偶然再会した中学校の同級生に触発されて「あまりにキレイに仕上げてもらったので、慎重に走らざるをえませんね」|1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.2

カーボン製のダッシュボードに違和感なくインストールされたレースパックIQ3。

       
「心血を注ぐ」とは、こういうクルマのことを指すのであろう。ノスタルジック2デイズ2018で一躍注目を集めたアンリミテッドが製作したハコスカ。速くて美しいをテーマに、約3年という歳月をかけて製作されたマシンは、オーナーと作り手のこだわりに満ちていた。
すべてにおいて最上級を目指したその仕上がりをご覧いただこう。

【1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.2】

【1】から続く

 悶々とした日々を送っていた時に、偶然再会したのが、中学時代の同級生というMZ20ソアラ乗りだ。愛知県春日井市にある「アンリミテッド」で仕上げたというキャブ仕様のソアラは、本誌ノスタルジックスピードVol.10の誌面を飾るほど美しく仕上げられていた。その愛情の注ぎ込み方や思い入れの深さは、うらやましくなるほど。自分の中でいつしか薄れてきてしまった情熱を持ち続けている彼が、眩しく見えたのは当然のことである。

 そんなソアラに触発されるように、高校時代から密かにあこがれていたハコスカを探し始めた。そしてソアラのオーナーが探し出してくれたこのKGC10を3〜4年前に入手。すぐさまレストア&チューンナップに取りかかった。もちろん彼が頼ったのはアンリミテッドだ。
「ソアラで、その丁寧な仕事ぶりを見ていたので、迷いや不安はまったくありませんでした。どんなクルマにしたいかを伝え、細かい仕様は基本的にはお任せです。ただ、自分もやるからには中途半端なことはしたくない。ボディのレストアからチューニングまで、一切の妥協なく仕上げようと決心しました」

 コンセプトに掲げたのは「速さと美しさ」を兼ね備えたハコスカである。そのため腐食が進んでいたボディはドンガラにして徹底補強。これまでの経験から軽さが速さに直結することは分かっていたので、外板パーツのほとんどはカーボン化することにした。

 コーナーの立ち上がりでの速さを求め、エンジンはトルク重視の特性になるようにオーダー。このように、すべてにおいて高性能を追い求め、妥協なくパーツ選択を行なっていった。そして入庫から3年余りの歳月を経て復活をとげたハコスカは、元の姿からは想像できないほど美しいマシンに生まれ変わった。エンジンに火が入った時は涙があふれるほど感動したという。

「サーキットでガンガン走り倒すつもりでしたが、あまりにキレイに仕上げてもらったので、慎重に走らざるをえませんね」。そう話すオーナーの顔は、満面の笑みとなっていた。


>>【画像45枚】装着に伴いシフト位置が若干後方にズレているが、コンソールはもちろん中身(フロアトンネル部)までキッチリ処理して違和感なく収めている、HPI製S15シルビア用6速クロスのミッションなど



カーボン製のダッシュボードに違和感なくインストールされたレースパックIQ3。





ミッションはHPI製S15シルビア用6速クロス。装着に伴いシフト位置が若干後方にズレているが、コンソールはもちろん中身(フロアトンネル部)までキッチリ処理して違和感なく収める。




さまざまな車両情報を表示できる優れもので、データーロガー機能も備える。またスマートワイヤーを採用したことによって電装系を一元管理できるようになっているのもポイント。もちろん、配線はすべて引き直している。



シートはレカロ製のRS-Gをツイン装着。アルカンターラ張り仕様をチョイスする。




1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(KGC10)

SPECIFICATION 諸元
■ ボディ:ホワイトボディ状態からフルレストア、グローバルジグにてフレーム修正、ホールソーによる各部穴開け軽量加工、フルスポット増し、アンテナ/クオーターピラー/給油口の穴埋め加工、安全タンク装着にともなうベースフレーム&トランクフロア加工、けん引フック装着に伴いフロア加工&リアメンバーのチャネリング加工、リアスタビライザー溶接加工装着、エポキシプライマーによるボディ全塗装、キャビンフロア/前後タイヤハウス/腹下チッピング塗装、フロントバランスパネルのカーボン化、ガッチリサポート装着、ドライカーボンボンネット/ドア/フェンダーミラー、カーボンフロントフェンダー/トランクフード(サポートロッド製作)、ロールケージ取り付け、オリジナルシルバー全塗装、フロントスポイラー/オーバーフェンダー/リアスポイラーブラック塗装、ウインドーモールカーボン加工、FRPフロント&リアバンパーメッキ加工
■ エンジン:L28型改3.2L仕様(ヘッド)周回燃焼室アルゴン溶接(オリジナル形状、半鏡面仕様)、ポート拡大加工(3.2L専用ビッグポートスペシャル仕様:INヘアライン仕上げ、EX半鏡面)、スペシャル形状シートカット、ASW製79Rスペシャルカムシャフト、ABB/PBBバルブガイド、ASW製INφ46.5mm/EXφ38mm-119mmビッグバルブ/強化バルブスプリング/チタンリテーナー/強化コッター/ロッカーアーム/バーニアスプロケット(ブロック)N42マニアブロックフル加工、クランクキャップボルトサイズアップ、ラインボーリング、クランクセンター裏ボーリング、上下面研、ダミーヘッドボーリング、ホーニング、パルホスコート、3.2Lクランク逃げ加工、ブロックフィラー充てん、周回対応ブロック上面水穴数調整、オイル穴拡大、チェーンガイドボルト穴拡大、強化チェーン、ASW製ショートピンハイSPLφ89mm鍛造ピストン(ピンハイ27mm)/86mmストロークフルカウンタークランク/H断面ナローコンロッド(138.5mm)/アルミ製オイルパン、エアコン専用ATIダンパープーリー
■ 点火系:ライジング製ダイレクトイグニッションシステム、HKS製FコンVプロ制御、ASW製軽量オルタネーター、強化リダクションセルモーター
■ 吸気系:ソレックス50PHH(フルオーバーホール、パワーポンプジェット加工)
■ 排気系:φ48.6mm6-1チタンタコ足、φ80mmチタンマフラー
■ 燃料計:インジェクション高圧ポンプ(2基)、ASW製電磁ポンプ(1基)、大容量フューエルレギュレーター(2基)、コレクタータンク、フューエルデリバリーパイプ、ATLフューエルタンク、周回対応燃料配管
■ 冷却系:アルミ3層ラジエーター、電動ファン、オイルクーラー
■ 駆動系:OS技研ツインプレートクラッチ、ベルハウジング加工、HPI製6速クロスミッション、カーボンプロペラシャフト、R200デフオーバーホール、ニスモLSD(ファイナル4.1)、エスコート製アルフィンデフカバー/ビレットデフキャリア、デフメンバー位置上げ、等速ドライブシャフト、プロテック製アルミ削り出しハブ
■ 足回り:エナペタル製車高調(フロント7kg/mm、リア20kg/mm)(F)ピロエンド調整式ロワアーム/テンションロッド/タイロッド、強化スタビライザー(R)フルピロ調整式スイングアーム、ワークスタイプスタビライザー
■ ブレーキ:(F)ブレンボ4ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター(R)ブレンボ2ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター、インドラム式パーキングブレーキ(純正ワイヤー対応)ブレーキマスターバック/シリンダー大容量化、ブレーキライン引き直し、プロポーショニングバルブ装着
■ タイヤ:ダンロップDIREZZA ZⅢ(F)225/45R16
(R)245/40R17
■ ホイール:レイズ ボルクレーシングTE37V(F)16×8.5J -6
(R)17×10J -20
■ 内装:ナルディ製ステアリング、レカロ製RS-G(アルカンターラ)、6点式ロールケージ、レースパック製メーター/スマートワイヤー(フルハーネス)

【3】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(全6記事)

関連記事: レストア、チューニング、カスタムの融合

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【1】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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