21世紀の現代に至るまで、代を重ねてきた「ミニ・クーパーS」。その名跡の源流となったのは「サーキットの鍛冶屋」と呼ばれた、F1界のレジェンド的エンジニアのアイデア、そしてモータースポーツにおける縦横無尽の活躍であった。
【輸入車版懐古的勇士 1967年 モーリス ミニ クーパーS Vol.2】
【1】から続く しかしミニ・クーパーの物語は、まだ始まったばかりだった。デビュー早々からモータースポーツに打って出たミニ・クーパーは、その優位性を確たるものとするべく、1963年3月にはエンジンを中心にさらなるチューンを加えた「クーパーS」へと進化する。クーパーSは当時欧州のモータースポーツで主流だった1100ccクラスに収まるよう、1071ccに設定され、70 psのパワーを獲得した。さらに翌1964年3月には1000ccクラス制覇を目的とした970cc版(65 ps)と、1300ccクラスおよび総合優勝も視野に入れた1275cc版(75 ps)が追加され、それぞれのクラスで快進撃を展開するのだ。
例えば、欧州ツーリングカー選手権(ETC)をはじめとするサーキットレースでは「クーパー・ワークス」として参戦。もうもうたる白煙を上げるドリフト走行でサーキットを駆け抜けたことから「スモーキー」の愛称で呼ばれたジョン・ローズらミニ使いの操縦により、ジャガー・マークⅡやフォード・ファルコン/マスタングなどの大排気量車を敵に回して果敢に戦い、しばしば総合優勝も獲得した。
そして、1961年のデビューから70年頃に第一線を離れるまでの10年間、一連のミニ・クーパーたちはイギリスの国内選手権での小排気量クラス、および総合でもタイトルを独占し続けた一方で、63年から開幕したばかりのETC選手権においても、小排気量カテゴリーで年間タイトルを獲得する輝かしい活躍を見せた。
【画像14枚】一見したところでは同時代のミニの豪華版「デラックス」と大差ないが、その心臓部には標準型ミニ850の2倍以上に相当する75psのパワーが与えられていたクーパーSの外観など しかし、ミニ・クーパーとモータースポーツといえば、誰もが真っ先に思い出すのはラリーであろう。「BMCワークス」として参戦したラリーでは、まさに一時代を築いた名車となった。特に有名なモンテカルロ・ラリーにおいては、64〜65、67年に総合優勝(66年は主催者側の言いがかりに近い理由で失格)するなど、そうそうたる戦果を重ねてゆくことになる。
そしてこれらの素晴らしい活躍が、21世紀の現代に至る「ミニ・クーパー伝説」の原動力となったのである。
シート、カーペットなどのインテリアは、新車時からのオリジナルが大切に残されている。2トーンカラーのシートは、上級バージョンの証であった。
通常はトランク左側のみに設置される25L燃料タンクは、この時代のクーパー/クーパーSのみオプションで右側にも追加できた。
1967年 モーリス ミニ クーパーSSPECIFICATIONS 諸元
●全長×;全幅×;全高(mm) 3054×;1397×;1346
●ホイールベース(mm) 2032
●車両重量(kg) 698
●エンジン型式 12F
●エンジン種類 直列4気筒OHV
●総排気量(cc) 1275
●ボア×;ストローク(mm) 70.6×;81.3
●圧縮比 9.75:1
●最高出力(ps/rpm) 76/5800
●最大トルク(kg-m/rpm) 10.5/3000
●変速機 4速MT
●ステアリング形式 ラック&;ピニオン
●サスペンション ハイドロラスティック・サスペンション
●ブレーキ形式 前ディスク/後ドラム(サーボ)
●タイヤサイズ 145R10SP(前後とも)
【3】に続く初出:Nostalgic Hero 2015年 12月号 vol.172
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
1967年 モーリス ミニ クーパーS(全3記事)関連記事: 輸入車版懐古的勇士 関連記事: ミニ