10秒台も目前に迫ったS30Zに必要だったもの|1970年式 日産 フェアレディZ Vol.3|6気筒の挑戦者たち

9月の仙台ハイランドでは、11.08秒の自己ベストをマーク。DOTタイヤ&ストックボディでは上々なタイムだが、さらに煮詰めれば10秒台も時間の問題か。

       
【 1970年式 日産フェアレディZ Vol.3】

 L型メカチューンとしてトップクラスのパワーを発揮し、10秒台も目前に迫ったS30Zだが、ハイパワーなエンジンだけでは、これほどの好タイムをマークすることはできない。ボディやシャシーも、キッチリ仕上げていなければ、それは不可能だ。
 ボディはとにかく軽量化にこだわり、エアロパーツ類はいっさいなし。ボンネットやフロントフェンダー、ドアはFRP製に交換され、一見するとスチールメッキに見えるバンパーさえも、じつはFRP製。加えて、ウインドー類はすべてアクリル製に交換するといった徹底ぶりだ。

 軽量化とともに、剛性の高いボディや、ドラッグに適したサスペンションジオメトリーも不可欠。ボディはグローバルジグで測定修正後に、フルスポット増しを実施。加えて、前中期S30Zのウイークポイントであるフロア下途中までしかないフレームを延長し、強固なロールケージやボンネット貫通式の補強バーも追加。アンダーボディを重点的に補強し、エンジンパワーを無駄なく路面に伝えられる高剛性ボディを手に入れている。



 また、S30Zは車高を落とすと、リアが沈み込んだとき(スタート時)にロワアームやドライブシャフトが「バンザイ」状態になってしまう。その症状を解消させるために、デフの位置を40mmアップ。加えて、より細かいアライメント調整が行えるように前後のロワアームをパイプ製に交換。さらに、重量物であるエンジンの搭載位置を80mm後方へずらすなど、ドラッグでもっとも重要と言える「トラクションの確保」に重点を置いたマシンメイクとなっているのだ。

 速いタイムを狙うには、強大なエンジンパワーはたしかに重要。しかし、そのパワーを生かし切るには、ボディやシャシーのチューニングが何よりも大切だと、改めて考えさせられた1台だった。




バルクヘッドを貫通してフロントストラットタワーまで延伸されたロールケージなど【写真10枚】

1970年式 日産 フェアレディZ(S30)
SPECIFICATIONS

●エクステリア:FRP製ボンネット/フロントフェンダー/ドア/バンパー、総アクリルガラス
●エンジン:L28型改3.2L仕様
●冷却系:サイドタンク式クロスターン・アルミ2層ラジエーター、オリジナルオイルフィルター
●駆動系:HKS製SR型エンジン用5速ドグミッション、OS技研製トリプルプレート、R200デフ(4.375)、Z31用プロペラシャフト(ショート&バランス加工)、R31用等速ドライブシャフト(ショート加工)、アリゾナZcar製デフキャリア
●足回り:オーリンズベースオリジナル仕様(F:8kg/mm F:6kg/mm)、アリゾナZcar製フロントロワアーム、パイプリアロワアーム改
●ブレーキ:フロントMK63キャリパー
●タイヤ:F:グッドイヤー フロントランナー 23.0×15-15 R:M&H レースマスター 26×10.5-15
●ホイール:F:SSRマークⅠ、R:RSワタナベ・エイトスポーク
●内装:FRPダッシュボード、スタック製メーター(タコ、燃料、油温、油圧、水温)、PLX製空燃費計、ダッツンコンペステアリング、ウィステリアジャパン製RA300Cバケットシート、シンプソンフルハーネス、サイトウロールケージ製アルミ14点式ロールケージ
●その他:フルスポット増し、ハースト製ラインロック、ATL12ガロン燃料タンク

ENGINE SPEC.
●L28型改3.2L仕様
N42ブロック/CP製鍛造φ89.5mmピストン/オートサービスワタナベ製86mmフルカウンタークランク/H断面コンロッド/ニスモ製メタル/アルゴンヘッド/亀有製φ46-38mmビッグバルブ/レーシングサービスワタナベ製78度カム/アリゾナZcar製大容量オイルパン
●吸排気系:ソレックスφ50mm/原田商会製インマニ/オリジナルφ48.6mm等長6-1タコ足/オリジナルφ80mmオールステンレスマフラー
●点火系:MSD・7AL/マロリー製デスビ

初出:Nostalgic SPEED 2015年 03月号 vol.006(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式 日産 フェアレディZ(全3記事)

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photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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