60年代、岩戸景気の後押しを受けて一気に花開いたプレミアムセダン市場。その主役は?|忘れ得ぬ日本の高級セダン Vol.2

高級感を演出するエンブレム&モール類、インテリアの素材などは、当時の贅を尽くした仕様となっていた。

       
1958年、後楽園競輪場で開催された第5回全日本自動車ショウに、富士精密工業は「プリンス1900」を参考出品。

 これはスカイラインのボディに1862ccの水冷直列4気筒OHVエンジンを積んだ高級セダンだ。翌年1月に「グロリア」の名を冠して発売に移された。戦後の日本車としては初の普通車で、誇らしげに「3」ナンバーのプレートを付けていた。

 そして戦後初の国産大型乗用車を強くアピールしたのがグロリアだ。豪華な西陣織のシートを採用し、VIPカーならではの後席アームレストやオートライト、パワーウインドー、コートハンガーなども装備した。岩戸景気の後押しを受けたこともあり、プレミアムセダン市場は一気に花開いている。

 そして1960年秋、小型乗用車の税制が緩和され、61年4月には物品税が改正された。5ナンバー車の排気量枠が2Lまでに引き上げられ、2Lを上限とする小型車乗用車の税率は15%に引き下げられている。この時期、クラウンとスカイラインは1900シリーズを設定し、日産は最高級セダンのセドリックを送り出した。セドリックは1.5Lの排気量でスタートしたが、すぐに1.9Lエンジンを積む「カスタム」を仲間に加えている。

 1962年秋にクラウンとグロリアは第二世代にバトンを託した。小型車枠の上限が2Lになったこともあり、3ナンバーのプレミアムセダンは影が薄くなった。そこで5ナンバーサイズのベース車に2Lを超える6気筒エンジンを積み、装備も充実させてプレステージ性を誇示する高級セダンを送り込むことを考えた。

 その最初の作品が、1962年10月に発売されたセドリック・スペシャルである。ホイールベースを145mm延ばし、後席の居住空間を広げた初のショーファードリブンだ。また、エンジンも2825ccのK型、水冷直列6気筒OHVを搭載し、余裕の走りを実現した。

 この年の第9回全日本自動車ショーにはプリンス自動車が2代目グロリアに2494ccのG11型、水冷直列6気筒SOHCエンジンを積んだ「プリンス2500」を参考出品している。これが後の「グランド・グロリア」だ。東京オリンピックが間近に迫った64年5月に正式発売されている。パワーウインドーやパワーアンテナなどを標準装備し、パワーシートやオートライトもオプションで選ぶことが可能だった。



65年式グランドグロリア。



プリンスを代表するパワープラント、水冷直列6気筒SOHCのG型シリーズ最大となる2.5L、G11型エンジンを搭載する。






車内は広く、そして設備は拡充していた。


広々としたベンチシート。


145mmのホーイルベース拡張で後方の居住空間が驚くほど広くなった。

掲載:ノスタルジックヒーロー 2012年10月号 Vol.153(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Isao Yatsui/谷井 功

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