エスハチとヨタハチの追いかけっこ! トヨタマニアがドイツからやってきた!|オランダ発! ニッポン旧車の楽しみ方 Vol.4

クラウンオーナーのヤック・ファンデルリンデンさん(左)とルール・デロイターさん(右)。

       
イギリス、ドイツ、フランスと周囲に自動車生産大国があり、自国では世界的な自動車メーカーが育たなかったオランダ。しかし自動車関連の企業の発祥地であり、古くからレースも盛んに行われてきた国だ。当然ヨーロッパ車が主流となる土地柄ではあるが、熱心な日本車のファンも存在。ビックリするほどの資料を持つ日本旧車マニアにも会うことができた。

【オランダ発!ニッポン旧車の楽しみ方 Vol.4】

【3】から続く

 世界のどこでもホンダといえば2輪車だったころ、国際4輪レースF1に登場したのが1964年のドイツグランプリだった。そのころのホンダの様子をロニー・ルカッセンさんが解説する。

▶▶【写真14枚】アンドレアさんのヨタハチとブラウワーさんのエスハチの追いかけっこなど


「ホンダ車が初めてオランダへ来たのは1966年のことでした。5台のS600が、優良2輪車ディーラー5店舗に渡されています。1967年にS800を発売。2000台ほどが販売されたようです」

 さらにN400やN500が存在した資料を示しながら言葉を続けた。
「N600がオランダにお目見えしたのは1968年。1973年まで販売されました」


 今回の集会場所はドイツとの国境に近く、ドイツからトヨタオーナーも参加した。1964年デンマークに始まり、1969年にベルギーへ販拡したトヨタ。トヨタ・スポーツ800オーナー、アンドレア・ヴェントリンクさんが語る。

「1971年にトヨタはドイツへやってきました。ディーラーネットワークはまだなく、ガソリンスタンドなどで車両が販売されました。私の両親も1975年から自分たちの経営していたガソリンスタンドで販売を始めて、4年後にはショールーム付きの店を建てました。私もそこで5年くらい働きましたよ。今も家族はみんなトヨタを全面信頼していますけど、ドイツ国内の老舗メーカーに比べるとはるかに新参の日本車ですので、ステータスとしては低いんですよね」

 オランダでもドイツでも、やはりヨーロッパのクラシックカーが本流だ。日本旧車は登場から40年を過ぎた現在、ようやくクラシックカーとしての認識度が高まってきたというところ。

 ドイツからダットサン240Zで自走してきたのはフランク・ラウテンバッハさん。オランダの業者を通じてアメリカから輸入した240Z。ドイツの車検(TÜVと呼ばれる)を通すのに苦労したというラウテンバッハさんは、ドイツの旧車登録のことを話した。

「ドイツでの登録方法は主に3種類。通常の『黒プレート』は隔年の車検が義務。旧車認定を受けた場合には年間走行距離制限がつきますが、税金は安く排ガス検査も免除(車体検査はあり)です。『赤プレート』というのもあって、これは3台までまとめて登録できて車検も免除。ただし1度に1台しか公道へ出せないとか、日常使い不可という条件がつきます。一部のコレクターの人たちには便利な登録方法ですね」

 過去130年間、国ごとに個性あるクルマを生み出してきたヨーロッパ。EUになって行き来は自由になっても法律は微妙に異なっている。言葉も違う。その地で、日本からきた旧車の話題で心つながる仲間たち。それは丹精込めて作られた日本の国産自動車が、長い自動車の歴史の中で受け入れられていく過程の脈動。そう感じさせた、オランダでの有意義なひとときだった。



ファンデルリンデンさんのクラウンは、珍しいステーションワゴン「カスタム」。前列はフロアシフトで2人乗り、荷室に2席の7人乗り。




お気に入りの1967年式S800クーペのエンジンを説明するルカッセンさん。ルカッセンさんはホンダ車の輸出入を生業とする、このクルマの20年来のオーナーだ。オリジナルオランダ車、オリジナルカラーに合せて、新車時にオランダで取り付けられたトレーラーフックが自慢。



【1】【2】【3】から続く


初出:Nostalgic Hero 2015年 12月号 vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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