日産初のFFモデルは「新世代のコンパクト」オーバーフェンダー付きのスポーツカー|1973年式 日産 チェリークーペ 1200 X-1・R Vol.1

1973年3月〜10月の10カ月間のみ販売された前期型のX-1・R。73年10月〜74年9月まで販売された後期型とでは、フロントグリルのデザインをはじめ、バンパーのスモールランプが無しと有り、バンパーの曲がり込み具合が小さいと大きい、リアシートのウインドーの開かないのと少し開くといった、マイナーチェンジに伴う相違点がいくつかある。

       
日産初のFFモデルとしてチェリーが誕生したのは1970年9月のこと。「新時代のコンパクトカー」をコンセプトに、荻窪の旧プリンス開発チームによって着々と進められた。

 当時の日産のラインナップを支えていたのはサニーだったが、チェリーはその下のクラスを狙ったモデルとなる。そのため、ボディはコンパクトなサイズながら、広い居住空間を確保する。しかも、販売価格を抑えるというハードルの高い目標が設定されていたのだ。

 そのため、駆動方式をFFとし、搭載するエンジンはサニーの直列4気筒OHVのA10型と、A12型ツインキャブ仕様を流用。エンジンは横置きで、その真下にミッションを配置。可能な限りコンパクトにまとめることに成功した。

 デビュー当初は、2ドアと4ドアのセダンのみでスタートしたが、1年後にはスポーティーなクーペを追加。一気にバリエーションが充実し、特に若い層からのクーペへの支持が高かった。中でも、A12型にSUツインキャブを装着したX‐1シリーズは、最強の動力性能を誇り、人気の的となった。

 さらにチェリーの人気を押し上げたのが、1971年の「富士マスターズ250キロレース」でのこと。雨が降りしきる最悪のコンディションでレースがスタート。FFのメリットを生かした2台のチェリーが1周目からリードし、デビューレースながら見事にワン・ツー・フィニッシュを飾ってみせたのだ。


Vol.2/3に続く



ボンネットよりもハッチゲートが大きいのが分かる。リアシートを倒すと、大人が寝転がれるくらいのフリースペースとなる。ただし、巨大なリアゲートを支えるダンパーが弱点でもある。


ホイールは、貴重な神戸製鋼製マグホイールを装着。サイズは5.5J×13。フロントには車高調を組み込み抜群の安定性を実現。


プレーンバックのスタイルのため、広大なクオーターピラーには「Cherry X-1・R」のエンブレムが付く。前期のリアウインドウは開かないが、後期は少しだけ後方に開く。


見た目はノーマル風だが、竹口さんによるチューニングで、9000rpmオーバーまでOK。次期エンジンはA12改1303㏄で、さらにパワーアップする!


左にタコメーター、右にスピードメーター、中央に水温計と燃料計というシンプルなレイアウト。タコメーターは11000rpmまで計測できるウルトラ製のステッピングモーター式に変更。


定員は5名になっているが、後席は2名分のようなリアシート形状。


1973年式 日産チェリークーペ 1200 X-1・R(KPE10ST)
●全長3690mm
●全幅1550mm
●全高1310mm
●ホイールベース2335mm
●トレッド前/後1270/1235mm
●最低地上高195mm
●室内長1560mm
●室内幅1270mm
●室内高1060mm
●車両重量645kg
●乗車定員5名
●登坂能力tanθ0.417
●最小回転半径4.6m
●エンジン型式A12型
●エンジン種類水冷直列4気筒OHV
●総排気量1171cc
●ボア×ストローク73.0×70.0mm
●圧縮比9.0:1
●最高出力80ps/6400rpm
●最大トルク9.8kg-m/4400rpm
●変速比1速3.014/2速1.973/3速1.367/4速1.000/後退3.388
●最終減速比4.067
●燃料タンク容量36L
●ステアリング形式ラックアンドピニオン
●サスペンション前/後ストラット・コイル/トレーリングリンク・コイル
●ブレーキ前/後ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤ前後とも165/70HR13
●発売当時価格65万円

掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年12月号 Vol.154(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

全ての画像を見る

73年式 日産 チェリークーペ 1200 X-1・R 記事一覧(全3記事)

関連記事:チェリー記事一覧

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Ryotarow Shimizu/清水良太郎

RECOMMENDED

RELATED

RANKING