愛車との年齢差29年! オーナーは20歳の大学生|1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス Vol.1

誕生から49年。半世紀を経た現代でもしっかり走る様子に一種の感慨を覚えてしまう。

       
【1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス Vol.1】

「この時代のクルマにはカタチがあって、見ていると引き込まれてしまいますね」

オーナーは20歳の現役大学生。これまで登場したノスタルジックカーオーナー中の最年少。それに反して愛車のP411ブルーバードは
1966(昭和41)年式で、こちらは過去最年長車。実に年齢差29というギャップだが、不思議とこの組み合わせに違和感はなかった。なぜなのか、
少しの時間その理由について考えてみたが、オーナーがクルマの特徴をよく理解し、そうした接し方をしているからだと気付かされた。

車歴をしのばせる証拠物件。車内から出てきた1966(昭和41)年の新聞など【写真16枚】


 1966年式P411ブルーバードのオーナーは20歳の大学生。愛車との年齢差29はこれまでの最大。改めて昭和生まれと平成生まれの対比、ギャップの大きさを思い知らされる。

 それにしても、1966(昭和41)年式というのは、新たに旧車オーナーになるには限界的な古さのモデルだろう。というのは、1966年といえば日本のモータリゼーションが本格的に立ち上がる入口にあたる時期で、新車の年間登録台数はそれなりに増えてはいるものの、絶対数としてはまだそれほど多くはない頃である。

 加えてこの時期は、60年代終盤に向けて新たなメカニズムを備えた「新世代車両」が続々と登場する時代で、当時410系ブルーバードが持つ商品価値は相対的に下がる傾向にあった。言うまでもなく510ブルーバードとの比較になるわけだが、以後の時代に残っていく残存モデルとしての価値が希薄だったのである。

 要するに、現在手に入れようとしても、なかなかモデルが見つからない、ということなのである。

 ところが、20歳の大学生が新たに手に入れ旧車ライフを楽しんでいるという。どういう経緯だったのか、どんな思惑だったのか。本企画としては、ものすごく好奇心をかき立てられるオーナーと車両だったのである。

 こんな意識を持ちながら、実際お会いした穴澤さん、礼儀正しさが伝わってくる好青年だった。農学を専攻していることもあるのだろうか、動植物、命あるものに対する接し方が謙虚なのである。命を尊ぶ姿勢に、この年齢で、と驚かされてしまった。

 学業の関係で、ふだんは実家を離れて一人住まいをしているため、愛車の411ブルーバードは実家に残したままだという。「ほとんど乗れないですね」と聞いてみると「父が手入れしてくれていますから」と安心顔で。

 撮影取材のためオーナーの実家を訪れて、この言葉の意味を理解することができた。お父さんの光寿さん、クルマ大好き、バイク大好き、物いじり大好きという人物。オーナーの旧車に対する興味は、多分に光寿さんの影響によるものなのだろう。しかし、なんでまた411ブルーバードなのか?  

「通りすがりの材木屋さんに520型ダットサントラックが置かれていたんです。何というクルマなんだろうか、と眺めていたら、オーナーらしき年配の方が声をかけてくれたんです」

 オーナーいわく「材木屋のおじいさん」となるのだが、すっかり意気投合してクルマ談議になったという。昭和ひと桁生まれの「おじいさん」と弱冠20歳の若者の組み合わせは、はた目に違和感と映るかもしれないが、素直で人当たりの柔らかなオーナーの人となりが理解されたということなのだろう。ちなみにこの「おじいさん」、かなりの筋金入り、だという。

 そしてこの520ダットサン・トラックは、荷役作業(?)からは解放されたものの、足としていまだに現役で活躍しているとか。1965年式ということらしいので最初期のモデルになる。



たかが1300cc、されど1300cc。しっかり走る。無鉛ガソリン対策は添加剤を加えることで対処しているという。





ファミリーカーとして企画された410系ブルーバード。現在の目からはかなり小さく狭く見える。





「このクルマを手に入れてから運転操作はていねいになりましたね」とオーナー




【2】【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 vol.171(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス(全3記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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