「人が集まってくれるのが楽しいし、みんなが楽しそうにおしゃべりをしているのが、僕にはうれしいんですよ」|ニッポン旧車に魅せられてイベントを開催した人物|1976年式 トヨタ コロナ ワゴン Vol.1

もともとはホンダ党だったヴォラセインさんが、現在毎日の足に使っているのは76年式トヨタ・コロナワゴン。ほぼオリジナルの状態だ。ガレージにはこれからレストアを手がけるダットサン・ロードスターのボディもあった。この他に所有する70年式トヨタ・カローラスプリンターは、友人宅に保管しているとのこと。

       
【1976年式 トヨタ コロナ ワゴン Vol.1】

 近年、日本国内でも旧車のイベントが数多く開催されるようになったのは、読者の皆さまもご存じのとおり。国産旧車が集まるイベントはどこも盛況なのだが、その波は、どうやらアメリカにも伝わったようだ!? ニッポン旧車の魅力にハマったひとりの青年が、インターネットフォーラムを通じて同じクルマの仲間を募り、それをきっかけにして200台を超える参加者を迎えた初開催のイベントを成功させた。その主催者として奮闘してきた道のりを紹介しよう。

昨今、盛んに行われている旧車ミーティング。われわれはなぜそこへ参加したくなるのだろう。新しい仲間に出会ったり、旧交を温めたり、時には手に入れたばかりのクルマのお披露目だったり、それともレストアが完成したクルマの発表の場だったり。出かけていく目的はそれぞれでも、クルマを目の前にして気の合う仲間とおしゃべりに興じるのはいつでも楽しいものだ。
 そんな楽しみの裏側には、その場を提供してくれる運営委員の人たちがいる。企画から実行まで多大な手間のかかる大役をなぜ進んで買って出るのか、ミーティング当日のクルマの調子と天気ばかりが気がかりなわれわれには、とても不思議に思えてしまう。

 日本から遠く離れたカリフォルニアの地で、日本旧車のミーティングを主催することに熱を注いでやまないジェームス・ヴォラセインさん(22歳)は、そんな問いにこう答えてくれた。

「人が集まってくれるのが楽しいし、みんなが楽しそうにおしゃべりをしているのが、僕にはうれしいんですよ」
 自身のクルマ改造のチャレンジ精神の末に日本旧車にたどり着き、改造の腕を磨くために仲間とのコミュニケーションを大切にするヴォラセインさん。「ミーティングは自分自身のための情報源なんです」と経緯を語り始めた。


予期せぬかたちでのスタート

 16歳のときに、クラッチの壊れた初代アキュラ・インテグラを修理して乗り始めたというヴォラセインさんは、自分でクルマを直してみて、運転よりもむしろ修理改造に興味をもった。そこで試しに、修理したばかりのインテグラのエンジンを降ろしたり積み直したりしてみた。それも何度か繰り返すうちに段々と簡単なことに思えてくると、今度はまわりの仲間たちがインテグラにどんな改造をしているのだろうと気になってきた。しかしどれを見てみても市販のエンジン装着パーツを組み上げただけの、さながらできあいのパズルのようにしかヴォラセインさんの目には映らず、その位のレベルの改造では、心の中にうずく改造への興味は、とても満たされそうにはなかったのだ。

「もっと高度な改造に挑戦したい」

 そんな熱意は、ヴォラセインさんを最新のクルマではなく、むしろ反対の旧車の世界へと引きずり込んでいった。

「あのころはバリバリのホンダ党だったもので」

 と、ヴォラセインさんが手を出したのが、79年式の初代シビック。近所の農地に壊れたまま放り出されていたものを、160ドルで引き取ってきた。
 ところが、新たな挑戦を前に意気揚々としていたヴォラセインさんは、突如、交通事故に遭ってしまった。2010年のことだ。夏の夜、市街地でインテグラを運転中、左側面から別のクルマに突っ込まれたのだ。その事故の瞬間から記憶は完全に途切れ、翌日病院のベッドの上で目を覚まして発した一声は「オレのインテグラは?」だった。

 それまでの2年間手塩にかけたインテグラは、左のドアがセンターコンソール近くまでへこみ全損。ヴォラセインさんも左脚大腿骨を損傷していた。
「秋になれば通学するクルマがいる。すぐにシビックを直さなきゃ」
 そう思うといても立ってもいられなくなり、退屈な病院生活から2週間で抜け出した。そして、突き止めた故障の原因だったオイルポンプの駆動歯車を修理し、こうして予期せぬかたちでヴォラセインさんの初代シビックとの旧車生活がスタートしたのだった。

Vol.2、Vol.3に続く

大改造に挑戦する予定の1979年式ホンダ・シビック5ドアなど【写真3枚】

ニッポン旧車に魅せられてイベントを開催した人物

1976年式 トヨタ コロナ ワゴン記事一覧(全3記事)

初出:ノスタルジックヒーロー 2013年12月号 Vol.160(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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text & photo:Masui Hisashi/増井久志

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