「名古屋5」のシングルナンバー。最初期型「マーク1」! 貴重な1台|1967年 モーリス ミニ クーパーS Vol.3

この個体は外観のオリジナリティーが尊重されているため、一見したところでは同時代のミニの豪華版「デラックス」と大差ないが、その心臓部には標準型ミニ850の2倍以上に相当する75psのパワーが与えられていた。

       
21世紀の現代に至るまで、代を重ねてきた「ミニ・クーパーS」。その名跡の源流となったのは「サーキットの鍛冶屋」と呼ばれた、F1界のレジェンド的エンジニアのアイデア、そしてモータースポーツにおける縦横無尽の活躍であった。

【輸入車版懐古的勇士 1967年 モーリス ミニ クーパーS Vol.3】

【2】から続く

 この時代のBMCミニは、日英自動車がモーリス、キャピタル企業がオースティンの代理権をそれぞれ有していたとされるが、実はほかにも複数の商社が正規輸入を行っていたという。

 今回の主役となった1台は、自動車用クーラーユニットの製造元としても知られた名古屋のユニクラ自動車が輸入した、モーリス版のミニ・クーパーS。1275ccエンジンに前後関連懸架「ハイドロラスティック」を装備した、最初期型「マーク1」としては最終期に当たる1967年式である。

 新車時の登録を残した個体で、今なお「名古屋5」のシングルナンバー。一時期は遠く四国に生息していたこともあるそうだが、この取材にご協力いただいた愛知「ガレージJ&B」代表の坂野純平さんが18年前に入手したことを契機に、愛知県に里帰りを果たした。


【画像14枚】「オールド・イングリッシュ・ホワイト(アイボリー)」の10インチホイールに、メッキのキャップの組み合わせがスタンダードとなるが標準となる足回りなど

 東海地方きってのミニ・スペシャリストである坂野さんの愛車だけに、オリジナリティーなどには入念な配慮がなされ、「オールド・イングリッシュ・ホワイト」のペイントに部分的な補修こそ施してあるものの、内装やカーペットなどは48年前のオリジナル(!)。その一方で機関部には、貴重な「スピードウェル」社製ヘッドとウエーバー社製キャブレター、タコ足マニフォールドなど「60年代の方程式」に従ったチューニングが施されるなど、センスと見識が1台に詰まったミニ・クーパーSといえるだろう。



VANなどのアイビー世代で、ライフスタイルの延長としてミニを捉えている坂野社長。また、DINKY、CORGYのミニチュアカーのコレクションは日本でも有数とのこと。





この個体は外観のオリジナリティーが尊重されているため、一見したところでは同時代のミニの豪華版「デラックス」と大差ないが、その心臓部には標準型ミニ850の2倍以上に相当する75psのパワーが与えられていた。





ガレージJ&B: ヴィンテージから高年式モデルまでが豊富に在庫、さらには純正パーツや当時もののアフターパーツを取り揃える国内有数の専門店。スタッフも専門知識が豊富で心強いショップだ。


1967年 モーリス ミニ クーパーS
SPECIFICATIONS 諸元
●全長×全幅×全高(mm) 3054×1397×1346
●ホイールベース(mm) 2032
●車両重量(kg) 698
●エンジン型式 12F
●エンジン種類 直列4気筒OHV
●総排気量(cc) 1275
●ボア×ストローク(mm) 70.6×81.3
●圧縮比 9.75:1
●最高出力(ps/rpm) 76/5800
●最大トルク(kg-m/rpm) 10.5/3000
●変速機 4速MT
●ステアリング形式 ラック&ピニオン
●サスペンション ハイドロラスティック・サスペンション
●ブレーキ形式 前ディスク/後ドラム(サーボ)
●タイヤサイズ 145R10SP(前後とも)

初出:Nostalgic Hero 2015年 12月号 vol.172
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年 モーリス ミニ クーパーS(全3記事)

関連記事: 輸入車版懐古的勇士

関連記事: ミニ

text : HIROMI TAKEDA/武田公実 photo : DAIJIRO KORI/郡 大二郎

RECOMMENDED

RELATED

RANKING