは回しすぎると折れるという噂を耳にしていたので、万が一そうしたトラブルに遭遇してもLD型用クランクなどを使えばすぐに再生できるようにしました。あとは特別なパーツは使っておらず、セオリー通りに組み込んだだけですよ」とサトタツさん。

 具体的にはP90ヘッドを使用してビックバルブ化。亀有のIカムを組み込む。腰下はワイセコの鍛造ピストンや137.5mmコンロッドをセット。3mm厚のヘッドガスケットを入れて、圧縮比は12:1に設定した。これにより排気量は3.4Lまで引き上げ、トルクフルなエンジン特性に仕上げている。シャシーダイナモには載せていないが、おそらく馬力は350㎰程度、トルクは40kg‐mを超えているとのこと。いざ組み上げ始めたらいろいろと手を入れたくなってしまい、完成までにかれこれ約1年を要したそうだ。

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もともと使用していたソレックス44PHHだと3.4Lの排気量に見合った空気量を供給し切れないようで、高回転のパンチが今一つであったという。そこで50PHHを借りて試したところ、吹け上がりがスムーズに。本来の速さを獲得した。





4-2-1集合のエキマニをチョイスし、これにワンオフのφ80mmマフラーを組み合わせる。旧車ならではの突き抜けるようなサウンドもお気に入りだ。



1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT (KGC10)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:チンスポイラー、リアスポイラー、前後オーバーフェンダー、全塗装(TECHオリジナルカラー)、ボディセミレストア、HIDヘッドライト
■エンジン:L28型改3.4L(サトタツ仕様)、P90ヘッドベース、亀有Iカム(IN&EX:77度 10mmリフト)、イスキー製バルブスプリング、クロモリバルブリテーナー、3mm厚メタルガスケット、ワイセコ製ピストン(ピンハイト27mm)、137.5mmコンロッド、フルカウンタークランクシャフト(87.5mm)、燃焼室加工、ポート拡大加工
■点火系:亀有エンジンワークスMDI
■吸排気系:ソレックス50PHH、等長タコ足、オールステンレス製マフラー
■冷却系:アルミラジエーター、アールズ製オイルクーラー
■駆動系:亀有エンジンワークス製クロスミッション、R200デフ
■足回り:(F)メーカー不明車高調 (R)スターロード製車高調/メンバーカラー
■ブレーキ:(F)S15純正4ポットキャリパー (R)アルフィンドラム
■インテリア:レカロ製セミバケットシート×2脚、永井電子機器製タコメーター(φ80mm、ニスモ仕様)、オートメーター製追加メーター(燃料、燃圧、水温、油温、油圧)、電動パワステ、ナルディ製ステアリング
■タイヤ:アドバンA050 (F)205/45R16 (R)225/45R15
■ホイール:ワーク・マイスターCR01

【4】に続く


初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイライン HT 2000 GT(全4記事)

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【1】【2】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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