許容回転数10000rpm。生まれながらのレーシングエンジンであるOS技研のTC24-B1Zは、組み込まれるカムやピストンも、このエンジンのために設計された専用パーツ。
超高回転の高負荷に対応すべく、精度も、耐久性も、一般的な部品のそれを遥かに上回る。
加工における公差もほとんど許さず、作業はすべてミクロンレベルのオーダーとなる。
今回は、そんな超精密なTC24専用パーツの加工現場に侵入した。
【 OS技研 TC24-B1Z 加工編 Vol.2】
Vol.1から続く そして、究極の精度という点では、ピストンの加工もカムシャフトに負けてはいない。こちらの加工プロセスは、アルミ鍛造ブランクを素材として、1:基準面出し、2:ピストンの内側、ピン穴の加工、3:ピストントップ、オイル溝の加工、4:リセスなどの斜め加工、5:ピストンの楕円加工の5工程で、それぞれ専用の旋盤やマシニングセンターで行われる。なお、OS技研がピストン用として用いる鍛造のアルミブランクは、一般的なピストン用のブランクと比べてかなり大きい。その理由は、特殊なオーダーにも対応するためだ。径やハイト、ピン位置やピストントップの形状まで、削りしろが多い分、多様なリクエストに対応できるからだ。
ピストンの加工では、加工要素の多いこのパーツならではの手順や燃焼による膨張率、負荷のかかり具合を考慮しつつ精度を高めるノウハウに注目してほしい。基準面を作る荒削り時に入れられるピストンボディの溝は、加工時にかかる力を逃すために設けられている。そして加工手順は、より厳密な精度を求める加工ほど、完成直前に行うことも重要。ピストンは腰まわりに比べて、熱膨張が大きいトップまわりを細くする設計になっている。ピストン加工の最終工程となる楕円加工は、直径方向の精度を高めるために、焼きばめ治具による差し込み式固定で、1000分の1mm精度の加工により、最適な形状に仕上げる。TC24の10000rpmを許容する吹け上がりは、これらのレーシングエンジン級のパーツ精度があればこそだ。
>>【画像33枚】10000rpmを許容すTC24-B1Zの専用パーツ等>> OS技研 岡崎正治社長 最上の素材を使い、最先端の技術で最高峰のエンジンを造る。それがTC24-B1Zを開発するに当たっての岡崎社長の決意。「ええもんを作るには、ええ材料とええ腕が絶対に必要じゃ」
>> 写真上から、マシニングでおおまかにカムの形状に切削されたブランク、中央はカム研磨が完了した状態、下が焼き入れ加工を施されて完成品だ。
>> 金型鍛造によって製造されたピストンのブランク材。OS技研に問い合わせが入る多種多様なオーダーに対応できるよう、削りしろがかなり多めに確保されているのが特徴。
初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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