「実は1度だけ、本人にも運転をしてもらいました」思いを込めたL型エンジン|1974年式 日産 スカイラインHT 2000 GT Vol.3

1年半掛けてフルレストアしたボディにL28型改3.1Lのエンジンを収める。腰下に組み込んだのは数十年前に父が手掛けたコンロッドやクランク。それらを生かしつつ、ヘッドまわりはビックバルブ化するなどアップデートしている。

       
数多くのバリエーションが存在するL型チューン。なかでも王道といえるのがL28型改3.1L仕様である。ストリートで速いといわれたマシンには、大抵この排気量アップが施されていた。今も昔も「L28型改3.1」は変わらない輝きを放ち続けている。親子2代で作り上げた真っ赤なR仕様のケンメリも例外ではない。当然キャブレーターはソレックス50PHHだ。細部にまでこだわりを凝縮したその仕上がりに注目したい。

【1974年式 日産 スカイラインHT 2000 GT Vol.3】

【3】から続く

 かくして華麗なる復活を遂げたオーナーのケンメリR仕様。パワーの源となるL28型改3.1Lは、腰下はそのままに、ヘッドまわりのみ新しいパーツを組み込んでいる。具体的には、ヘッドには亀有製ビックバルブ、イスキー製の強化バルブスプリングを投入。腰下はワイセコφ89mmピストンやL14型用コンロッド、LD28型用クランクシャフトなどで構成している。

 実はこのエンジン、何十年も前に彼の父が、自身の手で組み上げたもの。鏡面仕上げのコンロッドや軽量加工したLD28型クランクも然りだ。それらを生かしつつ、オーナーがヘッドまわりに手を加えた。まさに親子2代で作り上げたL28型改3.1Lフルチューンというわけだ。



 今なら高性能なパーツを使うことで、さらなるポテンシャルアップを狙う手もある。しかしオーナーとしては父が作った3.1Lを、どうしても生かしたかった。もちろん、ターボチューンと比べたら速さは見劣りする。しかし、何をおいても代えられない思いがこのL型エンジンに込められている。

「父のケンメリがキレイによみがえったのが一番うれしい。実は1度だけ、本人にも運転をしてもらいました。懐かしがって喜んでくれましたよ」と、ケンメリを見つめるオーナー。こうしたエピソードが生まれるのも、旧車ならではヒストリーがあるからだ。


>>【画像24枚】運転席に入れられたダットサンのバケットシートも当時モノ。シート表面にはDATSUNのロゴが入る。オリジナルの助手席やリアシートなど



ダッシュボードとフロントガラスを新品に交換した以外は当時のままというが、納屋で保管されていたことも奏功してかコンディションは上々。ちなみにR純正の白ガラスも何十年も前に父親が交換したそうだ。ステアリングはダッツンコンペハンドル。




グローブボックス内にトラストの油圧、水温、油温計を並べる。カロッツエリアのヘッドユニットも収めた。





当時モノのクラリオンのインジケーターもお気に入り。



OWNER


 父の友人でもある前オーナーが処分すると聞いて、破格ともいえる条件で引き取りました。そのまま7年間ほど納屋で寝かせてしまったので、かなり長い間、不動でしたね。車検が切れてからエンジンにふたたび火が入るまで約20年たっていますから。3年前にレストアをはじめて一気に仕上げました。初代オーナーでもある父も、キレイになったことを喜んでくれています。その頃からずっと変わらない当時のナンバープレートも自慢です。



1974年式 日産 スカイラインHT 2000 GT(KGC110)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:リスタード製フロントスポイラー改、GT-R純正グリル/白ガラス/テールランプ/ガーニッシュ/エンブレム/前後オーバーフェンダー、全塗装(アウディ純正レッド)、ボディフルレストア
■ エンジン:L28型改3.1L、圧縮比12.5:1、柿本レーシング製ハイカム (80度 9mmリフト)、亀有製軽量ビックバルブ(INφ45mm、EXφ36.5mm)、イスキー製軽量バルブスプリング、ワイセコ製鍛造ピストン、L14型コンロッド(鏡面仕上げ)、LDクランク(ウエイト軽量加工)、ポート研磨
■ 点火系:亀有製デスビ/フルトランジスター、MDI
■ 燃料系:ASW大容量燃料ポンプ
■ 吸排気系:ソレックス50PHH、柿本レーシング製φ48mmタコ足、今野オリジナルマフラー
■ 冷却系:純正コア増しラジエーター、RB26型純正オイルクーラー
■ 駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、ファイナル3.7
■ 足回り:(F)S14用フルタップ車高調加工流用 (R)ワゴンR用車高調加工流用、KYBハコスカ用リアダンパー流用、セミトレーリングアーム取り付け位置変更、亀有製リアメンバーカラー
■ ブレーキ:(F)MK63キャリパー、φ280mmベンチレーテッドローター、ケンメリGT-R純正マスターバッグ、S31Z用純正マスターシリンダー
■ タイヤ:(F)ブリヂストン・ポテンザRE-71R
205/50R15 (R)ポテンザRE-01R 225/50R15
■ ホイール:RSワタナベ Rタイプ (F)15×9J -13
(R)15×10J -25
■ インテリア:ダッツンバケットシート、永井電子機器製ウルトラ・タコメーター、240km/hスピードメーター、ロンサムカーボーイ・カーオーディオ、トラスト製追加メーター(油圧、油温、水温、燃圧)



初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 日産 スカイラインHT 2000 GT(全3記事)

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【1】【2】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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