「乗らないなら、売れるうちに売ったら」それでも売らないわけは……|日産初の前輪駆動乗用車|74年式 日産チェリークーペ 1200 X-1・R vol.3

FRレイアウトのサニーなどにも搭載されていたA12型エンジン。それを横置きにして、エンジンの下にトランスミッションを置くレイアウトで実現した、FF車用パワートレーン。X-1・Rに搭載されるのはSUツインキャブを装着したハイパワー仕様。左右に分かれたエアクリーナーボックスが独特の形状だ。

3年の期間と大枚をはたいて、ようやく完成したX-1・R。

「以前は毎日の足として乗っていましたが、今は車庫に置いてある時間のほうがずっと多いです。レストアできれいになったのはうれしいのですが、今度はもったいなくて、もっぱら観賞用のクルマになっています(笑)」

 別に生活用のクルマもあるということで、X-1・Rの出番はかなり減っているようだが、思い入れのある1台のクルマを大切に維持していることは、小林さんにとって毎日を元気に暮らす拠り所にもなっているのだ。

「妻は冗談で『乗らないなら、売れるうちに売ったら』と言いますが、最初にチェリーに乗せた女性が今の妻ですし、思い出もたくさんあるので、手放す気になれませんね」

 日産が、最初に世の中に送り出した前輪駆動車である初代チェリー。なかでも個性的なスタイリングを持つクーペに対して、今なお、深い愛情を注いでいるオーナーがここにいる。



車両型式はKPE10。



グレードをしっかりと主張するエンブレム、リアゲートに装着されている。



後期顔クーペX-1と共通のもの。クーペGLは、NISSANの「N」を示すものとなる。


DETAIL
74年式チェリークーペ1200X-1・R(KPE10ST)
●全長3690mm
●全幅1550mm
●全高1310mm
●ホイールベース2335mm
●トレッド前/後1270mm/1235mm
●最低地上高195mm
●室内長1560mm 
●室内幅1270mm
●室内高1060mm
●車両重量645kg
●乗車定員5名
●最高速度160km/h
●登坂能力tanθ0.417
●最小回転半径4.6m
●エンジン型式A12型
●エンジン種類水冷直列4気筒OHV
●総排気量1171cc
●ボア×ストローク73.0×70.0mm
●圧縮比9.0:1v最高出力80ps/6400rpm
●最大トルク9.8kg-m/4400rpm
●変速比1速3.014/2速1.973/3速1.384/4速1.000/後退3.358
●最終減速比4.067
●燃料タンク容量36ℓ
●ステアリング形式ラック&ピニオン
●ステアリングギア比∞
●サスペンション前後とも油圧式筒型複動・コイルスプリング
●ブレーキ前/後ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ前後とも165/70HR13
●発売当時価格63.3万円

ノスタルジックヒーロー Vol.145 2011年6月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:AKAMATSU TAKASHI/赤松 孝

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