元祖TC24を搭載した赤いハコスカが吠える! 2

       
日産でも行わなかったL型エンジンのDOHC化に挑んだのは、岡山県にある「OS技研」だ。

 開発を担当した岡崎匡治代表によると、「ヨーロッパでは独自のDOHCヘッドを作っているメーカーがあるのだから、自分たちにもできるか試したかった。カムシャフトやボアアップキットなどはどこでも作れる。どうせならば、思い通りのエンジンを1基、ちゃんと開発できるか挑戦したかった。どうせ作るからには、究極的なツインカム4バルブにしたい」という熱い思いからプロジェクトがスタートしたという。

 資金面などの難関をクリアし、完成したのが「TC24-B1」。発表された81年当時の価格は、ヘッドアッセンブリーで159万8000円、コンプリートエンジンだと238万円という価格で販売されたが、あまりに高額だったため、ほんのごく一部の恵まれたユーザーの手に渡ったのみだった。


元祖TC24 図面
 また、工作機械のレベルや資金などの問題から、カムホルダーは職人が旋盤を駆使してハンドメイドしていたり、オイル潤滑方式が不十分で、高回転域では焼き付きの不安があるシステムとなっていたり、トラブルがあったのも事実。そのため、モンスター級のパワーを狙えるL型初の24バルブDOHCヘッドは、総生産台数わずか9基が販売されたにとどまった。

 この幻の24バルブDOHCヘッドと呼ばれる貴重なTC24-B1を搭載しているのが、神奈川県に在住の渡邊さんが所有する赤いハコスカだ。渡邊さんは以前からTC24-B1のファンでずっと探していたが、実物を見るのさえ難しかった。ところが、偶然にも巡り合う機会があり、譲ってもらえることになった。

 ただし、このTC24-B1を手に入れた時点では、240ZGに載せる予定だったが、これもまた千載一遇の好機に恵まれ、前オーナーが大切にしていたGT-R仕様のハコスカに巡り合うことができたのだ。しかし、手に入れたTC24-B1は、欠損パーツこそなかったが、バルブ回りの消耗が激しく、そのままでは搭載できる状態ではなかった。

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「誰もやっていなかった、TC24‐B1のインジェクション仕様を作りたかった」と話す渡邊さん。古いチューンドエンジンでも、最新のコンピューターで制御することによって、ストレスなく10000rpmまで回せるのがインジェクション仕様の強みとのこと。

ハコスカ リアビュー
リアのスタビライザーは当時のワークスタイプだが、ピロリンク化によって調整式になっている。マフラーはオールステンレス製で、メインパイプはφ80mm、出口は2本出し。

掲載:ノスタルジックスピード 2014年3月 Vol.003 (記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

PHOTO : AKIO HIRANO/平野 陽

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